
2026年10月9日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、東京科学大学、エネコートテクノロジーズと共同で、宇宙空間におけるペロブスカイト太陽電池から衛星本体への給電実証に世界で初めて成功したと発表した。
本記事では、今回の実証内容とペロブスカイト太陽電池の特徴、今後の宇宙分野での活用可能性について解説する。
ペロブスカイト太陽電池から衛星本体への給電に世界初成功
小型衛星「OrigamiSat-2」で給電を実証
今回の実証は、宇宙空間でペロブスカイト太陽電池が発電した電力を、実際に衛星本体へ供給できるかを確認するものである。
実証に使用されたのは、東京科学大学が開発した小型衛星「OrigamiSat-2」。
同衛星は、JAXAの「革新的衛星技術実証4号機」の実証テーマの一つとして選定され、2026年4月23日にニュージーランドからRocket Labの小型ロケット「Electron」で打ち上げられた。
OrigamiSat-2には、宇宙空間で広げられる展開膜が搭載されており、その膜上にエネコートテクノロジーズが製作したフィルム型ペロブスカイト太陽電池が取り付けられている。
宇宙での発電確認から衛星バスへの給電へ
JAXAなどは2026年5月30日以降、OrigamiSat-2の展開膜に搭載されたペロブスカイト太陽電池について、発電性能を示す電流と電圧の関係を複数回測定してきた。
これらの測定により、宇宙空間でペロブスカイト太陽電池が正常に発電していることを確認している。
さらに9月11日には、ペロブスカイト太陽電池で発生した電力を、OrigamiSat-2の衛星バス※に供給することに成功。 JAXAによると、ペロブスカイト太陽電池から衛星バスへの給電実証は世界初だという。
衛星の電源や通信、姿勢制御など、基本的な機能を担う部分
今回の実証では、宇宙空間での発電性能の確認に加え、ペロブスカイト太陽電池で発生した電力を衛星本体へ供給できることが実証された。

ペロブスカイト太陽電池とは
薄く軽量で、柔軟な形状に対応できる次世代太陽電池
ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト」と呼ばれる特定の結晶構造を持つ化合物を発電層に使用して、光を電気に変換する次世代太陽電池である。
ペロブスカイト太陽電池は、薄い発電層でも光を効率よく吸収できるほか、柔軟なフィルム上に発電層を形成できるため、薄く軽量で曲げられる太陽電池を製造できる点が特徴となっている。
宇宙分野では、衛星の重量や打ち上げ時の収納スペースが重要な制約となるため、薄く軽量な太陽電池を利用できれば、衛星の軽量化や、大きな発電面を宇宙空間で展開する仕組みへの応用が期待される。
JAXAとエネコートが2022年から共同研究
今回の実証に使用されたフィルム型ペロブスカイト太陽電池は、JAXA宇宙探査イノベーションハブとエネコートテクノロジーズが研究開発を進めてきた技術だ。
エネコートテクノロジーズは、2018年に設立された京都大学発のスタートアップ企業で、ペロブスカイト太陽電池や関連材料の開発、製造、販売などを手掛けている。
両者は2022年から、JAXAの研究提案募集制度を通じて、超軽量・薄型のペロブスカイト太陽電池の宇宙応用に取り組んできた。
今回の実証は、こうした共同研究を通じて開発された技術を、実際の宇宙環境で検証する取り組みの一環である。
衛星や月面設備への応用に期待
長期運用による性能劣化を評価へ
JAXAなどは今後も、OrigamiSat-2に搭載したペロブスカイト太陽電池の発電性能の測定を継続する予定である。
特に、宇宙環境で長期間運用した場合に、発電性能がどのように変化するかを評価する予定だ。
宇宙用電源として実用化するためには、発電や給電の実現に加えて、宇宙環境下で安定した性能を維持できることが重要となる。今回の給電成功に続き、長期運用における性能の検証が次の段階となる。
展開型太陽電池や月面太陽電池タワーへの活用
JAXAは、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の将来的な用途として、人工衛星や月面太陽電池タワーなどを挙げている。
フィルム型太陽電池は、打ち上げ時には小さく収納し、宇宙空間で大きく広げられるため、限られた重量や収納スペースで大きな発電面積を確保する用途に適している。
また、エネコートテクノロジーズは、宇宙用太陽電池の実用化に向けた別の取り組みとして、JAXA宇宙戦略基金に採択された「超軽量型タンデム型ペロブスカイト太陽電池の実用化開発」を進めている。
同事業では、軽量化と発電性能の向上を両立する太陽電池を開発するとともに、月面基地での利用を想定し、支柱状に設置する設備の地上実証も計画している。
今回の衛星での給電実証に加え、より高い発電性能の実現や月面での設置方法の検証など、宇宙用電源としての実用化に向けた開発が進められているのだ。

さいごに
JAXA、東京科学大学、エネコートテクノロジーズは、小型衛星「OrigamiSat-2」に搭載したフィルム型ペロブスカイト太陽電池から、衛星バスへの給電実証に世界で初めて成功した。
今回の成果により、薄く軽量なペロブスカイト太陽電池を宇宙空間で発電させるだけでなく、実際の衛星システムへ電力を供給できることが確認された。
今後は宇宙環境での長期的な性能劣化を評価し、人工衛星の電源や月面設備などへの応用に向けて研究開発が進められる見通しである。











