
2026年9月15日、株式会社Synspectiveは、小型SAR衛星コンステレーションの観測能力を複数の顧客で共有する新プログラム「Synspective OMNIA」を発表した。
同社は、既存のStriXシリーズによる30機以上の衛星網とは別に、OMNIA向けの新たなコンステレーション構築を目指す。
本記事では、OMNIAの仕組みや既存のStriX衛星網との関係、共同利用によって顧客が得られる5つの価値を解説する。
Synspective OMNIAとは
衛星コンステレーションを複数顧客で共同利用
OMNIAは、小型SAR衛星コンステレーションの「観測能力」を、複数の政府や企業で共同利用するプログラムである。
顧客が利用するのは、1つ1つの衛星ではなく、特定の地域を観測するための利用枠だ。
OMNIAに参加する政府や企業は、自らが必要とする観測能力を確保し、そのうち利用しない余剰分をほかの参加者と共有する。追加の観測が必要になった場合には、ほかの参加者が利用していない観測能力をその都度購入することも可能だ。
衛星システム全体を単独で保有するのではなく、複数の参加者で観測能力を融通しながら、それぞれが必要な地域の優先観測権を持つ仕組みである。

既存のStriXとは別に新たな衛星網を構築
Synspectiveは現在、100kg級の小型SAR衛星「StriX」シリーズを開発・製造・運用している。SAR衛星は、地表へ電波を照射し、その反射を捉えることで地表や構造物の状態を観測する。雲に覆われた地域や夜間も観測できるため、災害対応やインフラ監視、安全保障などに活用できる。
同社は現在、StriXシリーズによる30機以上のコンステレーション構築を進めている。OMNIAでは、既存のStriXコンステレーションの利用に加え、別の新たなコンステレーションを構築する方針だ。
両方のコンステレーションを組み合わせることで、観測頻度や冗長性、地域のカバー範囲を高め、顧客ごとの優先的なアクセス権を柔軟に提供できるとしている。

OMNIAが顧客に提供する5つの価値
1. 必要な観測能力だけを確保し、費用を抑える
政府や企業が独自の衛星システムを構築する場合、衛星本体に加え、打ち上げや地上設備の整備、運用、保守にも費用がかかる。特定地域の観測を主な目的とする場合、その地域以外を通過している間の観測能力を活用しにくいという課題もある。
OMNIAでは、顧客が必要な範囲の観測能力だけを確保し、余剰分をほかの顧客と共有する。これにより、衛星システム全体の整備・運用費を単独で負担する場合と比べ、必要な投資を抑えながら対象地域の優先的な観測権を持つことができる。
一般的な衛星データサービスでは、すでに撮影された画像を購入する方法と、希望する場所の新規観測を依頼する方法がある。OMNIAは、必要な地域の観測能力をあらかじめ確保する点が特徴であり、衛星データの購入と衛星の単独保有の間を埋める利用方法といえる。
2. 観測頻度と冗長性を高める
Synspectiveは、既存のStriX衛星群とOMNIA向けの新たな衛星群を組み合わせることで、全球規模でより高い頻度のデータ取得を可能にする考えだ。
観測機会が増えれば、災害発生後の状況変化を継続的に確認する場合や、安全保障上の動きを把握する場合に、より新しい情報を得やすくなる。
また、複数の衛星を使うことで、一部の機体に不具合が生じた場合も別の衛星で観測を補える。特定の衛星に依存せず、観測を継続しやすくする「冗長性」も、OMNIAが提供する価値の一つである。
3. 最新世代の衛星を継続的に利用できる
OMNIAでは、顧客が自ら衛星を造り直さなくても、Synspectiveが更新・補充した新しい世代の衛星を契約期間中に利用できる。
人工衛星は一度打ち上げると、搭載している観測装置やデータ処理用の機器を後から交換することが難しい。そのため、衛星を単独で所有する場合、利用できる観測機能は打ち上げ時点の技術で固定される。
観測装置やデータ処理機器など、衛星に搭載した機器の性能を大きく更新するには、新しい衛星の設計・製造や打ち上げが必要となる。顧客が衛星を所有する方式では、こうした更新にかかる費用や手間も自ら負担しなければならない。
OMNIAでは、Synspectiveが最新世代の衛星への更新・補充を行う。顧客は衛星の更新事業を個別に立ち上げることなく、契約期間を通じて新しい観測機能を利用できるとしている。
4. SARデータの解析まで一体で提供
OMNIAでは、顧客の目的に応じた解析ソリューションを導入・調整し、SARデータから意思決定に必要な情報を得られるようにする。
SAR画像は、一般的な写真のように見たままの地表を写したものではなく、地表へ照射した電波の反射の強さを明暗で表している。そのため、画像から必要な情報を読み取るには、SARに関する知識が必要となる。
複数時期の画像から変化を抽出する場合には、画像の位置を合わせ、撮影条件や地形による見え方の違いを考慮したうえで、必要な変化を見つける作業が求められる。用途によっては、解析結果に誤りがないかを専門家が確認する工程も必要だ。こうした作業には、専用のソフトウェアに加え、解析方法を設計・調整できる技術者が求められる。
OMNIAは、Synspectiveが持つSARデータの解析技術と衛星の観測能力を組み合わせ、顧客の目的に応じた解析方法の導入や調整を行う。これにより、顧客は画像を取得するだけでなく、意思決定に必要な情報まで利用できるようになる。
5. 高い秘匿性が必要な場合にも対応
OMNIAは、高い秘匿性を求める防衛・情報機関向けに、自国の地上局で観測データを直接受信できる仕組みにも対応する。これにより、国外の受信設備や通信経路への依存を減らし、自国の管理環境でデータを扱いやすくなる。
防衛・情報用途では、観測画像だけでなく、どの地域をいつ観測したかという情報も、各機関の関心や行動を推測する材料になり得る。
観測データを国外の地上局で受信する場合、受信や転送の一部を国外の設備や運用者に委ねることになる。防衛・情報機関にとっては、データへのアクセス権限や保存方法、送信経路を、自国の安全基準に基づいて一貫して管理しにくくなる点が課題となる。
自国の地上局で直接受信できれば、観測データを自国の管理環境へ直接取り込み、その後のアクセスや保存、利用を自国の基準に沿って管理できる。これが、高い秘匿性や情報主権を確保するうえでの利点である。
さいごに
OMNIAは、衛星を共同で所有する仕組みではなく、衛星群が持つ観測能力を複数の顧客で共有しながら、必要な地域の優先利用権を確保するプログラムである。投資額を抑えながら、観測頻度と継続性、安全なデータ受信、新しい技術、解析能力を利用できる点が特徴だ。
Synspectiveにとって、既存の30機以上のStriXコンステレーションとは別の衛星群を構築する計画は、SARデータや解析結果を提供する従来の事業に加え、各国や企業に専用性の高い観測基盤を継続的に提供する方向へ、事業領域を広げる動きと捉えられる。
今後、新たな衛星群の規模や配備時期、顧客が明らかになれば、OMNIAがどの地域と用途から展開されるのかが具体化していくだろう。
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