コカ・コーラとスペースポートが連携!? 一体なぜ?
© SPACE COTAN

HOSPOを運営する北海道大樹町とSPACE COTAN株式会社は、2022年10月14日、北海道コカ・コーラボトリング株式会社との連携協定を締結した。

大樹町とSPACE COTAN、そして大手飲料会社である北海道コカ・コーラボトリングの3者が「なぜ」、そして「どのような」連携協定を結んだのだろうか。

今回の記事では、共通点がないようにも思えるこの3者間協定の可能性について考察している。

協定の背景

なぜ協定を結んだのかを考察する前に、両者間(HOSPO・北海道コカ・コーラボトリング)の立ち位置を理解してもらう必要がある。

これら2つの団体の立ち位置を踏まえると、今回の3者間協定の背景が浮かび上がってくるからだ。

まず、弊社メディアでも度々取り上げている「北海道スペースポート」、愛称はHOSPO。

北海道に、航空宇宙関連産業が集積する「宇宙版シリコンバレー」を形成するといった目的から始まった、大樹町とSPACE COTAN株式会社が共同で建設・運営している民間宇宙港のことだ。

HOSPOの場合、同宇宙港プロジェクトが掲げる「宇宙版シリコンバレー」は、ただロケットや宇宙船を打ち上げるといった機能的な場所ではない、といった側面を押さえてもらう必要がある。

名前の通り、宇宙に関連した周辺産業がたくさん集まる場所になるといったことは大体予想できるであろう。

しかしながら、HOSPOプロジェクトが掲げるビジョンの最大の面白みは、宇宙版シリコンバレーのその先だ。

宇宙産業を起点とした地域の活性化、いわゆる地方創生の文脈で整備が進められているのだ。

実際に日本旅行などの宇宙産業とは異なる他産業企業との連携が進んでいることを考えると、早期の段階から、地方創生の観点も重視していることが伺える。

「宇宙による観光振興・宇宙のまちづくり」 北海道大樹町、日本旅行、SPACE COTANが協定締結

要するに、HOSPOプロジェクトとは、日本経済に影響を与える規模の地方創生を目指した一大街づくりプロジェクトのことを指しているのだ。

HOSPOの構想
HOSPOの構想 ©SPACE COTAN

では、北海道コカ・コーラボトリングはどうなのか。

同社は、日本コカ・コーラ株式会社と契約を結び、 原液の供給を受けて、北の大地で製品の製造と販売を行っている会社だ。

北海道限定のいろはすやコーラのボトルを見たことがある人は多いのではないだろうか。

今回注目していただきたい同社のポイントは、北海道の中でも有数の地域密着型のCSR[※1]活動に力を入れている企業だということだ。

意外かもしれないが、同社は、飲料の販売以外にも行政・警察・地元住民・北海道の他の企業といった様々なステークホルダーとの関係性を深めながら、北海道を盛り上げるための活動を展開している。

自動販売機を使用した防災情報の発信、旭山動物園での体験型の環境プログラムの支援、地域の子供が描いた絵の自販機での展示などからも同社のCSR活動に対しての熱が伺える。

何より、北海道で商品を定期的に購入してもらうためには、地域住民との信頼構築が必須であることを理解しているのであろう。

目先の利益に捉われず、10年以上かけて、数多くの地域活性化のプロジェクトに取り組んできた同社の地域住民からの信頼は厚い。

それが巡りに巡って、自社の利益になって戻ってきているのだ。

要するに、地域のための活動で他社との差別化を図り、競争力を高めている企業、それが北海道コカ・コーラボトリングである。

[※1] CSRとは、Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の略語で、従業員や消費者、投資者、環境などへの配慮から社会貢献までの幅広い内容に対して適切な意思決定を行う責任のこと

なぜ協定を結んだのか

では、改めてなぜ今回、3者間協定を結んだのだろうか。

HOSPOと北海道コカ・コーラボトリングの紹介で、おおよその背景が見えているのではないだろうか。

両者間とも共通しているのは「地域活性化」に重きを置いてビジネスを展開しているということである。

ここで両者のリソースを考えてみると、HOSPOの場合、これからの未来を描いて急進する爆発力がある反面、少し宇宙業界や大樹町の外に行くと、まだまだ認知不足なのが現状である。

一方で、北海道コカ・コーラボトリングの場合、道内にて、圧倒的なブランド力があるものの、少子化や人材の流動化が進む中で、北海道の市場規模は狭まってきており、事業の継続が難しい。

このように双方の立ち位置に立って考えてみた時に、今回の協定は、北海道の地方創生といった双方が掲げる未来が一致した上で、互いの弱みを補完できる関係性であったため、誕生したものだと言えるだろう。

実施される取り組み

今回の協定では、第1弾の取り組みとして、売上金の一部が大樹町に寄付される「HOSPO 支援自販機」を2022年10月14日から展開。

大樹町内の既存自販機が支援自販機として位置付けられるほか、全道各地のHOSPOを応援する企業への自販機設置が進められる予定だ。

なお、すでに大樹町役場および道の駅コスモール大樹には「大樹(ここ)から宇宙(そら)へ」とラッピングされたHOSPO 支援自販機が設置されている。

HOSPO支援自販機 ©SPACE COTAN

HOSPO支援自販機プログラム以外にも、HOSPOの広報活動やイベント時のドリンク提供での協力など、宇宙版シリコンバレーの形成に向けた様々な取り組みを連携して進めていく方針だ。

さいごに

連携協定の締結にあたり、3者代表は、それぞれ以下のようにコメントを残している。

北海道コカ・コーラボトリング株式会社 

常務取締役 酒寄 正太 氏

この度は、このような大きなプロジェクトに関われることを大変光栄に思っております。

今回の協定における具体的な取り組みのひとつである「HOSPO支援自販機」については、自動販売機という当社の最大の資産を有効活用し、365日飲料を提供するという価値に加え、今回のような新たな価値を生活者の皆様に感じていただきたく思います。

大樹町やSPACE COTAN社の取り組みが広く認知されていくことで、このプロジェクトの成功に微力ながら貢献して参りたいと強く決意しているところでございます。

今後も三者で多くの対話を重ねることで協働の取り組みを拡大し、自動販売機のみならず当社の様々なアセットをご活用いただくことで、このプロジェクトを成功に近づける、その一端を担いたいと考えています。

そして、何よりも未来を感じさせるこのプロジェクトに当社が参画できることを大変嬉しく思っており、ここをスタートラインとして継続的に貢献していきたいと考えおりますので、今後ともよろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。

大樹町長 酒森 正人氏

飲料の製造・販売のみならず、どさんこ企業として、北海道の魅力をさらに高める活動や地域課題解決などにも取り組まれている北海道コカ・コーラボトリング株式会社様にお力添えいただき、宇宙版シリコンバレーの形成に向けた様々な取り組みを、今後、展開していければと考えています。

第一弾の取り組みとして、町内の同社既設自販機を「HOSPO 支援自販機」と位置付けていただくとともに、HOSPOオリジナルラッピング自販機を当役場庁舎などに新設いただきました。

その売上の一部を北海道スペースポートの整備資金としてご寄付いただくことに対し、厚く御礼申し上げます。

同社のブランド力により、HOSPOの取り組みを北海道の皆様に広く知っていただき、更なる応援者の創出につながっていくことを期待しているところでもあります。

三者それぞれが持つ魅力を広く発信し、さらには、人と人との繋がりを生み出し、その輪を広げていけるよう取り組みを進めてまいります。

SPACE COTAN株式会社 

取締役兼CMO 中神 美佳氏

HOSPOは、アジア初、そして国内初の民間にひらかれた商業宇宙港です。

整備を進めることで宇宙港を中心に関連産業が集積する「宇宙版シリコンバレー」形成と、宇宙産業による地方創生を目指しています。

HOSPOでは今年9月に人工衛星打上げ用のロケット発射場の建設工事が始まりましたが、国内の人工衛星を国内から打上げられるインフラ環境を整え、増加する世界のロケット打上げ需要に応えていく必要があります。

整備資金は企業版ふるさと納税の寄付金と地方創生拠点整備交付金を充てていますが、ビジョンの実現にはより多くの皆様の支援が必要です。

北海道コカ・コーラボトリング株式会社様との連携協定により、自販機の売上の一部がHOSPOプロジェクト・宇宙のまちづくりに寄付されます。

飲料という身近な商品を通して、多くの住民の方が日常の暮らしの中で気軽に北海道の未来づくりに参加できる取り組みであり、宇宙を身近に感じていただくきっかけにもなると思います。

大変心強いパートナーと協定を締結でき、とても心強く感じています。

今後も北海道コカ・コーラボトリング株式会社様と大樹町様と協力しながら宇宙版シリコンバレーを早期に実現させてまいります。

HOSPOでは、人工衛星用のロケット射場整備の資金確保にふるさと納税(企業版・個人版)や寄付の仕組みを利用している。

実際に昨年度は、道内1位の寄付件数となる80の企業が、企業版ふるさと納税を通じて支援を行った。

支援を受け、HOSPOの射場や滑走路が整備されることで、ロケット事業者の利用や、宇宙船、空飛ぶクルマなどの実験、イベントでの利用などがさらに活発化する。

多様な事業者や団体が集まることで、宇宙分野だけではない、本当の意味での地方創生が促進されるのだ。

北海道コカ・コーラボトリングとの取り組みが、HOSPOの、そして北海道の未来の活気を高めるものになることを願う。

引き続き、新しい情報が更新され次第、弊社メディアにて取り上げていこうと思う。

参考:

“北海道スペースポート”を運営する北海道大樹町、SPACE COTAN株式会社が北海道コカ・コーラボトリング株式会社と「連携協定」を締結

サステナブルで地域密着型のCSR活動_北海道コカ・コーラボトリング① | GBGP (goodbusiness.jp)

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