宇宙ビジネス上場企業の業績は?日本の主要スタートアップ決算まとめ

宇宙業界は現在、「成長分野」として注目を集めている。実際に、各国政府による安全保障・宇宙インフラ投資の拡大や、民間企業による衛星コンステレーションの構築が進み、市場は着実に拡大している。

本記事では、日本の宇宙上場スタートアップの業績を整理しながら、宇宙ビジネスの収益構造と現在地を読み解く。

宇宙産業は民間主導の成長段階に

宇宙産業はもともと、各国政府による安全保障や科学研究を目的として発展してきた領域である。ロケットや衛星の開発は国家主導で進められ、民間企業はその受託先として関わる形が主流だった。

しかし2000年代以降、打上げコストの低下や小型衛星技術の進展により、民間企業が主体となるビジネス領域が拡大した。地球観測データの販売や通信サービスなど、「宇宙を使うビジネス」が立ち上がり、スタートアップの参入も加速している。

こうした流れの中で、日本でも宇宙スタートアップの上場が始まった。2023年4月に株式会社ispaceが東京証券取引所グロース市場へ上場したのを皮切りに、現在では、複数の宇宙スタートアップが上場し、それぞれが衛星コンステレーションの構築やデータビジネスの拡大に取り組んでいる。宇宙産業は今、国家主導の開発段階から、民間企業が事業として成長を競うフェーズへ移行しつつある。

宇宙上場企業の事業概要と動向

株式会社ispace

ispaceが現在開発中の月面着陸船
ispaceが現在開発中の月面着陸船 ©ispace

概要

ispaceは2010年設立の宇宙スタートアップで、月面への物資輸送を主力事業とする企業である。2023年4月12日に東京証券取引所グロース市場へ上場した。

これまでに2回、月面着陸ミッションに挑戦しており、いずれも月周回軌道への投入には成功した一方、最終的な月面軟着陸の達成には至らなかった。現在は、2028年に予定されているMission3に向けて開発が進められている。

事業領域は、月面輸送サービスにとどまらず、月周回通信、データ取得など、将来を見据えたインフラ構築にも広がる。国家主導から商業主導へ移行しつつある月面開発において、ispaceは輸送インフラを担う中核プレイヤーを目指している。

事業状況

月面輸送ミッションの開発が進む中で、研究開発や製造体制の強化、人材投資を中心とした開発投資が本格化。短期的には赤字が続くものの、将来の収益化に向けた体制整備が進む。

複数の月面ミッションを並行して進めており、手元資金の確保に加え、SBIR制度や宇宙戦略基金などの公的資金を活用しながら、開発費の一部を外部資金で賄う体制を構築。

月面輸送ミッションに関する契約や補助事業は、単年度で完結するものではなく、複数年にわたり段階的に資金が投入されるケースが多い。このため、損益計算書上は赤字が続いていても、開発の進展に応じて資金が流入する構造にある点が特徴といえる。

株式会社QPSホールディングス

QPSが開発する小型SAR衛星のイメージ画像
QPSが開発する小型SAR衛星のイメージ画像(QPS研究所のPR TIMESより引用)

概要

福岡市に本社を置き、天候や昼夜の影響を受けずに地表を観測できる小型SAR(合成開口レーダー)衛星の研究開発から運用、観測データの販売までを一貫して手がける、2005年設立の九州大学発宇宙ベンチャー。

高解像度SAR衛星「QPS-SAR」による観測データを中核に、災害対応、インフラ監視、安全保障など幅広い分野での活用を視野に事業を展開。衛星・地上システム・データ提供を自社で統合的に開発・運用する点を強みとし、技術力と市場対応力の両立を図っている。

2023年12月に、事業会社であるQPS研究所が東京証券取引所グロース市場へ上場。その後、2025年12月にQPS研究所を中核子会社とする持株会社QPSホールディングスを設立し、株式を移転。グループ経営体制へ移行した。グループ全体の経営管理や資本戦略の柔軟性を高めることで、持続的な成長と事業拡大を目指している。

事業状況

官公庁案件や防衛省案件、補助金事業などを通じて、将来的な収益化に向けた事業基盤の整備が進んでいる。衛星コンステレーションの早期構築を進めながら、事業拡大を図る段階にある。

2026年4月時点の稼働衛星数は9機となっている。同社は、この規模がフィンランドのICEYEに次ぐ水準にあるとしており、36機体制による平均10分間隔の準リアルタイム観測実現に向けて衛星運用体制の拡充が着実に進んでいることがうかがえる。

一方で、衛星運用機数の増加に伴い、減価償却費や通信費、人件費などの先行投資も拡大。ただし、補助金、銀行融資、エクイティファイナンスを組み合わせながら資金を確保しており、短期的な資金負担を抑えつつ、中長期の成長投資を継続する体制を整えている。

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株式会社Synspective

Synspectiveの衛星「StriX」シリーズのイメージ画像
Synspective「StriX」シリーズのイメージ画像 ©Synspective

概要

小型SAR衛星「StriX」シリーズの開発・運用に加え、自社の衛星データを活用した解析・監視サービスを提供する日本の宇宙スタートアップ。2018年に創業され、2024年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場した。

自社衛星による観測データを基盤に、地盤変動のモニタリングや災害対応、インフラ管理などの分野に向けたソリューションを展開。衛星データの取得にとどまらず、解析や可視化を通じて顧客の意思決定を支援する点を特徴とし、データ活用まで含めた一体的なサービス提供を強みとしている。

事業状況

衛星コンステレーションの構築を進めながら、SAR衛星データの提供と衛星データ解析によるソリューションサービスの両輪で事業拡大を加速。防衛分野では航空自衛隊向けの宇宙システムに関するセキュリティ基準整備案件も受注しており、官公庁案件の広がりもみられる。

海外市場への展開も進めており、欧州子会社の設立やAirbus Defence and Spaceとの契約など、EMEA地域を視野に入れた事業基盤を構築。SARデータの提供やサービス連携を進めており、グローバル市場における販売チャネルの拡大が期待されている。

短期的には投資負担が続くものの、将来の売上につながる案件が着実に積み上がっている状況といえる。

株式会社アクセルスペースホールディングス

アクセルスペースが開発した衛星
アクセルスペースが開発した衛星(アクセルスペースのPRTIMESより引用)

概要

小型地球観測衛星の開発・製造から運用、データ提供までを一貫して手がける企業である。

2008年、東京大学発のベンチャー企業として株式会社アクセルスペースが設立された。2020年には、単独株式移転により純粋持株会社である株式会社アクセルスペースホールディングスが設立され、2025年8月に東京証券取引所グロース市場へ上場

自社衛星による光学地球観測データを提供する「AxelGlobe」と、顧客向け小型衛星プロジェクトの設計・製造・打上げ・運用を担う「AxelLiner」の2事業を通じて、官民の顧客に衛星ソリューションを提供している。

事業状況

衛星開発や将来のコンステレーション構築に向けた先行投資が続いており、短期的な収益性よりも中長期の事業基盤強化を優先する構造となっている。手元資金の確保や開発関連資産の計上が進むなど、こうした投資を継続するための基盤整備も進んでいる。

また、同社の売上は案件の納品・検収タイミングに依存する側面があり、四半期ごとの変動が大きくなりやすい。一方で、受注残高は大きく積み上がっており、足元の売上動向とは別に、中長期的な売上機会を抱えている状況にある。とくにAxelGlobe事業では、防衛省の衛星コンステレーション関連案件が進行しており、今後は複数年度にわたり段階的に売上へ計上される見込みである。

その一方で、AxelLinerでは民間企業向けの軌道上実証サービスが立ち上がりつつあり、AxelGlobeでも海外や民間領域への展開が進められている。政府系案件を基盤としながら、将来的な事業領域の拡大も図る段階にある。

株式会社アストロスケールホールディングス

アストロスケールの衛星が宇宙デブリに接近し、近傍運用・観測したミッションのイメージ画像
アストロスケールの衛星が宇宙デブリに接近し、近傍運用・観測したミッションのイメージ画像 (PR TIMESリリースから引用)

概要

宇宙空間に存在するスペースデブリ(宇宙ごみ)の除去や、人工衛星の軌道上サービスを開発する宇宙企業である。2024年6月に東京証券取引所グロース市場へ上場。日本、英国、米国、フランス、イスラエルなどに拠点を持ち、政府機関や宇宙機関と連携しながら宇宙サービス市場の開拓を進めている。

低軌道では衛星コンステレーションの増加により宇宙ごみ問題が深刻化しており、将来的な宇宙交通管理やデブリ除去などの宇宙インフラサービスの需要拡大に向けて、以下のような事業を開発している。

  • デブリ除去ミッション
  • 衛星の軌道離脱サービス
  • 衛星点検
  • 燃料補給や修理

事業状況

政府ミッションを中心としたプロジェクトの進行により、売上収益は拡大している。売上総利益は前年同期の赤字から黒字へと改善し、営業損益も赤字ながら改善傾向にあるなど、収益面では一定の進展がみられる。

一方で、軌道上サービスの実現に向けた技術開発やミッション準備が引き続き進められており、短期的な利益確保よりも実証や開発を優先するフェーズにある。研究開発費については、衛星製造コストの資産計上などの影響もあり、会計上は減少している。

また、宇宙ビジネスは契約から収益計上までに数年を要するケースが多く、同社においても平均案件期間は約3年程度とされる。こうした特性から、足元の業績はプロジェクト進行に左右される一方、政府案件を中心とした受注の積み上げにより、中長期的な事業拡大を図る段階にある。

宇宙関連企業はなぜ投資先行になりやすいのか

宇宙産業は、ロケットや衛星の開発や製造、打上げ、運用に多額の資金が必要となるうえ、実際にサービスを提供して収益を得るまでに時間を要する。そのため、事業の初期段階では売上よりも投資が先行しやすく、短期的には赤字が続きやすい構造にある。

加えて、宇宙ビジネスは比較的新しい市場でもある。地球観測データの販売や解析サービス、安全保障分野での活用など用途は広がっているものの、各社は技術開発を進めながら、どの領域で安定的な収益を確保できるかを模索している段階にあるだろう。

一方で、安全保障やインフラ分野における宇宙利用の重要性が高まる中、各国政府による大型契約や補助金が民間企業の事業を後押ししており、こうした支援が市場の立ち上がりを支えている。

さいごに

日本の宇宙上場スタートアップの業績を見ると、多くの企業で投資負担が先行している。一方で、その背景には衛星コンステレーションの構築や新規サービスの立ち上げ、大型案件の進行など、将来の事業拡大に向けた動きがある。

宇宙ビジネスは市場そのものが立ち上がりの段階にあり、各社は技術開発と事業化を並行して進めている。そのため、足元の業績には違いがあっても、多くの企業に共通しているのは、収益の最大化よりもまず事業基盤の構築を優先している点だ。

今後は、こうした先行投資がどのように収益へ結びついていくのかが焦点となる。日本の宇宙上場企業が、成長産業として期待される宇宙ビジネスをどこまで具体的な事業として定着させられるのか、引き続き注目したい。

本稿で紹介した企業を含め、宇宙業界では現在、様々な企業が人材を募集している。興味のある方は、業界特化型の人材マッチングサービス「スぺジョブ」をぜひチェックしていただきたい。

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