
H3ロケットは、日本の宇宙輸送を担う次世代基幹ロケットとして、2023年の初号機打上げ以降、試験と実運用の両面で運用実績を積み重ねてきた。
本記事では、H3ロケットの概要と直近の打上げスケジュール、そしてこれまでの打上げ実績について整理する。
目次
H3ロケットとは
H3ロケットは、JAXAと三菱重工業が共同で開発した、日本の次世代基幹ロケットである。従来のH-IIAロケットの後継として位置付けられ、政府ミッションに加え、商業打上げ市場での競争力確保も視野に入れて設計されている。
最大の特徴は「高信頼性」を維持しながら「低コスト化」と「打上げの柔軟性」を両立させようとしている点にある。従来の日本のロケットは信頼性の高さが評価される一方で、コスト面では国際競争力に課題があった。
そのため、打上げコストについては、H-IIAロケットと比較して約半分程度まで低減することを目標にしており、最軽量形態で1回あたり約50億円規模での打上げを想定している。

H3ロケットの打上げ実績とスケジュール
1号機
1号機(試験機1号機)では、H3ロケットの初飛行として、地球観測を目的とした先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」の打上げが実施された。
打上げは、2023年3月7日10時37分55秒(日本標準時)に種子島宇宙センターから行われ、第1段エンジンの燃焼および1段・2段分離までは計画どおりに進行した。
しかし、第2段エンジンが着火せず、所定の軌道への投入が不可能と判断されたことから、飛行中に指令破壊信号が送られ、ミッションは失敗に終わった。
| 打上げ日 | 2023年3月7日(火) |
| 時間 | 10時37分 |
| 場所 | 種子島宇宙センター |
| ペイロード | だいち3号(ALOS-3) |
2号機
2号機(試験機2号機)では、H3ロケットの飛行実証および性能確認を主目的としたミッションが実施された。本機は初号機と同様の機体形態を採用し、開発の妥当性を検証する位置付けで打上げが行われている。
打上げは、2024年2月17日9時22分55秒(日本標準時)に種子島宇宙センターから実施され、ロケットは計画どおり飛行した。第2段機体は所定の軌道への投入に成功し、打上げから約16分43秒後には小型衛星「CE-SAT-IE」の分離も確認されている。
また本ミッションでは、ロケット性能確認用ペイロード(VEP-4)の分離に加え、小型副衛星「TIRSAT」への分離信号送出や、第2段機体の制御再突入といった一連の機能も検証された。
| 打上げ日 | 2024年2月17日(土) |
| 時間 | 9時22分55秒 |
| 場所 | 種子島宇宙センター |
| ペイロード | 模擬衛星 小型副衛星2基(CE-SAT-IE、TIRSAT) |
3号機
3号機では、地球観測を目的とした先進レーダ衛星「だいち4号(ALOS-4)」の打上げが実施された。本衛星は、宇宙航空研究開発機構が開発した陸域観測技術衛星2号「だいち2号」の後継機にあたり、災害監視や地殻変動の把握などへの活用が想定されている。
打上げは、2024年7月1日12時6分42秒(日本標準時)に種子島宇宙センターから行われ、ロケットは計画どおり飛行した。打上げから約16分34秒後、ALOS-4は正常に分離され、所定の軌道への投入に成功している。
| 打上げ日 | 2024年7月1日(月) |
| 時間 | 12時6分42秒 |
| 場所 | 種子島宇宙センター |
| ペイロード | だいち4号(ALOS-4) |
4号機
4号機では、防衛用途の通信インフラを担うXバンド防衛通信衛星「きらめき3号」の打上げが実施された。本衛星は、安定した通信環境の確保を目的とし、静止軌道での運用が想定されている。
打上げは、2024年11月4日15時48分(日本標準時)に種子島宇宙センターから行われ、H3ロケットとして初めて静止トランスファ軌道(GTO)への投入ミッションが行われた。ミッションは計画どおり進行し、衛星の軌道投入に成功している。
また本ミッションでは、将来の高付加価値ミッションに向けた技術実証として、長時間の宇宙飛行(ロングコースト)および2段エンジンの再着火に関するデータ取得も実施された。
| 打上げ日 | 2024年11月4日(月) |
| 時間 | 15時48分 |
| 場所 | 種子島宇宙センター |
| ペイロード | Xバンド防衛通信衛星「きらめき3号」 |
5号機
5号機では、日本の測位インフラである準天頂衛星システム(QZSS)の一環として、「みちびき6号機」の打上げが実施された。本衛星は、GPSの補完・補強機能を担い、日本およびアジア太平洋地域における測位精度の向上を目的としている。
打上げは2025年2月2日17時30分(日本標準時)に種子島宇宙センターから行われ、H3ロケット(H3-22S形態)は計画どおりに飛行した。その後、衛星の静止トランスファ軌道への投入に成功している。
| 打上げ日 | 2025年2月2日(日) |
| 時間 | 17時30分 |
| 場所 | 種子島宇宙センター |
| ペイロード | みちびき6号機 |
7号機
7号機では、国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給および技術実証を目的とした新型宇宙ステーション補給機「HTV-X1」の打上げが実施された。HTV-Xは、従来の補給機「こうのとり(HTV)」の後継機として開発され、物資輸送能力の向上や将来の有人宇宙活動に向けた技術実証を担う機体である。
打上げは、2025年10月26日9時00分15秒(日本標準時)に種子島宇宙センターから行われ、ロケットは計画どおり飛行した。打上げから約14分4秒後、HTV-X1は正常に分離され、所定の軌道への投入に成功している。
また本ミッションは、H3ロケットにおいて最大能力となる「H3-24W形態」(固体ロケットブースタ4本搭載)の初飛行であり、大型貨物輸送やISS補給といった高負荷ミッションへの対応能力を実証する位置付けでもあった。
| 打上げ日 | 2025年10月26日(日) |
| 時間 | 9時00分15秒 |
| 場所 | 種子島宇宙センター |
| ペイロード | 新型宇宙ステーション補給機「HTV-X1」 |
8号機
8号機では、準天頂衛星システム(QZSS)の一環として「みちびき5号機(QZS-5)」の打上げが実施された。準天頂衛星システムは、日本国内において常時天頂付近に衛星を配置することを目的とし、複数の軌道面に配置された衛星を組み合わせて運用される測位インフラである。
打上げは、2025年12月22日10時51分30秒(日本標準時)に行われ、第2段エンジンの第1回燃焼終了時点では所定の地球周回軌道(パーキング軌道)への投入に成功した。
しかし、第2段エンジンの第2回燃焼が正常に立ち上がらず早期停止したことにより、最終的な目標軌道への投入には至らず、ミッションは失敗とされた。
| 打上げ日 | 2025年12月22日(月) |
| 時間 | 10時51分30秒 |
| 場所 | 種子島宇宙センター |
| ペイロード | みちびき5号機 |
6号機
6号機では、「H3-30」と呼ばれる機体形態の初飛行となる試験機だ。
H3-30は第1段にLE-9エンジンを3基搭載する構成となっており、固体ロケットブースターを使用せずに高い打上げ能力を確保できる点が特徴である。
2026年3月14日から15日にかけて、発射台に固定したままエンジンを燃焼させる1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)が実施され、これまでの試験で確認されていた液体水素タンクおよび液体酸素タンクの圧力上昇不足について、対策が適切に機能するかどうかの検証が行われた。
8号機のミッション失敗を踏まえ本機の打上げは延期されており、打上げ日程は未定である。
| 打上げ日 | 未定 |
| 時間 | 未定 |
| 場所 | 未定 |
| ペイロード | 性能確認用模擬ペイロード |
さいごに
H3ロケットは、初号機の失敗を経て試験機2号機以降で連続成功を重ね、日本の基幹ロケットとしての運用に向けた基盤を整えつつある一方で、8号機では不具合が発生し、改めて課題も確認された。
今後の飛行再開と技術検証を通じて、こうした課題への対応がどこまで進むかが重要なポイントとなる。また、複数の機体形態が揃うことで、H3はより柔軟な打上げサービスの提供が可能になると見込まれる。
国際的にはSpaceXやBlue Originなどとの競争が続く中、H3が安定した打上げ頻度とコスト目標を実現できるかが、日本の宇宙輸送能力の将来を左右する要素となりそうだ。
宇宙業界では現在、様々な企業が人材を募集している。興味のある方は、業界特化型の人材マッチングサービス「スぺジョブ」をチェックしていただきたい。

















