2023年4月12日、月面開発事業を行う宇宙ベンチャー企業『ispace』が東京証券取引所グロース市場に上場(証券コード : 9348)し、話題を集めた。
この株式上場は、宇宙ベンチャー史上初となる快挙である。
現在、引っ張りだこのispaceだが、どのような事業を営んでいるのか、具体的なビジネスモデルについては知らないという方も多いのではないだろうか。
そこで本記事では、同社が行う月ビジネスの収益構造に焦点を当て、ispaceの可能性について解説する。
是非、投資材料の1つとして本記事を活用していただければと思う。
目次
ispaceについて
まず、ispaceについて簡単に紹介する。
ispaceは『人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界を目指す』宇宙スタートアップ企業。
月に存在するとされる水資源を活用し、月面開発を行うことで、以下のような目標を実現しようとしている。- 人類の月面移住
- 宇宙事業の拠点とし、地球での生活をより豊かで持続的なものにする
- 深宇宙探査を発展させ、新たな資源等を獲得する
これらの目標を達成するための第一歩として、2022年12月には、営利企業として初めて月面着陸船の打ち上げに成功。
そして、これから行われる月着陸に成功すれば、民間企業で世界初の快挙となる。
ispaceのビジネスモデル
では、同社は、収益を上げるためのビジネスモデルをどのように組んでいるのだろうか。
基本的に同社の提供する月ビジネスは、月面探査車と月面着陸船の開発を軸に進められている。
これらによって提供されるサービスは、大きく分けると以下の3つである。
- 輸送サービス
- データサービス
- パートナーシップサービス
輸送サービスでは、月面ロボットなどの物資をispaceの着陸船に搭載し、月を周回する軌道または月面まで輸送。
月での実験や月面探査を行うための物資を運びたい顧客が主なターゲットである。
データサービスでは、ispaceの月面探査車が収集した月におけるデータを顧客に提供。
このようなサービスに需要があるのか認知できていないかもしれないが、NASAをはじめ、各国の宇宙機関の予算は年々増加しており、月面探査や資源活用に係る予算もすでに組み込み済み。
IT産業の軌跡から、市場規模が大きくなるほど、データサービスの需要も高まってくると言えるだろう。
その他にも、月面着陸船や探査車にスポンサーとして顧客のロゴを掲載し、マーケティング支援をするなどのパートナーシップサービスも実施。
パートナーとは、技術面や事業開発面でispaceと連携することも多く、同社を主軸にオープンイノベーションの潮流が広がっている。
現在、3つのサービス全てにおいて既に契約を締結済み。
ispaceに対する投資検討材料
それでは上記のビジネスモデルを踏まえて、ispaceの投資検討材料を深掘っていく。
将来性
リーディングカンパニーとしての素質
まずは競合分析。
ispace同様の競合企業はちらほら点在してはいるものの、同社と同等の技術力を有した企業は世界でまだ見受けられていない。
要するに、業界のリーディングカンパニーとしての素養があるということだ。
宇宙産業において、ロケットや衛星開発など各セクションを牽引する企業はすでに世界中で大方出揃ってきている。
そんな中、月面開発セクションにおいては、日本のispaceが間違いなく、世界で頭角を表している。
市場規模
月輸送関連の市場規模だが、2036年-2040年には約1710米ドル(年平均値)に達すると見込まれている。
その中でも同社が所属するセグメントでは同期間で533億米ドル(年平均値)へと成長。
今後の成長が見込まれる月面開発市場において、首位ランカーの地位を確立しているispaceは、一攫千金を狙う投資家ならびにビジネスマンであれば同行を注視すべきであろう。
リスク対策
斬新な事業モデル
まず、宇宙開発において最も課題になるのは、資金の確保である。
数週間前にイギリスのVirgin Orbit社がロケットの打上げ失敗に伴い、破産申告をしたように、宇宙開発において、資金確保の問題は会社の明暗を分ける【ヴァージンオービット事業停止:同様の事業を行う企業の将来性とは】。
ispaceでは、資金確保の問題を解決するべく、下記のような斬新な事業モデルを採用。
旧来型の事業開発モデルとは異なり、複数のミッションと開発を同時に進めながら、リアルタイムで開発の改善を繰り返すことで、ミッション失敗時の財務リスクを軽減している。
強固な外部パートナー
ispaceは、ミッションの成功確率を少しでも高めるために外部パートナーとの協力関係も強固である。
設計、開発、試験までの各行程に、この業界に属するなら誰でも知っている外部有識者が審査。
その審査をクリアした後には、輸送ロケットとして、打上げ成功率98%を誇るSpaceXが月面着陸船を輸送。
鬼門になる着陸システムに関しては、アポロ計画で6度の月面着陸を成功させた非営利研究開発組織であるDraper社と独占契約を締結しており、着陸技術での信頼も厚い。
輸送サービス事業の需要可否についても、すでにNASAやJAXAなど政府の宇宙機関に加えて、イスラエルや台湾なども含めた世界中の民間企業を開拓、契約を締結している。
不確定要素
ここまで、非常に前向きな話をしてきたが、当然、宇宙産業ならではのリスクも存在する。
例えば、市場の成熟度の相違、ミッションの未達、開発遅延、顧客の未確定、資金調達難等だ。
この辺りのリスクに関しては、民間で月面市場を切り開いてきた前例がないからこその不確定要素であり、同社も善処はしているものの、適切な対応ができる保証はどこにもない。
それでも世界有数のスペシャリスト達が多大なる時間と労力を費やして、人類の新たなフロンティアを切り開いている集団。
それがispaceなのであろう。
さいごに
いかがでしたか。
ispaceが目指す月面開発技術は、革新的なものであり、世界中で今後ますます注目を集めることは間違いないだろう。
イノベーティブな企業が見受けられない昨今の日本市場において、ispaceは日本の未来を背負ったテンバガー企業であると言えるだろう。
同社の初めての月面着陸は、早ければ1週間後の2023年4月26日に行われる予定だ。
これは同社にとってゴールではなく、スタートだ。
今回の株式上場を経て、誰でもispaceに夢を託せる時代がやってきた。
大いなる夢とリスクが混沌する月面開発市場。
この両輪を天秤にかけた上でispaceに未来を託してもらいたいものだ。
参考: