
2026年7月2日、三菱電機株式会社(以下、三菱電機)は、株式会社インフォステラ(以下、インフォステラ)の全株式を7月1日に取得し、完全子会社化したことを発表した。
本記事では、インフォステラが展開するサービスの特徴と、三菱電機が同社を子会社化した理由について解説する。
インフォステラとは
インフォステラは、人工衛星の運用に必要な地上局サービスを提供する企業である。
地上局とは、地上に設置されたアンテナや通信設備を通じて、人工衛星とデータや指令をやり取りするための施設を指す。衛星事業者が通信機会を十分に確保するためには複数地域の地上局を活用することが有効な手段の一つとなる。しかし、自社で整備・運用する場合、設備投資や運用人材の確保に加え、無線局免許の取得、周波数調整への対応など、衛星事業者に大きな負担がかかる。
同社は、こうした課題に対応するため、地上局ネットワークをクラウド上で仮想的に接続するプラットフォーム「StellarStation」を開発・運用している。

衛星事業者は、StellarStationを通じて世界各地の地上局を利用し、衛星との通信機会を確保できる。自社で複数地域に地上局を整備・運用する際に必要となる設備投資などの負担を抑えつつ、複数の地上局との通信を一元的に管理できる点が特徴だ。
一方、地上局を保有する事業者は、未使用の通信枠を他の衛星事業者へ提供することで、既存設備を有効活用できる。こうした地上局をサービスとして提供する仕組みは、GSaaS(Ground Segment as a Service)と呼ばれる。
このサービスに加えて、インフォステラは、衛星事業者が専用で利用するアンテナの設置場所や運用環境を提供するホスティングサービスや、無線局免許の取得、周波数調整など、衛星運用に必要な地上局関連業務を幅広く支援している。

三菱電機がインフォステラを子会社化した理由
今回の子会社化の背景には、小型衛星コンステレーションを活用した通信や地球観測などのサービスが拡大し、衛星事業者が必要な地上局ネットワークを利用しやすい形で提供する民間サービスの重要性が高まっていることがある。
三菱電機はこれまで、国内外の衛星や地上設備の開発・製造を手がけてきた。地上設備の分野では、衛星と通信し、追跡・管制を行う地上局のほか、天文観測用の光学・電波望遠鏡も開発・製造しており、アンテナ技術や衛星管制技術を培っている。一方、インフォステラは、GSaaSのプラットフォーム「StellarStation」を基盤に、地上局ネットワークをサービスとして提供してきた。
三菱電機は、今回の子会社化により、インフォステラが有するGSaaSのプラットフォームや迅速な開発力を自社の技術と組み合わせることで、地上ネットワークのグローバル拡大を加速させ、品質と信頼性を備えた宇宙通信インフラの構築を目指す。
三菱電機株式会社 上席執行役員 防衛・宇宙システム事業本部長 洗井 昌彦 氏は以下のように述べている。
「宇宙空間の利用が多様化し、衛星を利用したサービスの需要が世界的に急増する中、クラウドベースの地上局サービスで革新的なビジネスモデルを築き上げたインフォステラを当社グループに迎えることは、当社の防衛・宇宙システム事業基盤強化につながると確信しています。
同社が持つアジャイルな開発力やグローバルなネットワーク網と、当社の衛星や地上設備の製造・インテグレーション技術を掛け合わせることで、お客様の運用負荷を大幅に軽減する新たなソリューションを提供し、宇宙産業の持続的な成長に貢献してまいります」
両社は、小型衛星コンステレーションを運用する衛星事業者の初期投資や運用負荷を抑えながら、多様なニーズに応じた宇宙通信インフラをタイムリーに提供するサービスを構築していく方針だ。
これからの時代に求められる地上局運用
衛星の活用が広がるなか、地球観測の高精度化や観測頻度の向上によって、衛星が扱うデータ量は増えている。こうしたデータを地上へ届けるには、必要なときに必要な量のデータを送れる体制を整える必要がある。
特に低軌道衛星の場合、1つの地上局と通信できる時間は1回の通過あたり数分から10分程度であるため、観測データが増えるほど十分に送信しきれない場合もある。そのため、必要な通信機会をどのように確保するかが重要になる。
また、災害発生時の被害把握や海洋監視などでは、状況を早期に把握するため、観測結果をできるだけ早く受信できることが求められる。こうした用途では、あらかじめ決められた通信計画に従うだけでなく、状況に応じて通信の優先順位や運用方法を切り替えられる柔軟性も重要となる。
安全保障や重要インフラに関わる衛星では、不正アクセスや通信妨害、地上設備の障害といったリスクも考慮しなければならない。特定の通信拠点や運用体制に依存すると、障害や攻撃が起きた際に衛星との通信や管制が止まるおそれがある。そのため、複数の通信拠点や経路を活用しながら運用を継続できる体制が求められる。
今後の地上局運用では、通信機会の確保に加え、データを迅速に届ける即時性、状況に応じて運用を変えられる柔軟性、障害時にも運用を継続できる安全性を、どう両立させるかが重要になるだろう。
さいごに
三菱電機によるインフォステラの完全子会社化は、衛星運用を支える地上局サービスの強化を目指す動きといえる。
衛星データの活用が広がるなか、地上局ネットワークには、通信機会の確保だけでなく、データを迅速に届ける即時性や、状況に応じて運用を切り替える柔軟性、障害時にも運用を継続できる強靭性が求められている。
三菱電機が持つ衛星・地上設備に関する技術と、インフォステラが展開してきた地上局サービスやネットワークを組み合わせることで、こうした多様なニーズに対応する宇宙通信インフラの整備がどこまで進むのか、今後の展開が注目される。
宇宙業界では現在、様々な企業が人材を募集している。興味のある方は、業界特化型の人材マッチングサービス「スぺジョブ」をチェックしていただきたい。












