JAMSSがAWSと協力合意!気軽な宇宙利用に向けたサービスの開発へ
©Space Connect株式会社

2024年7月31日、有人宇宙システム株式会社(JAMSS)が、気軽な宇宙利用を提供するクラウドサービスの構築に向けて、アマゾン ウェブ サービス(AWS)と協力合意書を締結したことを発表した。

本記事では、同システムの概要と特徴および、JAMSSが目指す未来についてご紹介します。

JAMSSとはどんな会社?

有人宇宙システム株式会社(JAMSS)は、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」を運用する唯一の民間企業。生命維持システムの監視等、安全・安心の確保、宇宙飛行士や管制要員の訓練、宇宙実験の実施などに携わってきた。

また、ISSならびに商業宇宙ステーションなどを活用した宇宙利用の支援、衛星の開発運用や衛星データ活用など民間企業による宇宙利用の促進に向けても注力しており、「きぼう」運用管制のノウハウを活かし、月や火星探査のための装置開発や運用準備等も行っている。

AWSを活用!「宇宙利用」を促す新サービス

新サービスの概要

今回、同社はISS日本実験棟「きぼう」で培ってきた技術と経験をもとに、AWSのクラウドサービスを介して、誰もが気軽に「宇宙利用」できるデータ配信サービスの提供を目指す。

同社が運営する国内外の宇宙利用サービスなどを紹介する宇宙利用サポートメディア「ASMILLA(アスミラ)」をパワーアップさせ、映像や宇宙実験、宇宙飛行士による活動等で得られた宇宙データも配信する、Webポータルプラットフォームを構築する予定だ。

データ配信サービスの構想
©有人宇宙システム株式会社

鍵は独自のデータ送信技術

このデータ配信サービスの要は、「自律的ファイルダンプシステム(JAFDIS:JAMSS Automated File Dump Innovation System)」である。同システムは2023年に宇宙実証にも成功したデータ送信システムだ。

このデータ送信システム「JAFDIS」は、宇宙空間にあるストレージに保存されたファイルを、スケジュールに従って自律的に地上へ送信するためのもの。

このシステムを今回のデータ配信サービスで利用することで得られるメリットは以下の2つ。

  1. ディレクトリ構造も含めてデータを送信するため、宇宙空間で保管されたファイルがあたかも地上のファイルサーバへ再現されたように利用可能。
  2. データの一部が欠損した場合でも必要な部分のみを再送し、補完。効率的に安定したサービスを提供可能。

1つ目に、通常、宇宙で得られた大容量の実験データや映像ファイルは、宇宙空間にあるファイルサーバに一時的に保管されたうえで、後からまとめて送信されるが、この際に同社のデータ送信システム「JAFDIS」はファイル名を含めてディレクトリ構造を維持した状態で、圧縮、暗号化し送信が可能。

そのため、地上でも宇宙空間で保管されたファイルを再現したような形でデータ利用できる。

2つ目に、宇宙から地球にデータを送信する際、中継する通信衛星の切り替え等の理由で数十秒間通信が途絶えたり、データの一部が欠損したりする場合がある。

しかし、同システムでは欠損部分を自動で識別し、必要な部分のみを再送、補完する仕組みを有している。更に、データが正しく伝送されたかを確認するハッシュ値が、送信前と受信後で一致しているかも自動で確認されるため、効率的に運用できるというのだ。

AWS Snowcoreにて実施したデータ伝送システム「JAFDIS」の実証概要
AWS Snowcoreにて実施したデータ伝送システム「JAFDIS」の実証概要 ©有人宇宙システム株式会社

また、2023年に成功した同システムの宇宙実証は、ISSに設置されているAWS Snowcore(AWSが開発する小型かつ堅牢で安全なエッジコンピューティング及びデータストレージ)にて実施された。

これにより、今後は宇宙空間でデータ処理を行い、地上送信することによるセキュリティの強化やデータ送信の効率化など、さまざまな可能性に期待できるという。

「きぼう」運用のプロから宇宙利用のプロへ

JAMSSは、宇宙からのデータ配信サービスを提供することで、ユーザーの利便性が向上し、宇宙利用の拡大に好循環を生み出すと考えている。

同社は今回のデータ配信サービスを皮切りに、今後も宇宙利用の価値向上に寄与すべくソリューションを提供し続けることで、宇宙利用の計画から実施までをワンストップサービスで提供する「Total Service Provider」を目指すという。

また、データ送信システム「JAFDIS」は、商用宇宙ステーション等にて、利用者毎に必要な時間帯に通信を強化したり、宛先を指定できたりと、将来的に利用者の要求に応じた通信サービスを構築できるという強みを持つ。

今後、宇宙へのクラウド拡大に合わせて、同システムのAWS Snowcoreへの移行をスムーズに進めるとともに、技術のさらなる実証を進め、宇宙利用への展開を目指すとのことだ。

さいごに

いかがでしたか。

JAMSSは、ISS「きぼう」の運用利用で培った技術を活かし、誰でも気軽に宇宙データを活用できるクラウドサービスを開発する。

今後もJAMSSは、宇宙利用の計画から実施までをワンストップサービスを提供する「Total Service Provider」を目指し、宇宙ビジネスの拡大に貢献していくだろう。

2030年のISS退役が迫る中、JAMSSが開発した技術は、商業宇宙ステーションや月・火星探査など、今後の宇宙開発においても重要な役割を果たしていくことが期待される。

参考

宇宙ステーションのファイルをどうやって届けるか?JAMSSが開発した「自律的ファイルダンプシステム」の技術実証を実施

JAMSS、「将来の地球低軌道(LEO)」でのクラウドサービス活用に向けて、AWSと協力合意書(Letter Of Support)を締結

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