
2026年8月20日、ハイブリッドロケットエンジンを開発するLetaraは、プレシリーズAラウンドで約26億円を調達したと発表した。
Letaraはこれまで、人工衛星などの宇宙機に搭載するハイブリッド化学推進システムを中心に開発してきた。一方、近年は技術の適用範囲を広げ、人工衛星を宇宙へ運ぶ打ち上げロケット向けエンジンの開発も進めている。
本記事では、今回の資金調達の概要に加え、Letaraが開発するハイブリッド推進技術と、衛星用推進機から打ち上げロケットへ広がる事業の現在地について紹介する。
Letara、プレシリーズAで約26億円を調達
3社が共同リード投資家として参画
Letaraは今回、第三者割当増資などにより、プレシリーズAラウンドで約26億円を調達した。
共同リード投資家として、Headline Asia、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、Incubate Fundの3社が参画。
このほか、あおぞら企業投資、SMBCベンチャーキャピタル、NES、ごうぎんキャピタル、豊田合成、BIG Impact、Frontier Innovations、三井住友海上キャピタル、三菱UFJキャピタル、mintが戦略投資家として参加している。
低コストロケットエンジンの開発を加速
Letaraは今回の資金調達を通じ、低コストで量産可能な次世代ロケットエンジンの開発を加速する方針だ。
近年、宇宙輸送では、打ち上げコストの低減や高頻度化に向けた取り組みが世界的に進んでおり、その実現には、ロケットそのものを短期間かつ低コストで製造できる体制が欠かせない。
なかでもエンジンは、ロケットの性能を左右する中核部品であり、設計や製造、試験に高度な技術と時間を要するため、エンジンの低コスト化や量産性の向上は、ロケット全体の製造コスト削減や打ち上げ頻度の向上につながる重要な要素となる。
Letaraは今回調達した資金を活用し、低コストかつ量産に適したハイブリッドロケットエンジンの開発を加速する。人工衛星の打ち上げや軌道上での利用に加え、防衛・安全保障分野まで幅広い用途への展開を進める方針だ。

Letaraが開発するエンジンの特徴
プラスチックなどを燃料に使うハイブリッドエンジン
Letaraが開発しているのは、「ハイブリッドエンジン」と呼ばれる方式のロケットエンジンである。
| エンジン方式 | 燃料と酸化剤 | 着火方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 固体ロケットエンジン | 燃料と酸化剤をあらかじめ混ぜ合わせ、固体の推進剤として成形 | 点火装置で固体推進剤に着火 | 構造がシンプルで部品点数が少ない。 保管しやすく、大きな推力を得やすい | 一度着火すると停止や推力調整が難しい |
| 液体ロケットエンジン | 液体の燃料と液体の酸化剤を別々のタンクに保管 | 燃料と酸化剤を燃焼室へ送り込み、点火装置などで着火 | 推力調整や停止・再着火がしやすく、高い性能を得やすい | タンクや配管、ポンプなどが必要で構造が複雑。 製造・運用コストが高くなりやすい |
| ハイブリッドエンジン | 固体燃料と液体または気体の酸化剤を別々に保管 | 酸化剤を固体燃料へ送り込み、点火装置で着火 | 酸化剤の供給によって推力調整や停止がしやすい。 設計によっては再着火も可能 | 固体燃料の燃焼速度を高めにくく、大きな推力を得ることが難しい |
ハイブリッドエンジンは、固体燃料と、液体または気体の酸化剤を組み合わせ、燃焼によって推進力を生み出す方式だ。
Letaraのエンジンでは、燃料と酸化剤を別々に保管する構造を採用しており、使用する推進剤は火薬類に該当しない。これにより、高い安全性とシンプルな構造を両立できる。
また、固体燃料には、調達しやすいプラスチックなどを使用。燃料を3Dプリントで製造できることなどから、開発・製造の迅速化や低コスト化、量産化にもつなげやすい。
一方、ハイブリッドエンジン自体は以前から国内外で研究されてきた技術であるものの、燃料への安定した着火や、従来の液体・固体ロケットエンジンに匹敵する推力を実現することが課題となってきた。
北海道大学発のCAMUI技術を活用
こうした課題に対し、Letaraが中核技術として活用しているのが、北海道大学で長年研究されてきた「CAMUI」ロケットエンジン技術である。
一般的なハイブリッドエンジンでは、固体燃料の表面に酸化剤を流して燃焼させるため、一度に燃焼できる燃料の量が限られる。このため、短時間に大量の燃料を燃やして大きな推力を得ることが難しい。
一方、CAMUIでは、燃料セグメントと酸化剤が通る経路を組み合わせた独自の内部構造を採用し、燃焼面積を確保している。これにより、一般的な単孔型のハイブリッドエンジンと比べて、安定した推力を維持しやすくしている。
Letaraは、このCAMUI技術に独自の燃料設計・製造技術や点火システムなどを組み合わせ、高い推力と安定した燃焼の両立を目指している。
また、エンジンのサイズを変更しやすいことも特徴で、キューブサットや大型衛星、OTV(軌道間輸送機)といった宇宙機から、地上から打ち上げるロケットまで幅広い用途への展開を進めている。

衛星用推進からロケットへ事業を拡大
当初は衛星などの「宇宙機用推進機」が中心
Letaraは2020年、北海道大学で研究されてきたハイブリッドロケット技術の社会実装を目指して設立された。
これまで主力として開発してきたのが、人工衛星などの宇宙機に搭載し、宇宙空間で軌道変更などを行うためのハイブリッド化学推進システムである。
人工衛星はロケットによって宇宙へ運ばれた後も、目的とする軌道への移動や軌道修正、衝突回避などのために自ら移動する場合がある。特に、複数の衛星を一度に打ち上げるライドシェアでは、ロケットから分離された後に、それぞれの衛星や輸送機が目的の軌道まで移動する必要がある可能性がある。
Letaraは、こうした宇宙空間での移動にハイブリッド推進技術を活用することを目指してきた。
2025年6月には、NEDOの「ディープテック・スタートアップ支援事業」のPCAフェーズに採択。最大約10億円の助成を受け、小型宇宙機向けハイブリッド推進システムの開発を進めている。キューブサットから小型衛星を対象に宇宙実証を行い、将来的には大型衛星向けにもシステムを拡大する計画だ。
2025年から打ち上げロケット向けエンジンにも進出
一方、Letaraは近年、ハイブリッド推進技術の用途を、宇宙空間で使用する推進機だけでなく、人工衛星を地上から宇宙へ運ぶ打ち上げロケットにも広げている。
その具体的な取り組みの一つが、2025年4月に発表された、将来宇宙輸送システム(ISC)との打ち上げロケット向け大型ハイブリッドロケットエンジン共同開発である。
本共同開発では、Letaraがこれまで培ってきた高推力ハイブリッドエンジンの設計・製造技術を提供。一方、ISCはロケット全体の設計や飛行システムの開発、実際の飛行による実証機会などを担う。
ISCとの共同試験で5,000Nの推力を確認
ISCとの共同開発では、すでに大型化に向けた燃焼試験も進んでいる。
2025年7月1日、両社は北海道赤平市のLetara試験場で、CAMUI型ハイブリッドロケットエンジンの燃焼試験を共同で実施した。
試験では、地上で約510kgの重さを支える力に相当する5,000Nの推力と7秒間の安定燃焼を確認。燃料にはHTPB(末端水酸基ポリブタジエン)と呼ばれる合成ゴムを使用した。
HTPBを燃料に使用したCAMUI型ハイブリッドロケットエンジンの燃焼試験は、世界初の成功事例となった。HTPBを採用することで、エンジンの大型化や開発期間の短縮、低コスト化につなげる狙いだ。
Letaraは現在、2028年に100kg級の人工衛星を高度500kmまで運ぶロケットの打ち上げを目標としている。
さいごに
Letaraはこれまで、人工衛星などの宇宙機に搭載するハイブリッド化学推進システムを中心に開発を進めてきた。
一方、2025年からは将来宇宙輸送システムと大型ハイブリッドロケットエンジンの共同開発を進め、5,000N級エンジンの燃焼試験にも成功するなど、技術の用途を地上からの打ち上げへ広げている。
現在は、小型衛星から大型衛星、OTV、打ち上げロケットまで、ハイブリッド推進技術を基盤に、それぞれの用途に応じたエンジンの開発を進めている。
約26億円の資金調達を経て、衛星用推進機の軌道上実証と打ち上げロケット向けエンジンの開発をそれぞれどこまで事業化につなげられるかが、今後の注目点となる。
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