北朝鮮、衛星の打ち上げ失敗。早急に2回目の打ち上げへ

北朝鮮が、5月31日- 6月11日の間に打ち上げると通告していた軍事偵察衛星が5月31日午前6時27分に打ち上げが行われ、墜落した

原因については、1段目の分離後、2段目のエンジンの始動で異常が起こり、推進力を失って黄海(朝鮮西側の海)に墜落したことが要因であったという。

北朝鮮は、早急に欠陥に対処し、第2次打ち上げを断行すると表明した。

今回の記事は、北朝鮮がどのような狙いで衛星を打ち上げたのかについて軽く考察する。

北朝鮮の狙い

北朝鮮が頻繁に軍事実験を行っているのは、日本国民なら既知の事実であるが、弾道ミサイルと同じ技術を用いる人工衛星の打ち上げは、弾道ミサイル技術の向上を目的とした発射とみなされ、国連安全保障理事会よりその活動を禁じられている

今回の事案で北朝鮮は、軍事偵察衛星を打ち上げるためのロケットであると明言しているものの、2012年と2016年に「人工衛星」と称して、事実上の弾道ミサイルを発射した経緯もあり、今回の沖縄方向に向けての飛翔体は、衛星打ち上げ用ロケットか、はたまた、弾道ミサイルか等の判断が難しいとの意見も挙がっている。

だが、今回の打ち上げに際しては、軍事偵察衛星の軌道投入を目的とした打ち上げであった可能性が高いと推測できる。

注目すべきは、軌道と時間

十中八九、軍事偵察衛星の打ち上げで間違いないと推測できる要因として、飛翔体を発射した方角と時間帯があげられる。

今回の北朝鮮のロケットの打ち上げは、南の方角かつ午前6時半頃の打ち上げであった。

このことから北朝鮮が衛星の投入を予定していた軌道は、地球の南北方向を回る太陽同期軌道(SSO)であると予測することが可能である。

衛星と太陽の位置関係が常に一定(衛星が通過する時の時間が、あらゆる地点で同じ)である太陽同期軌道は、地球の観測に最も適している軌道であるため、軍事偵察衛星を打ち上げる際にもよく使用される軌道である。

とりわけ今回の打ち上げ時刻の場合、ドーンダスク軌道(Dawn-Dusk軌道)と呼ばれる太陽同期軌道の中でも全く地球の影に入らない軌道を選んで打ち上げたと推測することが可能。

このように、ロケットの打ち上げに際しては、方角と時間帯を把握することで、打ち上げられた飛翔体がロケットなのか、それとも弾道ミサイルであるのかの大まかな推測は可能である。

北朝鮮の衛星の性能

では、もし北朝鮮の軍事偵察衛星が太陽同期軌道に投入されていたらどうなっていたのか。

これまで北朝鮮は2機の『光明星』と呼ばれる地球観測衛星を極軌道に投入成功した事例が挙げられている。

しかし、電波が受信できず、人工衛星としての機能は確立されなかったようだ。

そのため、北朝鮮が映像撮影やデータ送信に必要な技術を備えているかは懐疑的である。

一方で、2022年12月に北朝鮮が「衛星試験品搭載体から撮影した」とする韓国のソウル・仁川市の写真は解像度4m程度と分析されており、少なくともそれと同等かそれ以上の性能を持つ衛星技術を有している可能性も考えられる。

解像度4mだと、建物の判別程度なら十分可能な解像度である。

かつては、解像度10m前後の衛星が軍事偵察衛星として利用されていたことを考えると、解像度4mの衛星でも、十分脅威にはなるだろう。

早急に2回目の打ち上げに向けて、準備を進めている北朝鮮。

日本との関わりも根深い同国の今後の動きを注視していく必要はあるだろう。

余談

『弾道ミサイル』と『衛星打ち上げロケット』の違い

少し余談になるが、弾道ミサイルと衛星打ち上げロケットの違いについてわからない方のために、軽く解説しておく。

実は、その構造に関しては、ほぼ同じであり、武器を運ぶか衛星を運ぶかの違いである。

ICBMをはじめとする弾道ミサイルは、山なりの軌道を描き、目的地まで到達するのに対して、衛星打ち上げロケットは、平坦な軌跡を描く程度の違いであり、核爆弾を目的地まで運ぶ武器として使用される飛翔体が『弾道ミサイル』であり、衛星を宇宙まで運ぶ飛翔体が『衛星打ち上げロケット』と考えてもらって問題ない。

人工衛星打ち上げと弾道ミサイルの飛翔イメージ
第I部 わが国を取り巻く安全保障環境より引用

参考文献

北朝鮮「人工衛星」打ち上げ通告 31日~6月11日

【速報】北朝鮮「衛星ロケット発射も墜落。できるだけ早く第2次打ち上げを行う」 朝鮮中央通信

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