
2026年8月14日、小型SAR衛星を開発・運用するSynspectiveは、2026年12月期第二四半期(Q2)の決算説明資料を公表した。
本記事では、2026年12月期Q2決算のポイントと、同社の事業進捗を整理する。
Synspectiveの概要
Synspectiveは、小型合成開口レーダー(SAR)衛星の開発・運用と、観測データを活用したソリューション提供を行う日本の宇宙スタートアップである。主力は独自開発の小型SAR衛星「StriX」シリーズである。
SAR衛星は、電波を地表に照射し、その反射を利用して観測する人工衛星である。雲や雨などの影響を受けにくく、昼夜を問わず地表を観測できることから、災害対応、インフラ監視、資源管理、安全保障などで活用されている。
同社はStriXシリーズを複数機運用する衛星コンステレーションの構築を進めており、衛星データの販売に加え、取得したデータを解析し、顧客の意思決定を支援するソリューションも展開している。
国内政府向けの大型案件を事業基盤としながら、シンガポール、米国、ドイツの拠点や海外企業との提携を通じ、海外市場への展開も進めている。


Synspectiveの決算内容|2026年12月期Q2
Synspectiveが発表した2026年12月期Q2決算は下図の通りである。

業績のポイント
2026年12月期第2四半期累計の総収入は39.18億円となり、前年同期比186.5%増となった。
このうち、売上高は16.91億円で前年同期比27.4%増、補助金収入は22.27億円で同5,413.4%増となっている。
売上高の増加には、内閣府の小型SAR衛星コンステレーション利用拡大に向けた実証や、防衛省情報本部向け案件の完了に加え、2026年4月からサービス提供を開始した防衛省「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」に関する売上の計上開始が寄与した。
一方、衛星コンステレーションの構築に伴ってコストも増加している。
売上原価は24.06億円となり、前年同期の14.36億円から増加。衛星運用機数の増加に加え、4号機の耐用年数短縮に伴う減価償却費の前倒しなどが影響している。
販売費及び一般管理費も26.34億円まで増加した。次世代衛星の研究開発や人員増加、販売体制の拡大、海外展開に伴う費用などが増えている。
その結果、営業損失は33.50億円と、前年同期の21.09億円から拡大した。
Synspectiveの事業では、衛星の減価償却費や運用費など、運用機数の増加に伴ってコストも増える。一方で、衛星数が増えることで撮像能力が高まり、データ販売による売上拡大も見込まれる。
同社は10機前後の運用機数で黒字化を想定しており、2026年12月末には10機の運用を計画。
つまり現在は、衛星数の増加に伴って先行コストが膨らんでいる一方、今後は運用機数の拡大によって売上を伸ばし、収益性を改善できるかが重要な段階にある。
財務状況と投資の進捗
2026年6月末時点の現金及び預金は162.09億円となり、2025年12月末の245.42億円から83.32億円減少した。
主な要因は、衛星の製造や設備などへの有形・無形固定資産投資104.7億円と、中間純損失14.1億円である。一方で、借入金の純増12.7億円などが現預金の増加要因となった。
固定資産は320.45億円となり、前期末から92.12億円増加した。このうち運用中・製造中の衛星は289.81億円で、前期末から86.17億円増加している。主に8号機以降の衛星製造が進んだことによるものだ。
キャッシュ・フローでは、営業活動によるキャッシュ・フローが7.55億円のプラスとなった一方、投資活動によるキャッシュ・フローは105.91億円のマイナスとなった。
Synspectiveは現在、衛星コンステレーションの拡大を優先しており、営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持する一方、衛星製造や設備などへの投資を大きく拡大している段階といえる。

Synspectiveの事業進捗
防衛省案件が始動、受注残高は1,217.1億円
Synspectiveは、2026年4月から防衛省「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」に関するサービス納入を開始し、第2四半期から同案件の売上を計上した。
同案件は、2026年2月に契約した約5年間・960.7億円の大型案件である。2026年6月末時点の受注残高は1,217.1億円で、このうち防衛省衛星コンステレーション事業に関する受注残高は951.7億円となっている。
これまでは大型契約の獲得が事業拡大を示す大きなポイントだったが、第2四半期からは実際にサービスを提供し、受注した案件を売上として計上していく段階へ移ったといえる。

9・10号機を打上げ、量産能力も最大年30機へ
衛星コンステレーションの構築では、2026年5月に9号機、6月に10号機の打上げに成功した。9・10号機はいずれも8月に初画像の取得を発表しており、資料公表時点では7機の衛星を軌道上で運用している。
2026年は年間6機の打上げを目標としており、上半期までに8・9・10号機の3機を打ち上げた。11〜13号機についても引き続き2026年中の打ち上げを予定している。
さらに、衛星数の拡大に対応するため、自社の小型SAR衛星量産工場「ヤマトテクノロジーセンター」の拡張を決定。現在進めている年産12機体制の構築に加え、将来的に最大年産30機を製造できるスペースを確保する。
2026年6月末時点では36号機までの部材発注を開始し、20号機まで製造に着手している。 また、打ち上げについてもRocket Labと17機、SpaceXと7機の計24機分の機会を確保しており、衛星製造と打ち上げの両面でコンステレーション拡大に向けた準備を進めている。

4号機の発電性能低下に対応、後続機は部材を変更
運用中の衛星では新たな課題も明らかになった。
2024年3月に打ち上げた4号機では、発電機能に使用する一部部材の性能が想定より速く低下していることが確認された。これにより、商用衛星として想定している5年間の設計寿命を保証できない可能性があるとして、会計上の償却終了時期を2027年1月までに短縮することを決定した。
この影響により、減価償却費の前倒し計上は2026年12月期に8.2億円、2027年12月期に0.9億円を見込む。
対策として、すでに軌道上にある衛星では発電効率を高めるための調整を行い、運用期間の延長を図る。また、2026年後半以降に打ち上げる衛星では、推定される原因への恒久的な対策として、該当部材を代替部材へ変更する方針である。
衛星数を増やすだけでなく、長期間安定して運用できる衛星を量産することも、今後のコンステレーション拡大では重要となる。
欧州子会社を設立、海外展開を加速
海外事業では、各国が衛星データや衛星システムを自国で保有・管理しようとする「ソブリン需要」の拡大を背景に、現地での事業基盤を強化している。
2026年7月にはドイツに子会社を設立し、既存のシンガポール、米国の拠点に続いて欧州にも現地拠点を設け、海外での営業体制を拡大。欧州では、イタリアの地球観測サービス企業e-GEOSと複数年の戦略的パートナーシップを締結しており、e-GEOSが扱うCOSMO-SkyMedとSynspectiveのStriXから取得したデータを組み合わせ、地理空間情報を活用したサービスの共同開発を進める。
また、ノルウェーのKSATとの戦略的提携も拡大し、衛星との通信に利用する地上局サービス「KSATlite」の活用を広げる。
アジアでは、日本とタイが2026年6月に締結した「低軌道衛星コンステレーションに関する協力覚書」に基づく共同調査に協力しており、自然災害対策やインフラ管理、環境モニタリングなどでの活用可能性を検討する。
国内で衛星コンステレーションの構築と大型案件の実行を進めながら、海外でも政府・公共分野を中心とした案件獲得につなげられるかが、今後の成長に向けたポイントとなる。
さいごに
2026年12月期第2四半期のSynspectiveは、防衛省案件の売上計上や補助金収入の増加により、総収入が大きく伸びた。一方で、衛星コンステレーションの拡大に伴う製造・運用コストも増え、営業損失は拡大している。
今後の焦点は、増加するコストを上回るペースで売上を伸ばし、収益性を改善できるかである。同社は10機前後の運用で黒字化を想定しており、2026年末には10機体制を計画している。
その実現に向け、9・10号機の打上げや量産工場の拡張を進める一方、4号機では発電性能の低下を受けて対策も進めている。衛星数の拡大と安定運用を両立できるかが重要となる。
さらに、国内政府向け大型案件で得た実績や供給力を、拡大する海外のソブリン需要につなげられるかも中長期の成長を左右する。まずは10機体制の構築によって収益性を改善しながら、並行して進める海外展開を将来の売上拡大につなげられるかが注目されるだろう。
Synspectiveを含め、宇宙業界では現在、様々な企業がサービスの商用化を進めている。本業界での仕事に興味のある方は、業界特化型の転職プラットフォーム「スぺジョブ」をぜひチェックしていただきたい。

参考
Synspective 2026年12月期Q2決算説明資料(Synspective, 2026-08-17閲覧)
※本記事は、公開されている決算資料やIR情報をもとに、企業の事業動向を整理することを目的としたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、投資助言を目的としたものでもございません。








