SpaceX、Starship V3初飛行を完了|第12回飛行試験の成果とは
©Space Connect

2026年5月23日(日本時間)、SpaceXは超大型ロケット・宇宙船システム「Starship(スターシップ)」の第12回飛行試験を実施した。
本記事では、本試験の結果と、今回注目されたポイントを整理する。

Starship第12回飛行試験の結果

概要

Starship第12回飛行試験は、アメリカ・テキサス州のStarbaseから実施された。

Starshipは現在、実用衛星を地球周回軌道に投入する通常の打上げは実施しておらず、開発中の機体が上昇、段間分離、衛星放出、再突入、着水までの一連の動作をどこまで実行できるかを確認するための飛行試験を行っている。

今回は上段の宇宙船「Starship」と下段のブースター「Super Heavy(スーパーヘビー)」の双方がV3構成となった初めての試験であり、新型エンジン「Raptor 3」、Pad 2からの初飛行、改修型Starlink衛星による宇宙空間でのStarship撮影など、複数の初実証を含む飛行となった。

飛行では、Super Heavyブースターが33基のRaptor 3エンジンを点火して上昇し、Starshipとの段間分離を実施。その後、Starshipは宇宙空間へ向かう飛行を続け、20機のStarlink模擬衛星と2機の改修型Starlink衛星を放出した。

Starshipは再突入後、耐熱シールドや機体構造に関する重要なデータを取得し、インド洋上の予定された着水区域へ誘導された。その後、着陸フリップ、着陸燃焼、2基のRaptorエンジンによる着水を実行した。

Starship第12回飛行試験 LIVE配信の様子 ©SpaceX

今回の注目点

Super Heavyはメキシコ湾に激しく着水

今回のSuper Heavyブースターは、発射台への帰還・キャッチを行わず、メキシコ湾上への制御降下を目指した。V3構成の初飛行であることから、まずは新しい機体での上昇、段間分離、分離後の進路調整、着水に向けた降下動作などを確認する試験となった。

SpaceXによると、Super Heavyは33基のRaptor 3エンジンを点火して上昇したが、上昇中にRaptorエンジン1基が停止した。その後、Starshipとの段間分離には成功し、Starship上段は6基のRaptorエンジンを点火して宇宙空間へ向かう飛行を継続した。

段間分離後、Super Heavyは機体の向きを変える動作を行い、予定された着水地点へ向かうためのエンジン噴射を試みた。しかし、計画されていたすべてのエンジンを点火することはできず、部分的な燃焼にとどまり、予定より早く終了。

その後、Super Heavyは着水前の減速に向けてエンジンの再点火を試みたが、最終的にはメキシコ湾へハードスプラッシュダウンした。ブースター側では、V3構成での上昇や段間分離に関するデータを取得した一方、帰還・着水に向けた動作には課題を残した。

メキシコ湾へのハードスプラッシュダウン直前の様子
メキシコ湾へのハードスプラッシュダウン直前の様子 (SpaceXのLIVE配信より)

Starlink模擬衛星と改修型衛星を放出、機体撮影にも活用

今回の大きな注目点の一つは、StarshipからStarlink関連のペイロードが放出されたことだ。

Starship宇宙船は、宇宙空間へ向かう上昇中にRaptor 3 Vacuumエンジン1基を失ったものの、エンジン1基が停止しても飛行を継続できる能力を示し、予定された飛行経路に到達。その後、20機のStarlink模擬衛星に加え、Starlink V3向けハードウェアを試験する2機の改修型Starlink衛星を放出した。これらはStarshipと同じ準軌道の飛行経路に投入された。

Starshipには、Starlink衛星を機体内部から順番に押し出すように放出する「PEZ」と呼ばれる方式の放出機構が搭載されている。今回は、V3構成に合わせて放出機構も改良されており、SpaceXは衛星ごとの放出速度が向上したと説明している。

放出された22機のうち、2機の改修型Starlink衛星は、Starshipの耐熱シールドを撮影し、そのデータを地上へ送信する役割も担っていた。LIVE配信では、改修型Starlink衛星が撮影したStarshipの様子も確認された。

改修型Starlink衛星が捉えたStarshipの機体
改修型Starlink衛星が捉えたStarshipの機体(SpaceXのLIVE配信より)

Starshipはインド洋へ着水、再突入データを取得

Starship宇宙船は、準軌道飛行でStarlink関連衛星を放出した後、地球大気圏へ再突入した。その後、飛行の最終段階で、機体後部のフラップに意図的に負荷をかける動作や、将来Starbaseへ帰還するミッションの軌道を模した動的な旋回動作を実施。

そして、機体の姿勢制御を維持し、垂直に近い姿勢でインド洋へ着水した。着水後、機体はゆっくりと海面側へ倒れ、その後、大きな爆発が確認された。

将来的にStarshipを完全再使用するためには、再突入後に機体を制御し、着陸に近い姿勢へ移行できることが重要になる。その点で、今回の垂直着水は大きな成果といえる。

また、今回は映像が比較的安定して確認できた点も注目される。これまでの飛行試験では、再突入時の高温環境や通信状態の影響により、機体の損傷・発火が目立つ場面や機体映像が乱れる場面も多かった。今回のLIVE配信では、Starshipの再突入から最終降下に至る様子が比較的長く確認でき、耐熱シールドや機体姿勢の状態を把握するうえで重要な映像データが得られたとみられる。

大気圏再突入後のStarshipの様子
大気圏再突入後のStarshipの様子(SpaceXのLIVE配信より)
Starship着陸の様子 ©SpaceX
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有人飛行を見据えたStarship開発

Starshipは、Starlink衛星の大量展開だけでなく、将来的な有人宇宙輸送を見据えて開発が進められている。

SpaceXは今回の飛行試験直前に、民間宇宙飛行ミッション「Fram2」で船長を務めたChun Wang氏が、Starshipによる初の有人惑星間飛行ミッションに搭乗すると発表した。このミッションは約2年間にわたり、地球・月圏の外側を飛行した後、火星をフライバイして地球へ帰還する計画である。

また、この火星フライバイ計画に先立ち、Chun Wang氏はDennis Tito氏とAkiko Tito氏とともに、Starship初の商業有人月周回飛行にも参加する予定である。

月周回飛行や火星フライバイを実現するには、機体制御、再突入、耐熱シールド、長時間飛行に関する技術の成熟が欠かせない。

そのため、今回の第12回飛行試験で、Starship V3がStarlink関連衛星の放出、再突入、垂直に近い姿勢での着水まで到達したことは、将来的な有人ミッションに向けた開発進捗としても注目される。

さいごに

Starship第12回飛行試験では、V3構成の機体が初めて飛行し、Starlink関連衛星の放出、再突入、垂直に近い姿勢での着水まで到達した。

一方で、Super Heavyブースターの帰還・着水に向けた動作には課題も残った。

それでも今回の試験は、Starlinkの大量展開や、将来的な月・火星方面の有人飛行を見据えたStarship開発において、重要な前進となった。SpaceXが今後の飛行試験で、今回得られたデータをどのように次の改良へつなげるのかが注目される。

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参考

Starship's Twelfth Flight Test(SpaceX, 2026-05-23閲覧)

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