
2026年7月21日、宇宙スタートアップの株式会社DigitalBlast(以下、DigitalBlast)は、商業宇宙ステーション「Starlab(スターラブ)」を開発する米Starlab Space LLC(以下、Starlab Space)と、Starlabの利用に関する予約契約を締結したと発表した。
本記事では、DigitalBlastが締結した契約の内容やStarlabの概要を紹介するとともに、ポストISS時代に向けた同社の狙いについて考察する。
目次
DigitalBlastがStarlabの利用枠を確保
契約の概要
DigitalBlastとStarlab Spaceは、2026年7月14日、Starlabの利用に関する予約契約を調印した。
今回の契約により、DigitalBlastは、日本やアジアの企業・研究機関に宇宙環境利用サービスを提供するため、Starlabの利用枠を事前に確保する。
また、同社が開発を進めるオンボードコンピュータを、ペイロードとしてStarlabに搭載する予定だ。
日本企業によるStarlabの利用予約契約は、2026年1月に発表された三菱商事に次いで2社目となる。商業宇宙ステーション「Starlab」とは
Starlabは、2030年の国際宇宙ステーション(ISS)運用終了後を見据えて開発が進められている商業宇宙ステーションである。
開発・運営を担うStarlab Spaceには、米Voyager Technologiesや欧州のAirbus、三菱商事、カナダのMDA Spaceなどが参画している。
Starlabは、NASAが支援する商業宇宙ステーション計画の一つで、政府機関や研究機関に加え、民間企業による研究開発、製造、技術実証などの需要の取り込みを想定。
これまで、人工網膜を開発する米LambdaVisionなどのさまざまな企業がStarlabの利用予約契約を締結している。


DigitalBlastがStarlabを利用する目的
DigitalBlastがStarlabの利用枠を確保した狙いは、大きく二つに整理できる。
一つは、日本やアジアの企業・研究機関に対して、ポストISS時代の宇宙環境利用サービスを提供するための場所を確保することである。
もう一つは、自社が開発するオンボードコンピュータをStarlabに搭載し、軌道上データセンターに必要な技術を商業宇宙ステーション上で実装することである。
1. 企業・研究機関の宇宙環境利用を一体的に支援
日本はこれまで、ISSの「きぼう」日本実験棟を中心に、微小重力環境を活用した研究開発や技術実証を行ってきた。
ISS運用終了後の「ポストISS」時代にこうした活動を継続するには、企業や研究機関が商業宇宙ステーションを利用できる枠に加え、実際の利用に必要な工程を支援する事業者が求められる。
宇宙ステーションで研究開発や実験を行うには、利用計画の策定や装置の開発、打ち上げ、軌道上での実験など、複数の工程が必要となる。
DigitalBlastは、これらを一体的に支援する「ユーザーインテグレーション」を担い、日本やアジアの企業・研究機関がStarlabを利用する際の窓口となることを目指している。
同社はこれまで、宇宙環境におけるライフサイエンス分野のR&Dを支援する装置開発やプラットフォームサービスの提供に取り組んできた。
今回Starlabの利用枠を確保したことで、同社は、これまで培ってきた技術や知見を活用し、企業や研究機関による宇宙環境利用を一体的に支援するための受け皿づくりを進める。
2. 軌道上データセンターの中核技術を実装
DigitalBlastがStarlabへの搭載を予定しているオンボードコンピュータは、軌道上データセンターの中核となるデータ処理装置である。
DigitalBlastは、JAXA宇宙戦略基金の技術開発テーマ「軌道上データセンター構築技術」に基づき、オンボードコンピュータの開発を進めている。同テーマでは、関連会社の株式会社SpaceBlastが代表機関を務める。
軌道上データセンターが求められる背景には、宇宙空間で生成されるデータ量の大幅な増加がある。
今後、地球低軌道利用サービスの拡大や、大規模な地球観測衛星コンステレーションの出現により、軌道上で生成されるデータは大幅に増えると予想されている。
現在は、取得したデータは地上へ送信し、地上のコンピュータで処理する方法が一般的である。しかし、この方法では通信インフラや技術上の制約がある。通信回線への負担が大きくなるほか、必要な情報を利用できるまでに時間がかかる可能性がある。
そこで、宇宙空間でデータを処理し、その結果を地上へ送信する軌道上データセンターの構築が求められている。軌道上でデータを選別・処理することで、地上へ送るデータ量を抑え、必要な情報を迅速かつ効率的に利用できる。
こうした背景から、JAXA宇宙戦略基金の同テーマでは、商業宇宙ステーション内に設置可能な軌道上データセンターの技術を開発・実証することを目標としている。
今回、DigitalBlastがStarlabへの搭載を予定しているオンボードコンピュータは、その構想を実現するための具体的な技術の一つである。Starlabへの搭載は、商業宇宙ステーションでの利用を想定して開発してきた技術を、実際の軌道上拠点へ実装する取り組みと位置付けられる。
さいごに
ISSの運用終了後、地球低軌道の利用は、政府主導の枠組みから民間の商業宇宙ステーションを活用する形へ移行していく。
そのなかでDigitalBlastは、Starlabの利用枠を確保することで、日本やアジアの企業・研究機関による宇宙環境利用を支える立場を目指すとともに、商業宇宙ステーション向けに開発してきた技術を軌道上で実装する機会を得た。
今回の契約は、ポストISS時代に向け、宇宙環境利用の支援と軌道上データ処理の両面で事業基盤を築く動きといえる。
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