Synspectiveの決算内容を解説・考察|2026年12月期Q1決算
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2026年5月15日、小型SAR衛星を開発・運用するSynspectiveは、2026年12月期第一四半期(Q1)の決算説明資料を公表した。
本記事では、2025年12月期Q1決算のポイントと、同社の事業進捗を整理する。

Synspectiveの概要

Synspectiveは、小型合成開口レーダー(SAR)衛星の開発・運用と、観測データを活用したソリューション提供を行う日本の宇宙スタートアップである。

主力は独自開発の小型SAR衛星「StriX」シリーズである。SAR衛星は天候や昼夜の影響を受けずに地表を観測できるため、災害対応、インフラ監視、資源管理、安全保障などの分野で需要が拡大している。

同社は現在、StriXシリーズによるSAR衛星コンステレーションの拡大を進めており、観測頻度の向上と即応性の高いサービスの実現を目指している。さらに、衛星データの取得だけでなく、解析や意思決定支援までを含めたサービス提供を行っており、データプラットフォーム企業としての事業モデルを構築している。

政府案件や海外展開も進みつつあり、日本発の商業SAR企業として国際市場での存在感を高めている。

Synspectiveが開発する小型SAR衛星のイメージ画像
Synspectiveが開発する小型SAR衛星のイメージ画像 ©株式会社Synspective

Synspectiveの決算内容|2026年12月期Q1

Synspectiveが発表した2026年12月期Q1決算は下図の通りである。

Synspective 2026年12月期Q1決算概要
Synspective 2026年12月期Q1決算概要 ©Space Connect

業績のポイント

2026年12月期第1四半期の総収入は7.46億円となり、前年同期比で約35%減少した。売上高は6.97億円で、前年同期の11.38億円から減少している。

減収の主な要因は、前年同期に計上されていた防衛省向けのSAR衛星宇宙実証案件が、今期第1四半期には寄与しなかったことである。同社は、防衛省「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」に関する売上高を第2四半期以降に計上予定としており、第1四半期は大型案件の売上貢献がまだ反映されていない段階といえる。

一方、費用面では衛星運用機数の増加や、次世代衛星の研究開発、販売体制の拡大、海外展開によりコストが増加している。売上原価は11.42億円、販売費及び一般管理費は11.68億円となり、営業損失は16.13億円、経常損失は16.94億円、親会社株主に帰属する四半期純損失は17.31億円となった。

ただし、今回の赤字拡大は、衛星コンステレーション構築や海外展開、次世代衛星開発に向けた先行投資の性格が強い。短期的には損失が続いているものの、受注残高の拡大と衛星運用機数の増加により、今後の売上拡大に向けた基盤は整いつつある。

財務状況と資金使途

2026年3月末時点の現金及び預金は199.88億円となり、前期末の245.42億円から45.53億円減少した。主な減少要因としては、衛星資産の増加26.8億円、当期純損失17.3億円が挙げられている。

固定資産は258.60億円となり、前期末から30.28億円増加した。このうち、運用中・製造中の衛星は230.51億円となっており、8号機以降の製造進捗によって増加している。

Synspectiveは、衛星の製造・打上げ・運用に大きな先行投資を必要とする事業モデルである。そのため、現預金の減少そのものよりも、資金が衛星資産や製造体制の拡充に使われているか、また大型案件の売上計上によって今後のキャッシュ創出につながるかが重要なポイントとなる。

また、宇宙戦略基金については、第1期で支援予定上限額237.9億円のうち164.6億円が交付決定済みとなっており、2026年3月末時点で累計24.8億円を計上している。さらに、第2期でも支援予定上限額37.6億円の採択が示されており、衛星量産や技術開発を進めるうえで、政府支援を活用した資金基盤の確保が進んでいる

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Synspectiveの事業進捗

受注残高は1,243.9億円へ、10機前後の運用で黒字化想定

Synspectiveは、国内政府を中心に契約実績を積み上げている。2026年3月末時点の受注残高は1,243.9億円となり、前期末比で994.3億円増加した。

主な要因は、防衛省「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」に関わる画像データ取得業務委託契約である。同契約の契約額は税抜960.7億円で、2026年4月からサービス提供を開始している。

加えて、宇宙戦略基金でも進展があった。同社は、第二期として「次世代地球観測衛星に向けた観測機能高度化技術」に採択されており、周波数スキャンSARによる高分解能・広域小型SAR衛星の軌道上実証を進める。広域のデータ取得を可能にする技術開発を通じて、安全保障や海洋監視など、広い範囲を継続的に観測する需要への対応力を高める狙いだ。

衛星の開発・打上げについては、2026年3月に8号機の打上げに成功し、5月には初画像を取得を発表。現在は4号機から8号機までの5機を軌道上で運用している。9号機についても、2026年5月22日に打上げ予定であり、同社は年内に運用機数を10機まで増やす計画である。

同社は、10機前後の運用機数で黒字化を想定している。その後は、機数の増加に伴い、海外政府へのデータ販売を拡大する計画である。

データの自国保有ニーズ拡大により事業機会が増加

海外市場では、各国が衛星データや衛星システムを自国で保有・管理したいという「ソブリン需要」が拡大している。安全保障や地政学リスクの高まりを背景に、衛星データを他国や外部企業に依存するのではなく、自国の管理下で確保したいという動きが強まっている。

こうした流れにより、SAR衛星データの需要は拡大している。特に、安全保障や海洋監視などの分野では、広い範囲を継続的に観測できる能力が求められる。

同社は、こうした需要に対応するため、シンガポール、米国、ドイツを軸に海外展開を進めている。アジアではシンガポールの現地法人を中心に、ウズベキスタンやカザフスタン、東南アジア諸国との取り組みを進める。米国では米国の現地法人を軸に、現地企業とのパートナーシップを通じて事業拡大を図る。欧州・中東・アフリカ地域では、Airbus Defence and Spaceとの提携に加え、ドイツで現地法人の設立を進めており、同地域での契約獲得を目指す。

一方で、需要の強さに対してSARデータの供給者は限られている。Synspectiveは、需要超過の状況が続く中で、衛星の製造だけでなく、取得したデータを安定的に届ける体制まで含めた供給力の強化が必要だとしている。

Synspectiveの衛星が撮影したドイツのSAR画像
Synspectiveの衛星が撮影したドイツのSAR画像 (SynspectiveのPR TIMESリリースより)

ソリューション事業では新しい技術を実証

ソリューション事業では、短期間に大きく動く対象を衛星データで捉える新たな解析技術の実証が進んだ。具体的には、米国オクラホマ州クッシングの石油タンク群を対象に、在庫量に応じて屋根が数メートル上下する浮き屋根式の石油タンクの変動を遠隔監視する技術を実証した。

Synspectiveはこれまで、干渉SARを用いてミリ単位の地盤変動を読み取るアナリティクスを提供してきたが、短期間に大きく動く対象は従来の干渉SARでは解析が難しい。そこで今回、同社は独自の計測技術を実証し、数メートル規模で動く対象を1〜5cm程度の精度で計測できることを示した。

この実証により、巨大な石油タンクの変動監視や、資源エネルギー業界向けの在庫管理・設備監視に活用できる可能性が示された。また、同社はこの技術を大型インフラの変位把握にも応用できるとみている。ミリ単位の微小な変化と、数メートル規模の大きな変化を使い分けることで、インフラ、災害対応、資源エネルギーなど、安全保障以外の領域でもソリューション事業を広げる方針である。

さいごに

2026年12月期第1四半期のSynspectiveは、売上面では前年同期比で減収となった一方、防衛省案件の開始や受注残高の大幅な拡大により、今後の売上成長に向けた基盤を強めた。

また、8号機の運用開始、9号機の打上げ予定、宇宙戦略基金第二期の採択により、衛星コンステレーションの拡大と観測技術の高度化も進んでいる。海外では、衛星データを自国で確保したいというソブリン需要が高まっており、同社にとって事業機会は広がりつつある。

今後は、防衛省案件を着実に実行しながら、運用機数の拡大、海外政府向けのデータ販売、ソリューション事業の成長をどこまで進められるかが焦点となる。衛星数の拡大とデータ提供体制の強化を両立できるかが、Synspectiveの成長を左右する重要なポイントになりそうだ。

Synspectiveを含め、宇宙業界では現在、様々な企業がサービスの商用化を進めている。本業界での仕事に興味のある方は、業界特化型の人材マッチングサービス「スぺジョブ」をぜひチェックしていただきたい。

スぺジョブ

参考

Synspective 2026年12月期Q1決算説明資料(Synspective, 2026-05-15閲覧)

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