
SpaceXは2026年8月5日(日本時間)、2026年第2四半期決算を発表した。
本記事では、SpaceXの最新決算をもとに、各事業の業績やStarlink、Starshield、Starship、AI事業の進捗について整理する。
SpaceXの概要
SpaceXは、ロケットや宇宙船の開発・製造、打ち上げサービス、衛星通信サービスなどを手がける米国の宇宙企業である。
2002年に設立され、現在は再使用型ロケット「Falcon 9」や大型ロケット「Falcon Heavy」、有人宇宙船「Dragon」などを運用。また、完全再使用型の巨大宇宙輸送システム「Starship」の開発も進めている。
衛星通信分野では、低軌道衛星コンステレーション「Starlink」を展開し、個人向けインターネット通信に加え、航空、海運、通信事業者、政府機関向けにもサービスを提供。安全保障分野では政府向け衛星ネットワーク「Starshield」を展開している。
2026年には、イーロン・マスク氏が設立したAI企業SpaceXAI(当時はxAI)を買収し、AIモデル「Grok」の開発やAI向けの大規模計算設備、企業向けAIサービスにも事業領域を広げた。
SpaceXの決算内容|2026年第2四半期決算
今回の決算資料では、SpaceXの事業を、ロケットや宇宙船を扱う「Space」、StarlinkやStarshieldを含む「Connectivity」、計算設備やAIサービスを展開する「AI」の3部門に分けて開示している。
2026年第2四半期決算概要
SpaceXが発表した2026年第2四半期の主な業績は、以下の通りである。

2026年第2四半期におけるSpaceXの売上高は前年同期比92%増の78億1,400万ドルとなった。営業損失は1億4,300万ドルとなり、前年同期の9億7,000万ドルから赤字幅が縮小。純損失も、前年同期の10億800万ドルから5億4,100万ドルへ改善している。
調整後EBITDAは、前年同期比191%増の35億3,800万ドルとなった。なお、調整後EBITDAは、減価償却費や株式報酬などを除いて算出する指標であり、米国会計基準に基づく営業利益や純利益とは異なる。
また、事業別の売上高は、以下の通りである。

Connectivity事業は、Starlinkの加入者増加や企業・政府向けサービスの拡大により、売上高が前年同期比66%増の42億9,100万ドルとなった。AI事業の売上高も、クラウドサービス契約の拡大などを背景に、前年同期比247%増の25億6,100万ドルへ伸びている。
全体として、Starlinkを中心とするConnectivity事業に加え、AI事業の売上が大きく伸びたことで、前年同期比92%の増収を達成。また、Connectivity事業の利益拡大やAI事業の赤字縮小により、全社の赤字幅も縮小している。
財務状況と資金調達
2026年6月末時点におけるSpaceXの現金及び現金同等物は935億2,200万ドル、有価証券は64億8,700万ドルとなった。両者を合わせた保有額は約1,000億ドルに達する。2025年末時点の現金及び現金同等物は247億4,700万ドルであり、2026年上期に大きく増加した。
背景にあるのが、株式市場と社債市場を通じた大規模な資金調達である。
SpaceXは2026年6月、Class A普通株式約6億3,889万株を発行する新規株式公開を完了し、約857億ドルの手取り資金を調達した。株式は「SPCX」の銘柄記号で取引を開始している。
さらに、同月には総額250億ドルの投資適格社債を発行し、財務基盤を強化した。
2026年上期の財務活動によるキャッシュ・フローは1,002億9,100万ドルの収入となった。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは344億8,700万ドルの支出となっている。
同期間の設備投資額は284億7,600万ドルに達した。内訳は、Space事業が22億2,600万ドル、Connectivity事業が26億9,900万ドル、AI事業が235億5,100万ドルであり、AI事業が全体の約8割を占める。
SpaceXは、株式と社債による資金調達で手元資金を大幅に積み増す一方、AI向け計算設備を中心に、StarshipやStarlinkを含む事業基盤への投資を進めている。

事業の進捗状況
Starlinkの利用拡大と政府・企業向け事業の成長
Starlinkでは、個人向け衛星通信の利用拡大に加え、航空会社や通信事業者、政府・安全保障分野への展開が進んでいる。
サービス提供地域は167カ国・地域に広がり、軌道上の衛星数は約1万200機となった。2026年6月末時点のStarlink加入者数は1,200万人となり、前年同期の600万人から倍増した。
航空や通信事業者との提携も拡大している。
American Airlinesと大型契約を締結したほか、Southwest Airlines、Virgin Atlantic、Iberia、Aer Lingusなどの航空会社でStarlinkの提供を開始。
また、携帯電話と衛星を直接接続するStarlink Mobileでは、ソフトバンク、NTTドコモ、ニュージーランドのSparkなど、各国の通信事業者との連携を進めている。
政府・安全保障分野では、専用衛星ネットワーク「Starshield」に関する総額60億ドル超の複数年契約を米国政府から獲得。主な契約は、米宇宙軍向けの低軌道通信・観測コンステレーションに関するものである。
さらに、利用者数や用途の拡大に対応するため、次世代Starlink V3衛星の開発も進めている。V3衛星では、通信容量とデータ密度の向上を目指しており、今後のサービス拡大を支える基盤となる。
Starship開発への投資が続くSpace事業
Space事業では、外部顧客向けの打ち上げに加え、Starlink衛星の配備を継続しながら、完全再使用型宇宙輸送システム「Starship」の開発を進めている。
2026年上期の打ち上げ回数は78回となった。内訳は、顧客向けが17回、自社向けが61回である。軌道へ投入した質量は合計1,041トンに達し、そのうち908トンがStarlink衛星などの自社向けペイロードだった。
こうした高頻度打ち上げを継続するなか、SpaceXは将来の輸送能力拡大に向けてStarshipの開発投資も進めている。Space事業の研究開発費は、前年同期の6億9,300万ドルから10億7,600万ドルへ増加した。
SpaceXは、Starshipによって軌道投入コストを過去の平均と比べて99%以上削減できる可能性があるとしている。
今後は、飛行試験で得た成果をStarship機体の完全かつ迅速な再使用につなげ、Starlink V3衛星を含む大型ペイロードの輸送能力を実運用へ移行できるかが焦点となる。
AI向け計算設備と企業向けサービスを拡大
AI事業では、大規模な計算設備の整備を進めるとともに、その計算能力を外部顧客へ提供するクラウドサービスを拡大している。
SpaceXは、大規模計算設備「Colossus II」の整備を進めており、追加の計算能力も建設中としている。2026年6月末時点の計算能力は1.4GWとなり、前年同期から大きく拡大した。
こうした設備を活用し、複数の顧客とAI向けクラウドサービス契約を締結。契約総額は141億ドルで、2026年第2四半期にはAIインフラ事業の売上拡大につながっている。
また、企業向けAIサービスの強化に向け、プログラミング支援ツールを手がけるCursorを買収する契約を発表。2026年7月には、プログラミングや自律的な作業への対応を重視したAIモデル「Grok 4.5」も公開している。
一方、計算設備の整備には巨額の投資が必要となる。今後は、拡大した計算能力と企業向けサービスを、継続的な収益につなげられるかが焦点となる。
さいごに
SpaceXの2026年第2四半期は、Starlinkを中心とするConnectivity事業とAI事業の成長により、売上が大きく拡大し、赤字幅も縮小した。
Starlinkでは、個人向け通信に加え、航空会社や通信事業者、政府・安全保障分野への展開が進んでいる。SpaceXにとって、Connectivity事業は引き続き主要な収益源となっている。
その一方で、Space事業ではStarshipの完全再使用に向けた開発を継続し、AI事業では大規模な計算設備の整備や企業向けサービスの拡大を進めている。
今回の決算からは、Starlinkで得た収益と大規模な資金調達をもとに、StarshipとAIを次の成長領域として育てるSpaceXの事業構造が見えてくる。
今後は、Starlinkの利用拡大を維持できるか、Starshieldの政府契約を安定して履行できるか、Starshipを実運用へ移行できるか、そしてAI事業への投資を継続的な収益につなげられるかが注目される。
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参考
※本記事は、SpaceXが公開した2026年第2四半期決算資料をもとに、同社の事業動向を整理することを目的としたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、投資助言を目的としたものでもございません。














