
2026年3月、一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公募する宇宙戦略基金(第二期)において、自身を代表機関とする2つのグループが採択されたことを発表した。
本記事では、それぞれの事業内容や背景、各企業の役割についてまとめている。
目次
RESTEC、宇宙戦略基金に2つの事業で採択
今回RESTECが採択されたのは、いずれもJAXAの宇宙戦略基金(第二期)における「衛星データ利用システム実装加速化事業」に位置づけられる事業だ。
1件目は、品質・特性が様々な衛星データを利用できるよう、衛星データを⼀元的に評価することが可能となる評価手法の開発を目的としたものである。RESTEC、株式会社パスコ、株式会社New Space Intelligence、株式会社アクセルスペース、株式会社Synspectiveの5者が「国産小型衛星の利用を加速する評価・校正・検証・補正手法の環境整備」に取り組む。
2件目は、国内外の官需・民需や社会課題等に対応し、社会実装を目的とした衛星データ利用システムの開発・実証と事業化実証を進めるものだ。RESTECとエアロトヨタ株式会社が「行政等の業務効率化を加速する高空間分解能地理空間基盤モデルの開発」に取り組む。
採択された2件はいずれもRESTECが代表機関を務めており、今回の採択からは、同団体が衛星データの品質を支える環境整備と、実際の利用拡大を見据えた開発・実証の両面で役割を担っていることがうかがえる。
事業1:衛星データの品質を向上させる環境整備
1件目の採択案件では、国産小型衛星データの利用拡大に向けた環境整備が進められる。

課題は小型衛星データの「ばらつき」
近年、小型衛星の開発・運用は急速に進んでいるが、その一方で、衛星ごとの機体差や経年変化により、取得されるデータの品質や精度にばらつきが生じるという課題がある。
例えば、画像の位置ずれやブレの度合い、明るさ等に差があると、同じ対象を捉えたデータであっても、衛星ごとに見え方や解析結果がそろいにくくなる場合がある。
こうしたばらつきは、複数の衛星データを組み合わせて活用する際の障壁となり、データ利用の拡大を制約する要因となってきた。
評価・校正・検証・補正の手法を整備
本事業では、上記の課題に対応するため、衛星データの品質向上に向けた手法を体系的に整備する。

具体的な開発技術としては、以下の3つが挙げられる。
- 国産小型衛星に最適化した衛星データの一元的評価手法
- 複数の衛星データを複合利用するための校正・検証および衛星データ補正手法
- 大型衛星の手法を応用した精度向上のための校正・検証および衛星データ補正手法
さらに、これらの成果を衛星データ利用者や事業者が実際に活用できるよう、解説書の整備や利用環境の構築も進められる予定だ。
各企業の役割
本事業では、各社がそれぞれの専門領域を分担する形で参画する。
- RESTEC:研究代表機関として全体統括および評価・校正・検証・補正手法の開発と利用環境整備
- パスコ:評価・校正・検証・補正手法(幾何)の開発と利用環境整備
- New Space Intelligence:光学センサの評価・校正・検証・補正手法(画質)の開発
- アクセルスペース:光学センサの校正・検証手法の開発
- Synspective:SARセンサの校正・検証手法の開発
5社は、本技術開発を通じて、国産小型衛星データの国際競争力強化と利用市場拡大に貢献し、さらに、宇宙を活用した地球規模の社会課題の解決に寄与していく方針だ。

事業2:衛星データの活用を広げる社会実装
2件目の採択案件では、衛星データを実際の業務で活用しやすくするための仕組みづくりが進められる。

地理空間変化を自動で捉える仕組みづくりと実用化
近年、衛星データを社会課題の解決に活用する動きが広がる一方で、その特性を踏まえた効率的な解析の重要性が高まっている。とりわけ、人手による画像の読み取りには時間や人員の面で限界があり、AIを活用した自動解析の高度化が求められている。
そこで、本事業では、高空間分解能の衛星データの特徴を学習したAIを活用し、地理空間情報を自動で読み取る仕組みの開発が進められる。広い範囲の変化や、時間の経過に伴う変化を捉えることを目指す点が特徴だ。

さらに、地方自治体や関連分野のニーズに基づく実証を通じて、固定資産業務をはじめとする各種業務の効率化や、社会課題の解決につながるサービスの事業化も検討される。
こうした取り組みにより、従来よりも短期間かつ低コストで、高精度に衛星データを活用できる仕組みの実現を目指す。
各企業の役割
本事業において、RESTECおよびエアロトヨタはそれぞれ以下の業務を担当する。
- RESTEC:本事業の研究代表機関として全体統括ならびに、高空間分解能地理空間基盤モデルの開発および本モデルを活用した国内外の機関における衛星データの社会実装に向けた実証
- エアロトヨタ:高空間分解能地理空間基盤モデルを活用した自治体の固定資産税向けサービスの実証・開発
RESTECは本事業を通じて、行政が抱える地域課題に対し、衛星データを活用したより効果的かつ効率的な対応を後押しする考えだ。あわせて、2030年代早期に衛星データ利用の幅を広げ、宇宙産業の発展とリモートセンシング技術の社会実装を一層推進していくとしている。
衛星データ活用を支えるRESTECの技術
衛星データの活用を広げるには、データを取得するだけでは不十分だ。データの品質や精度をそろえて使いやすい状態を整えることに加え、それを実際の業務やサービスに結びつける仕組みも必要になる。
RESTECはこれまでも、衛星データの提供や利用支援、解析サービスなどを通じて、衛星データを「どう使うか」に向き合ってきた。今回の採択は、そうした取り組みが、データの品質向上と実利用の両面に関わる形で示されたものといえそうだ。RESTECは衛星データ活用を支える重要なプレイヤーとして存在感を示している。
さいごに
JAXAの宇宙戦略基金では、2030年代早期までに、国内の民間企業などによる主要な通信・衛星データ利用サービスについて、国内外で新たに30件以上の社会実装を実現することを目指している。
衛星データ利用は、宇宙産業において継続的な収益につながりうる重要な領域の一つだ。今後、市場の拡大と国際競争力の強化を進めるうえでも、データを実際のサービスや業務に結びつける取り組みの重要性はさらに高まっていくとみられる。
今回の事業を通じて、RESTECがこうした動きをどのように支えていくのか、今後の展開に注目したい。
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参考
宇宙戦略基金(第二期)「衛星データ利用システム実装加速化事業」の採択について(2026-03-31閲覧)
エアロトヨタとRESTEC、宇宙戦略基金(第二期)「衛星データ利用システム実装加速化事業」に採択(2026-03-31閲覧)








