誰でも宇宙・成層圏旅行に行ける時代!?主要企業4社の最新動向に注目

近年、民間人の宇宙旅行に関連するニュースが相次いでいる。

スペースX(SpaceX)による世界初の民間人による宇宙遊泳や、ブルーオリジン(Blue Origin)の民間有人ミッション、ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)の次世代機開発、そして株式会社岩谷技研の成層圏フライト事業開始など、各社の動向が市場の注目を集めている。

本記事では、民間宇宙旅行の歴史を振り返るとともに、宇宙・成層圏旅行の多様化を牽引する最新のサービス動向を整理。2025年注目の4社を取り上げ、それぞれの宇宙または成層圏旅行の特徴や商業展開の現状についてご紹介する。

民間宇宙旅行の始まり

宇宙飛行士ではない民間人が世界で初めて宇宙へ旅立ったのは、2001年5月。アメリカのデニス・チトー氏がロシアのソユーズ宇宙船に搭乗し、高度約400㎞に位置する国際宇宙ステーション(ISS)へと向かった。

チトー氏はISSに7日間滞在し、プロの宇宙飛行士とともに宇宙での生活を体験。

この前例のない旅を可能にしたのが、アメリカの宇宙旅行会社 スペースアドベンチャーズ (Space Adventures)である。

スペースアドベンチャーズの宇宙旅行では、ロシアのソユーズ宇宙船を活用してプロの宇宙飛行士とともにISSへと向かう。ISSでの滞在期間は1~2週間ほど。現在までに9回の民間宇宙飛行を実施してきた。

顧客は費用を支払い、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センターで必要な訓練を受けることで宇宙に行くことが可能。ZOZOTOWNの創業者である前澤 友作 氏も同社を通してISSへと向かい、2021年に14日間の宇宙滞在を果たした。

費用は様々な要因に応じて変動するとされているが、デニス・チトー氏(7日間滞在)は当時のレートで約24億円(約2,000万ドル)ほど、2009年10月に旅行したギー・ラルベルテ氏(11日間滞在)の飛行では、約31億円(約3,500万ドル)とされている。

自社開発で広がる宇宙旅行の多様性

スペースアドベンチャーズはロシアの宇宙機関と連携した宇宙旅行を提供しており、ロケットもロシアの基幹ロケットを活用するものである。

しかし近年は宇宙産業の拡大に伴い、宇宙旅行をゼロから自社開発する企業が増加している。

宇宙市場の拡大と宇宙旅行の多様化

かつて、宇宙開発は国家機関が主導する領域であったが、冷戦以降は技術の民間開放や委託等により、徐々に民間企業の参入が進んできた。

ロケットの開発、人工衛星データの活用、通信インフラの宇宙移行など、宇宙産業はもはや一部の国家が抱えるプロジェクトではなく、商業領域として拡大する成長産業である。

そして、こうした動きを背景に、宇宙旅行ビジネスも拡大。ある調査では、2021年における世界の宇宙旅行市場規模は約350億円とされ、2025年には約1,000億円、2026年には約1,200億円になると推計されている。

つまり、宇宙旅行は夢やロマンだけではなく、実用的で成長性の高いビジネスとなっているのだ。

近年では宇宙船を自ら設計・開発する企業が次々と登場し、目的地、飛行方式、搭乗体験、価格帯など、サービスのかたちはますます多様化。今や「どこ」に行くかを自分で選べる時代が到来しつつある。

成層圏から深宇宙まで!タイプ別に見る旅行の特徴

現在、民間で実現されている(あるいは計画されている)旅行スタイルは、大きく分けて以下の4つ。

宇宙・成層圏旅行の種類
宇宙・成層圏旅行の種類 ©Space Connect株式会社

それぞれの旅行タイプには、飛行高度や無重力体験の有無、必要な訓練、費用感などに違いがあり、目的に応じた選択が可能である。

では、こうした多様な旅行スタイルを提供する企業にはどのようなプレイヤーがいるのだろうか。次章では、2025年に注目すべき宇宙・成層圏旅行企業4社をご紹介する。

2025年注目の宇宙・成層圏旅行企業4社

2025年注目の宇宙旅行企業4社
2025年注目の宇宙旅行企業4社 ©Space Connect株式会社

スペースX

宇宙旅行ビジネスにおける圧倒的な存在感を放っているのが、イーロン・マスク氏が率いるスペースXである。

同社は主にオービタル旅行を提供しており、NASAのミッションにも使用されている自社開発のクルードラゴン(Crew Dragon)宇宙船を使用。高度300㎞~500㎞の軌道の周回やISSとのドッキングを行い、3日~1週間ほど宇宙に滞在する。

帰還時は大気圏再突入後にパラシュートで降下し、海上に着水する方式だ。

同社はすでに6回の民間オービタル旅行を成功させており、その実績としては以下のようなものがある。

  • 2021年9月「Inspiration4」:世界初の民間人だけのオービタル宇宙旅行。宇宙に3日間ほど滞在。
  • 2023年5月「AX-2」:元宇宙飛行士と3人の民間人が打ち上げられ、ISSに10日間ほど滞在。アメリカの宇宙ベンチャーであるアクシオムスペース(Axiom Space)が旅行を手配。
  • 2024年9月「Polaris Dawn」:有人ミッション史上最高高度となる1,408.1㎞の地球周回軌道に到達。約5日間ほど飛行し、世界初の民間人による宇宙遊泳に成功。

また、2025年4月5日に地球に帰還した「FRAM2」ミッションは、90°の傾斜角を持つ極軌道に投入された初の有人ミッションであった。

4日間ほど地球を周回し、宇宙初のX線撮影やキノコの栽培など、様々な実験・研究を宇宙船内で実施。クルー全員が初めての宇宙旅行ながら、医療支援や運動支援なしに地上に戻ることができたという。

さらに同社は、オービタル旅行のほかにも、開発中のスターシップ(Starship)宇宙船による月の周回や火星への旅を行う宇宙旅行も計画している。

宇宙船
©SpaceX

ブルーオリジン

Amazon創業者ジェフ・ベゾスが設立したブルーオリジンは、サブオービタル型の宇宙体験を提供している。

同社の「ニューシェパード(New Shepard)」は完全自立走行型のロケットで、垂直方向に打ち上げられて高度100km超まで上昇し、無重力空間を数分間体験することが可能。その後、エンジン部分と宇宙船は途中で分離し、エンジンは逆噴射により垂直に着陸、宇宙船はパラシュートで地上に戻る。

2021年7月に実施された同社初の有人ミッション「NS-16」では民間企業世界初の有人宇宙飛行を達成。ベゾス氏とその弟を含む4人が搭乗し、当時の宇宙飛行者の最年長(82歳)・最年少(18歳)を更新した。

ニューシェパードは有人ミッションだけでなくペイロードミッションも実施しており、合計するとこれまでに30回の打ち上げを行っている。

このうち有人ミッションが行われたのは10回で、2025年2月に実施された10回目の有人ミッション「NS-30」では科学者や医師、冒険家、起業家など世界中から6名が集まり、このうち1人は2回目の飛行だったという。

11回目の有人打ち上げミッション「NS-31」は2025年4月14日に予定されており、歌手のケイティ・ペリー氏のほか、ベゾス氏の婚約者など、計6名の民間女性が搭乗する予定だ。

宇宙船
©Blue Origin

ヴァージン・ギャラクティック

リチャード・ブランソン氏が設立したヴァージン・ギャラクティックは、航空機スタイルのサブオービタル宇宙飛行を提供する企業である。

同社のスペースプレーン「VSS Unity」は、母機によって高度約15kmまで運ばれて、空中で切り離された後にロケットエンジンを点火。

高度約80〜90kmまで上昇し、数分間の無重力体験を行うことができる。(※国際的には高度100km以上が宇宙と定義されているが、米空軍は高度80km以上と定義している)

2023年6月に初の商業飛行を実施し、これまでに7回ミッションに成功。

そして、2024年6月以降は次世代機「Delta」の開発に注力するため運行を一時停止中となっている。

2024年11月には新型機と母機の生産を加速するため、約431億円(3億ドル)の資金調達を目指していることが報じられた。同社幹部によると、「『Delta』の最初の2機の作業は計画通りに進んでいるが、資金調達により継続機や母機の開発をさらに加速させる」という。

次世代機による商業運用再開は2026年の予定。チケット価格は平均約8,740万円(60万ドル)となる見込みだ。

スペースプレーン
©Virgin Galactic

岩谷技研

北海道に本社を構える株式会社岩谷技研は、高高度ガス気球によって高度18~25㎞の成層圏を旅する「宇宙遊覧フライト」の提供を目指す企業。

「宇宙遊覧フライト」では無重力は体験できないものの、約1時間にわたり飛行し、眼下に広がる青い地球と上空の宇宙空間を船内から楽しむことができる。

特別な訓練や宇宙服などの特殊な装備を必要とせず、誰もが気軽かつ安全に宇宙を体験できることに加え、価格面でも競争力があり、将来的には100万円でのサービス提供を計画している。

2024年7月17日には、商業運航で使用する機体と同型の与圧キャビンを使用して有人飛行試験を実施。国内で初めて、気球による有人飛行で過去最高となる最大到達高度20,816mの成層圏に到達した。

2025年1月には航空運送事業による知見やアセットを持つ日本航空株式会社(JAL)との協業を開始するなど、宇宙遊覧体験の事業化に向けて取り組みを加速。

世界初となる気球による成層圏旅行「宇宙遊覧フライト」の運航は、2025年6月以降の予定だ。

岩谷技研 気球
©株式会社岩谷技研

さいごに

いかがでしたか。

宇宙旅行はかつてSFの世界のような話であったが、今や現実のものとなりつつある。技術と民間ビジネスの進化により、目的地や体験内容、予算に応じた多様な選択肢が広がっている。

これからの数年で、私たちが「宇宙へ行く」という言葉の意味は、ますます身近なものになるかもしれない。

また、株式会社岩谷技研は現在、複数のポジションで人材を募集している。

同社の仕事に興味のある方は、ぜひこちらをご覧いただきたい。

スぺジョブ

参考

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