
株式会社オーレオンスペースシステムズは、欧州宇宙資源イノベーションセンター(ESRIC)が主催する「Start-up Support Programme 第6期(SSP6)」に、日本企業として初めて選定された。
本記事では、ESRIC SSP6への採択をもとに、ESRICの概要や、オーレオンスペースシステムズが取り組む深宇宙輸送インフラ構想、同社が欧州圏との連携を重視する背景について整理する。
ESRICとは
ESRIC(European Space Resources Innovation Centre)は、欧州宇宙機関(ESA)、ルクセンブルク宇宙局(LSA)、ルクセンブルク科学技術研究所(LIST)が支援する、宇宙資源分野に特化したイノベーション拠点である。
宇宙資源開発は、月や小惑星などに存在する資源を探査・活用し、将来的な深宇宙探査や宇宙内輸送インフラの構築につなげることを目指す領域だ。具体的には、水資源を推進剤へ転換したり、現地資源を宇宙インフラ建設へ活用したりする構想が議論されており、近年は各国政府機関や民間企業による投資・制度整備が加速している。
その中でESRICは、単なる研究支援機関ではなく、技術開発、事業化支援、法務、投資家ネットワーク形成までを含めた、宇宙資源エコシステムの構築を推進している点が特徴である。
スタートアップ支援プログラム「Start-up Support Programme(SSP)」もその取り組みの一つであり、世界各国から宇宙資源関連スタートアップを選定し、事業成長支援や国際コミュニティとの接続支援を行っている。


オーレオンスペースシステムズはどんな会社?
株式会社オーレオンスペースシステムズは、小惑星の岩石資源を現地で推進剤として活用する「質量推進システム」の開発を進めるスタートアップ企業だ。
従来の宇宙輸送では、推進剤の大部分を地球から打ち上げる必要があり、それが輸送コストやミッション規模を制約する大きな要因となっていた。特に深宇宙探査や大質量輸送では、「何を運ぶか」以上に、「推進剤をどのように確保するか」が重要な課題となる。
これに対し、オーレオンは、小惑星上の岩石資源をその場で推進力へ変換するアーキテクチャを構想している。これは、現地資源利用(ISRU:In-Situ Resource Utilization)の考え方を応用したものであり、地球から大量の推進剤を持ち込まずに済む可能性がある。

宇宙開発では一般的に、「地上から燃料を搭載して」宇宙へ向かう構造がとられている。しかし、この仕組みはミッションの大型化や深宇宙探査を難しくする要因の一つとなっている。
そのため、近年は、OTV(Orbital Transfer Vehicle:軌道間輸送機)などの宇宙内輸送インフラや、ISRU技術の発展を背景に、「宇宙空間で資源を調達し、宇宙内で経済活動を成立させる産業」への移行が徐々に議論され始めている。
仮に現地資源を活用した推進システムが実用化されれば、深宇宙輸送のコスト構造そのものを大きく変える可能性がある。将来的には、小惑星資源輸送、宇宙空間での大型物流、宇宙インフラ建設など、これまで成立が難しかった領域への応用も期待される。
オーレオンが取り組む技術は、そうした将来的な宇宙経済圏の実現に向けた、宇宙内物流インフラの一つとして位置付けられる可能性がある。

なぜ欧州圏との連携を重視するのか
宇宙資源開発分野において、欧州、特にルクセンブルクは世界でも早い段階から制度整備と産業支援を進めてきた地域の一つである。
ルクセンブルク政府は2010年代後半から宇宙資源分野への投資を本格化させており、宇宙資源利用に関する法制度整備や、関連スタートアップへの支援を積極的に推進してきた。近年では、技術開発だけでなく、法務・金融・国際連携までを含めた宇宙資源エコシステムを形成している点が特徴だ。また欧州全体で見ても、ESAを中心に、月・小惑星資源利用を前提とした将来的な宇宙インフラ構想や、持続的な深宇宙探査に関する議論が継続的に行われている。宇宙資源分野は単独企業だけで成立する市場ではなく、政策機関、研究機関、大企業、スタートアップ、投資家が長期的に連携する構造が前提となるため、こうしたコミュニティへ早期に接続する意義は想像以上に大きい。
特に深宇宙領域では、技術優位性以上に、「どのエコシステムに属するか」「どの国・地域と連携しながらルール形成へ関与していくか」が、将来的な事業機会や国際連携に大きく影響する可能性がある。
今回の欧州コミュニティへの参画は、日本発スタートアップとしての存在感を高めるだけでなく、将来的な国際共同開発や事業連携、宇宙資源分野におけるルールメイキングへの接続を見据えた布石となる可能性が高い。
さいごに
今回のESRIC SSP6への採択について、株式会社オーレオンスペースシステムズ 代表取締役の若元淳鷹氏は、以下のように今後の展望を語っている。
宇宙資源分野では、資源取得だけでなく、輸送や売買、小惑星の取り扱いを含め、国際的なルール形成がまだ発展途上の段階にあります。だからこそ、ESAや欧州圏の法務・政策コミュニティと連携しながら進めていくことが重要だと考えています。今回のESRIC参画を通じて、技術・事業・制度の各側面で国際的なネットワークを構築しながら、宇宙資源関連技術の実現可能性を高めていきたいと考えています。
宇宙資源領域は、事業化まで長期的な視点を要する一方、将来的な市場規模や産業インパクトは極めて大きい領域だ。オーレオンスペースシステムズが、今後どのように本領域で影響力を高めていくのか注視していきたい。

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