BlueOrigin社の宇宙船 トラブル乗り越え2年ぶりの宇宙旅行へ
©Space Connect株式会社

米航空宇宙企業「Blue Origin(ブルーオリジン)」は米国時間2024年5月14日、宇宙船「New Shepard(ニューシェパード)」での民間人を乗せた有人宇宙飛行を同月19日に再開すると発表した。

同宇宙船では、2022年8月の打ち上げトラブルが発生して以来有人飛行を行っておらず、今回の有人打ち上げは同社にとって約2年ぶりとなる。

今回は、Blue Origin社の宇宙船「New Shepard」での宇宙飛行の歴史を振り返りながら、2年ぶりの有人飛行打ち上げの見どころについて紹介していく。

Blue Origin社「New Shepard」で行う有人宇宙飛行の特徴

Blue Origin社は米Amazon.com創業者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が2000年に設立した航空宇宙企業である。

New Shepardは同社が開発した再使用可能な垂直離陸型の宇宙船であり、2015年に初飛行に成功している。

宇宙船 は「ブースター」と上部の「クルーカプセル」からなり、パイロットがいない完全自動操縦で、乗客それぞれのシートの横に大きな窓があるのが特徴だ。

宇宙船「New Shepard」クルーカプセル内部の様子
宇宙船「New Shepard」クルーカプセル内部の様子 ©Blue Origin

地球を回る軌道に乗らない「サブオービタル飛行」(準軌道・弾道飛行)と呼ばれる宇宙飛行形式で、飛行ステップは次の通り。

  • 高度約100kmを目指し発射、宇宙空間まで上昇
  • 搭乗者が乗っているクルーカプセルが分離され、自由落下を開始
  • 一定の高度まで落下するとパラシュートが展開される
  • そのまま地上へ軟着陸する

なんと発射から着陸、ここまでの時間は約11分。

無重力状態を全身で体感するとともに、窓から青い地球や一面に広がる宇宙空間を堪能できるごくわずかな夢の時間である。

宇宙船「New Shepard」での宇宙飛行の歩み

2021年 7月 民間企業世界初の有人飛行に成功

15回にわたる無人での試験飛行を経て、Blue Origin初の有人飛行は2021年7月に行われた。

宇宙船「New Shepard」に搭載された完全自動操縦のカプセルに、同社創業者のJeff Bezos氏、弟のMark氏に加えて、82歳の女性と18歳の少年2人が搭乗し、当時の宇宙旅行の最年長・最年少者を更新。

民間企業世界初の有人飛行に成功した Jeff Bezos氏たち
民間企業世界初の有人飛行に成功した Jeff Bezos氏たち ©Blue Origin

幅広い層に宇宙に行けるチャンスがあることを証明したBlue Originでのこの飛行は、民間企業による顧客を乗せた有人飛行で、カーマンライン(国際的に定められた宇宙との境界)を越えた世界初めての飛行となった。

2022年 9月 無人飛行での打ち上げ失敗

民間企業世界初の有人飛行に成功した約1年後、実験装置などのペイロードが搭載されたNew Shepardは発射直後にエンジンに問題が発生し、打ち上げに失敗した。

無人飛行であったものの、同社が運用段階に入ってからの打ち上げ失敗は初めてであった。

発射後わずか1分余りでトラブルにより、緊急停止システムが作動。

ロケット上部の貨物搭載用カプセル部分は、すぐにロケットから分離され、パラシュートで無事に着陸したが、当面の飛行停止は避けられず、今後の同社による宇宙旅行ビジネスへの影響が懸念されていた。

2023年 12月 1年3か月ぶりの無人飛行実施

前回の打ち上げからおよそ1年3か月、無人飛行での打ち上げが2023年12月に実施された。

今回のミッションでは、前回の打ち上げ時に宇宙空間へとサブオービタル飛行をする予定だった実験機器が、再び搭載された。

無人のクルーカプセルは宇宙空間に到達し、打ち上げから約10分後にパラシュートで地上へ帰還。

ブースターも着陸に成功し、有人宇宙飛行再開へ向け一歩前進する形となった。

無事着陸するNew Shepard のブースター
無事着陸するNew Shepard のブースター ©Blue Origin

2024年 5月 待望の打ち上げ再開 2年ぶりの有人飛行へ 

Blue Origin社は14日、New Shepard での有人飛行を19日に再開すると発表した。

打ち上げが実施されればBlue Origin社にとっては約2年ぶりの有人打ち上げだ。

今回の有人飛行では、アメリカ初の黒人宇宙飛行士候補者のEd Dwight(エド・ドワイト)氏や、ベンチャーキャピタル企業の創設者、フランス最大のクラフトビール醸造所の創設者など6名がカプセルに搭乗する。

商用宇宙ステーション「Orbital Reef(オービタル・リーフ)」建設の計画や、有人月面探査計画「アルテミス」で使用される有人船着陸システムの開発担当に選定される等、Elon Musk氏率いるSpaceXと並んで宇宙業界を賑わせている同社。

地球周回やISS滞在など宇宙旅行の多様化が進む中、民間企業で世界初の有人飛行に成功したBlue Origin社は今回の有人飛行を成功させ、宇宙旅行業界での信頼を取り戻せるか。

注目の打ち上げは5月19日。

西テキサスの拠点より、日本時間22時30分に予定されている。

さいごに

今回は Blue Origin社 開発の宇宙船「New Shepard」の今までの歩みと共に、19日に実施される打ち上げのについて紹介した。

Blue Originの創業者 Jeff Bezos 氏は、5歳の時にみたアポロ11号の月面着陸映像が、自身の『宇宙への夢』に大きな影響を与えたと過去のインタビューで語っている。

安全安心が必須の宇宙旅行において、打ち上げトラブルは大きな痛手であるが、今回の打ち上げを無事成功させ、宇宙に憧れる世界中の人々に『宇宙への夢』を届けることができるのだろうか。

参考

  • Blue Origin– Blue Origin safely launches four commercial astronauts to space and back
  • Blue Origin – Blue Origin Successfully Completes 24th Mission to Space
  • NASA – NASA, Partners Continue to Advance Space Tech on Suborbital Flights
  • NASA – Available Flight Platforms
  • Space News – New Shepard returns to flight with successful Suborbital mission
  • Bloomberg – Blue Origin Sets Date to Fly Space Tourists After Two-Year Halt

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

フォローで最新情報をチェック

おすすめの記事