2029年に地球接近の小惑星アポフィス探査へ、JAXAとESAが協力
©Space Connect

2026年5月7日、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と欧州宇宙機関(以下、ESA)は、プラネタリーディフェンス分野における協力覚書(MOC)を締結した。あわせて、地球接近小惑星アポフィス探査計画「RAMSES」に関する協力協定にも署名した。

本記事では、アポフィスとはどのような小惑星なのか、JAXAとESAが進めるRAMSES計画の概要、そして同ミッションがプラネタリーディフェンスにおいて持つ意味を整理する。

小惑星「アポフィス」とは

アポフィスは、平均幅約375m、不規則で細長い形状を持つ小惑星。2029年4月14日6時46分(日本時間)に地表から約3万2,000kmの距離を通過すると予測されている。これは月までの距離の約10分の1、静止衛星が位置する高度である約3万6,000kmよりも地球に近い。地域によっては肉眼で夜空に見える可能性があるという。

小惑星「アポフィス」
小惑星「アポフィス」 ©ESA

2029年の接近でアポフィスが地球に衝突する危険性はないとされている。一方で、同規模サイズの天体が地球に接近するのは極めて稀だ。5000年から1万年に一度の出来事とされており、観測史上では初めて。

現在知られている天体については、同様の接近は今後7500年間は起こらない可能性があるとの見方も示されている。

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JAXAとESA、アポフィス探査「RAMSES」で協力

JAXAとESAは今回、プラネタリーディフェンス分野における協力を強化、促進するための協力覚書(MOC)を締結するとともに、本MOCの下、アポフィス探査計画「RAMSES」に関する協力協定に署名した。

プラネタリーディフェンスとは

プラネタリーディフェンスとは、地球に接近する小惑星などの天体を早期に発見し、その性質や軌道を調べ、地球への衝突リスクを評価する国際的な取り組みである。衝突の恐れがある場合には、その影響を回避・軽減するための対応策を検討することも含まれる。

天体の地球衝突問題を扱う活動は、当初「スペースガード」として1990年代から本格化した。2000年前後以降は国連でも本格的な議論が行われ、プラネタリーディフェンスとして国際的な活動に発展。

国連では、2029年を「小惑星認識と惑星防衛の国際年」と設定しており、日本でも「宇宙基本計画」の工程表において、プラネタリーディフェンスの活動を行うことが示されている。

こうした背景のもと、JAXAとESAは、2024年11月に署名した「将来大型協力に関する共同声明」において、地球防衛を含む協力可能性の検討を加速させてきた。今回のMOCと協定は、両機関の協力をさらに強化するものだ。

RAMSESはアポフィスを探査するESAの計画

RAMSESは、ESAが進める地球接近小惑星アポフィスの探査計画である。ESAは、RAMSESを2028年に打ち上げ、2029年4月のアポフィス地球接近に先立って小惑星の近くに到着させ、近接観測を行う計画を進めている。

RAMSES計画のイメージ
RAMSES計画のイメージ ©ESA

RAMSESの特徴は、アポフィスが地球へ接近する前後の状態を観測できる点だ。小惑星が地球の重力を受けることで起きた変化に関するデータは、将来の地球防衛に向けた小惑星モデルの精度向上に役立つ可能性がある。

地球に接近する天体がどのようにふるまうのかを実際に調べることで、プラネタリーディフェンスに関する科学的・技術的知見の獲得を目指している。

JAXAはH3ロケットと搭載機器を提供

今回の協定により、JAXAは、RAMSES探査機に搭載する薄膜軽量太陽電池パドル(Solar Array Wing:SAWs)と熱赤外センサ(Thermal Infrared Imager:TIRI)を提供する。

薄膜軽量太陽電池パドルは、探査機に電力を供給するための装置である。宇宙機では、限られた重量の中で必要な電力を確保することが重要になる。

熱赤外センサは、天体から出る熱赤外線を観測する機器である。表面の温度分布や温度変化を調べることで、小惑星表面の性質を理解する手がかりになる。

さらに、H3ロケットがRAMSESの打上げを担う点も注目される。H3は日本の基幹ロケットであり、今回の協力では、探査機の搭載機器だけでなく、打上げ手段も日本側が担うことになる。

アポフィス探査が地球防衛につながる理由

地球防衛では、小惑星を見つけるだけでは不十分である。

将来、地球に接近する天体が見つかった場合、その天体がどのような大きさで、どのような形をしており、どのように自転し、どのような軌道を進むのかを知る必要がある。こうした情報がなければ、地球への接近リスクを正確に評価することは難しい。

さらに、衝突回避策を検討する場合には、小惑星が外部から力を受けたときにどのように反応するのかを理解する必要がある。小惑星の表面や内部の構造によって、外からの力の伝わり方や、軌道を変えるために必要な条件は異なる可能性があるためである。

アポフィスは、2029年に地球のすぐ近くを通過する。その際、地球の重力によって、軌道、自転、表面状態などに変化が生じる可能性がある。RAMSESは、この変化を調べることで、将来の地球接近天体のリスク評価や、プラネタリーディフェンスの検討に役立つ知見の獲得を目指す。

さいごに

JAXAとESAによる今回の協力は、2029年に地球へ接近する小惑星アポフィスを対象に、地球防衛の知見を深める国際ミッションである。

JAXAは、H3ロケットによる打上げ、薄膜軽量太陽電池パドル、熱赤外センサの提供を通じて、ESAのRAMSES計画に参画する。日本の宇宙輸送技術や探査技術が、プラネタリーディフェンスという国際課題に活用される点でも注目される。

2029年のアポフィス接近は、地球近傍天体への理解を深める貴重な機会となる。地球に接近する天体をどう観測し、将来のリスクにどう備えるのか。JAXAとESAによるRAMSESミッションの進展が注目される。

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参考

欧州宇宙機関(ESA)との地球防衛に関する協力覚書(MOC)及び地球接近小惑星アポフィス探査計画(RAMSES)の協力協定の締結(JAXA, 2026-05-12閲覧)

Apophis(ESA, 2026-05-12閲覧)

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