
2026年8月28日、NTTドコモ、NTTデータ、Synspectiveは、「災害時における衛星画像活用に関する協定」を締結した。災害発生時に光学衛星画像とSAR衛星画像を組み合わせて被災状況を把握し、通信サービスの早期復旧につなげる。
本記事では、今回の協定の概要に加え、3社の役割や、光学衛星とSAR衛星を組み合わせて活用する狙い、今後の展望について紹介する。
NTTドコモ・NTTデータ・Synspectiveの協定
今回NTTドコモ、NTTデータ、Synspectiveが締結した「災害時における衛星画像活用に関する協定」は、大規模災害が発生した際に、人工衛星から取得した画像を活用して被災地の状況を迅速かつ広範囲に把握し、通信設備の復旧に役立てることを目的としている。
地震や風水害によって通信設備や伝送路が被害を受けた場合、通信サービスを早期に復旧するためには、基地局などの被災状況に加え、現地までの道路状況を把握する必要がある。
しかし、道路の寸断や浸水などが発生すると、現地への立ち入りが難しく、被災状況の全容把握に時間を要する場合がある。
こうした課題に対応するため、3社は光学衛星画像とSAR衛星画像を活用し、現地から得られる情報だけでは把握しにくい広域の被災状況や道路状況を確認できる体制を整える。

光学衛星とSAR衛星を組み合わせて状況を把握
今回の取り組みの特徴の一つが、異なる特性を持つ光学衛星とSAR衛星を補完的に活用する点である。
NTTデータが光学衛星画像を提供
光学衛星は、地表から反射される太陽光などをセンサーで捉えることで、地上の様子を画像として取得する。
人の目で見た状態に近い画像を取得できるため、浸水や土砂崩れなどの被災状況や、道路の通行可否を視覚的に確認しやすいという特徴がある。
NTTデータは20年以上にわたり、地球観測衛星データを活用したサービスの開発・提供に取り組んできた。全世界デジタル3D地図「AW3D」などを展開するほか、衛星やドローンを活用した災害状況把握や、水害時の住家被害調査技術の実証なども進めている。
今回の協定では、こうした知見を生かし、光学衛星画像を活用した災害対応の高度化を担う。
さらに今後は、NTTデータのグループ会社であるMarble Visionsが計画する光学衛星の打ち上げによって撮影機会が拡大することも見据え、災害時の被災状況をより迅速かつ継続的に把握することを目指している。
SynspectiveがSAR衛星画像を提供
一方、Synspectiveは、自社で開発・運用する小型SAR衛星を活用し、SAR衛星画像を提供する。
SARは、衛星から地表へマイクロ波を照射し、その反射波を捉えることで地表の状態を観測する方式である。太陽光を必要としないため夜間でも観測できるほか、雲や雨の影響を受けにくく、悪天候時でも地表の状況を把握できる。
災害時には、台風や豪雨などによって雲が広がり、光学衛星では地表を確認できない場合がある。SAR衛星を組み合わせることで、こうした条件下でも観測機会を確保しやすくなる。
Synspectiveはこれまでも、地震や洪水、土砂災害などの発生時に、衛星画像や解析データをNTTドコモへ提供してきた。今回の協定では、こうした取り組みを3社の連携体制として整備し、実際の災害対応の中で活用方法を検証していく。

NTTドコモが通信サービスの復旧判断に活用
SynspectiveとNTTデータが提供するそれぞれの衛星画像は、NTTドコモが基地局など通信設備の被災状況や公共機関が発信する各種情報と組み合わせ、通信サービスの復旧判断に活用する。
例えば、被災地域の道路状況を衛星画像から確認することで復旧ルートを検討するほか、復旧の優先順位や復旧要員・機材の配置を判断する際に活用する。
現地へ立ち入ることが難しい段階でも衛星から被災状況を把握できれば、より早い段階から復旧計画を立てられる可能性がある。
将来はAI解析や災害前のリスク分析にも活用
3社は今後、光学衛星画像とSAR衛星画像それぞれの特徴を生かしながら、実際の災害での活用実績を蓄積し、衛星データの実用性向上に向けた共同検討を進める。
将来的には、衛星データとAIによる画像解析技術を組み合わせることで、被害状況や復旧ルートを確認するだけでなく、復旧活動の優先順位付けや意思決定の支援まで高度化する構想だ。
さらに、衛星データを災害発生後だけでなく、発災前の被災想定やリスク分析にも活用することを視野に入れている。
これにより、災害が発生してから状況を把握するだけでなく、あらかじめ被害が発生しやすい地域や通信インフラへの影響を分析し、発災前から復旧計画や対策を検討するなど、衛星データの活用範囲が広がる可能性がある。
さいごに
今回の協定では、NTTデータが提供する光学衛星画像とSynspectiveのSAR衛星画像を組み合わせ、NTTドコモの通信サービス復旧に活用する体制が構築される。
光学衛星は被災状況を視覚的に把握しやすい一方、SAR衛星は夜間や悪天候でも観測できる。それぞれの特徴を組み合わせることで、災害時でも継続的に地上の状況を把握できる可能性が高まる。
今回の3社の取り組みは、衛星データを通信インフラの復旧という実際の業務に組み込み、その有効性や運用方法を実災害の中で検証していく事例として注目される。
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