次世代宇宙望遠鏡3計画を解説|JASMINE・LiteBIRD・NewAthenaの観測技術と開発状況
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天の川銀河はどのように現在の姿になったのか。宇宙誕生直後には何が起きたのか。ブラックホールは銀河の進化にどのような影響を与えてきたのか。こうした問いに挑むため、現在、新たな宇宙望遠鏡の計画が進められている。

本記事では、2030年代の打ち上げを目指すJASMINE、LiteBIRD、NewAthenaの3計画を取り上げ、それぞれの観測目的や望遠鏡の特徴、開発状況について解説する。

宇宙望遠鏡とは?

宇宙望遠鏡とは、宇宙空間から天体や宇宙の現象を観測する装置である。宇宙の成り立ちや銀河の進化など、さまざまな研究に活用されている。

地上の望遠鏡では、大気の揺らぎによって天体の像がぼやけたり、大気に吸収される電磁波を観測できなかったりするが、宇宙望遠鏡は大気の外から観測するため、こうした影響を避けられるのが大きな利点だ。

代表的な宇宙望遠鏡には、1990年に打ち上げられた「ハッブル宇宙望遠鏡」や、2021年に打ち上げられた「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」がある。また、日本でも2023年に打ち上げられたX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」が運用されている。

宇宙望遠鏡が観測する電磁波には、可視光のほか、赤外線、マイクロ波、X線などがある。電磁波の種類によって捉えられる現象が異なり、観測目的に応じた望遠鏡や検出器が必要となる。 例えば、近赤外線は銀河中心領域の星の観測、マイクロ波は宇宙初期の情報を含む背景放射の観測、X線は高温ガスやブラックホール周辺の現象の観測に利用される。

電磁波の種類を表す図 電波、可視光、X線、ガンマ線など 
電磁波の種類を表す図©Space Connect

本記事で紹介するJASMINE、LiteBIRD、NewAthenaは、それぞれ近赤外線、マイクロ波、X線を観測する宇宙望遠鏡計画だ。

各計画では、科学的な目標に応じて、高精度な検出器や望遠鏡、冷却システムなどの開発が進められている。

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赤外線衛星JASMINE

JASMINEは、日本が進める赤外線位置天文観測衛星の計画である。天の川銀河の中心領域にある星の位置と、その変化を精密に測定し、星までの距離や運動を調べる。

星の動きから探る銀河の歴史

天の川銀河は、どのように形成され、現在の姿になったのか。JASMINEは、銀河の中心領域にある星の距離や動きを精密に測定し、その歴史を探る。星の運動には銀河内部の重力や構造が反映されるため、多数の星を調べることで、銀河の成り立ちを読み解く手掛かりが得られる。

星の位置や動きを測る観測では、ESAのGaiaが可視光で全天の星を調べてきた。一方、天の川銀河の中心方向には大量の塵があり、可視光では奥にある星を捉えにくい。JASMINEの強みは、塵の影響を受けにくい近赤外線を使い、銀河中心の星の距離や動きを測る点にある。 同じ領域を繰り返し観測し、星の見かけの位置の変化から距離を求めるとともに、星自身の動きを調べる。

さらに、太陽より小さく暗いM型星の周りで、地球型惑星の探索も行う。惑星が恒星の手前を通過すると、恒星の明るさがわずかに低下する。JASMINEはこの変化を連続観測で捉え、表面に液体の水が存在し得る生命居住可能領域にある地球型惑星の発見を目指す。

星の位置を測る赤外線カメラ

JASMINEでは、国産のInGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)近赤外線検出器の宇宙用化が進められている。光を受けると生じる電荷を画素ごとに読み取り、画像を生成する仕組みで、約2,000×2,000画素の検出器が開発されている。

目指す位置測定の精度は数万分の1秒角である。これは、100km先にある髪の毛1本の太さの、さらに数分の1に相当する極めて小さな角度だ。

この精度を実現するため、複数の画素に広がる星の像を解析し、繰り返し観測したデータを組み合わせて位置を求める。また、画素ごとの感度の違いや、装置の変形によって生じる位置のずれを補正することも重要となる。

望遠鏡には熱膨張が小さい材料を使い、温度変化などによる歪みを抑える設計が検討されている。高精度な位置測定には、検出器の性能だけでなく、望遠鏡の安定性や観測データの補正・解析技術が不可欠だ。

2032年の打ち上げを目指す

JAXAは、2032年の打ち上げを目標としている。

2026年9月の日本天文学会では、望遠鏡の設計や位置測定の誤差要因、約2,000×2,000画素の検出器の性能評価、検出器の感度差を補正するための較正光源の評価など、開発に関する取り組みが報告されている。

宇宙望遠鏡LiteBIRD

LiteBIRDは、JAXAが主導し、欧州8か国やカナダの研究機関などが参加する国際共同の宇宙望遠鏡計画である。宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光を全天にわたって観測し、宇宙誕生直後に急膨張が起きたとする「インフレーション」仮説の検証を目指す。

宇宙の急膨張の痕跡を探索

CMBは、宇宙誕生から約38万年後、光が物質に頻繁に散乱されずに進めるようになった時代の光である。宇宙の膨張によって波長が引き伸ばされ、現在は主にマイクロ波として観測される。

LiteBIRDが測定するのは、CMBの「偏光」、つまり電磁波の振動方向の偏りである。インフレーションに伴って生まれた可能性のある原始重力波は、その偏光に「Bモード」と呼ばれる特有のパターンを残すと考えられている。

LiteBIRDは原始重力波を直接検出するのではなく、CMBに残る偏光パターンから、その痕跡を探る。大気の影響を避けながら全天を観測することで、極めて微弱な信号の検出を目指す。

超伝導検出器と極低温冷却技術

LiteBIRDでは、TES(超伝導転移端センサー)を使ったボロメーターの開発が進められている。ボロメーターは、受け取った電磁波のエネルギーを熱に変え、わずかな温度変化を測る装置だ。

TESは、物質の電気抵抗がゼロになる超伝導状態と、電気抵抗を持つ状態の境界付近で動作する。微小な温度変化を大きな抵抗変化として読み取ることで、極めて弱い信号を検出する仕組みだ。

こうした高感度な測定には、装置自身が発する熱を抑えることも重要となる。そのため、望遠鏡を約5K(約マイナス268℃)以下、検出器を約0.1K(約マイナス273℃)まで冷却する設計が採用されている。

また、銀河の塵などが放射するマイクロ波も偏光を持つため、CMBの信号と区別する必要がある。LiteBIRDでは、複数の周波数帯で観測し、それぞれの信号の特徴を分析することで、CMBに由来する偏光の抽出を目指す。

計画見直しを経て2036年度の打ち上げへ

LiteBIRDは、2024年に検出器の開発体制に課題が生じたことを受け、計画を大幅に見直した。従来の3基の望遠鏡を1基に集約し、冷却システムも簡素化する設計へと変更された。

新たな開発体制では、JAXAが衛星本体や冷却装置、望遠鏡の鏡などを担当し、欧州側が観測装置の開発を主導する。超伝導検出器についても、イタリアやオランダ、英国などの研究機関が連携して開発を進めている。

2026年6月26日にはミッション定義審査(その2)が行われ、宇宙科学研究所としてプロジェクト準備段階への移行が可能と判断された。今後は衛星や観測装置の設計、検出器の開発・試験などを進め、2036年度の打ち上げを目指す。

X線望遠鏡NewAthena

NewAthenaは、欧州宇宙機関(ESA)が主導する大型X線宇宙望遠鏡計画である。日本でも参加に向けた検討が進められており、JAXA宇宙科学研究所では、広視野撮像装置WFIの検出器開発への参加が検討されている。

同計画は、2014年に選定されたAthena計画を、開発費用と科学目標の両立に向けて再設計したもので、2023年11月にNewAthenaとして検討を継続する方針が承認された。

高温ガスやブラックホールの活動をX線で観測し、宇宙の進化を解明することを目指している。

X線で探る高温の宇宙

銀河団には、銀河の間を満たす数百万度以上の高温ガスが存在する。また、ブラックホールに落ち込む物質も高温になり、X線を放射する。X線観測は、こうした高温・高エネルギーの現象を調べる重要な手段である。

NewAthenaでは、天体の画像を撮影するだけでなく、X線をエネルギーごとに分けて調べる「分光」も行う。これにより、高温ガスの温度や含まれる元素、ガスの運動などを詳しく分析し、銀河やブラックホールの進化を探る。

X線を集めるミラーと2つの検出器

NewAthenaの特徴は、大量のX線を集める望遠鏡と、精密な分光・広視野観測を担う2つの装置を組み合わせる点にある。

X線は一般的な鏡に正面から入射しても反射しにくいため、鏡の表面にすれすれの角度で入射させて集める。NewAthenaでは、薄いシリコン板を積み重ねた「シリコンポア光学(SPO)」を採用し、軽量な構造で大きな集光面積を確保する。

望遠鏡の焦点距離は12メートルで、集めたX線を観測目的に応じて2つの装置のいずれかへ導く。

1つ目の「X-IFU」は、TES(超伝導転移端センサー)を利用した高精度のX線分光装置である。X線を吸収した際に生じるわずかな温度上昇から、一つひとつのX線光子のエネルギーを測定する。検出器を約0.05K(約マイナス273.1℃)まで冷却することで、微弱な温度変化を捉える仕組みだ。

2つ目の「WFI」は、シリコン半導体を用いたDEPFET型の広視野撮像装置である。X線が入射した位置やエネルギー、到来時刻を測定し、広い範囲の天体を観測する。また、明るい天体から届く大量のX線を高速で測定する専用の検出器も備える。

X-IFUは天体の各領域を詳しく分析し、WFIは広い範囲から天体を探す観測に強みを持つ。 2つの装置を使い分けることで、微弱なX線の精密測定から広範囲の天体調査まで対応する計画だ。

開発状況と今後の予定

前述のようにAthena計画は、費用と科学目標の両立に向けた見直しを経て、NewAthenaとして検討されている。

現在は検討段階で、2027年の正式採択に向けて設計と費用の検討を進め、2039年の打ち上げを予定している。

3計画の観測技術を比較

次世代宇宙望遠鏡3計画の比較は以下の通り。

JASMINE・LiteBIRD・NewAthenaの3つの天文プロジェクトを比較した表。科学目標、観測する電磁波、主要な観測装置・検出器、測定の特徴を整理。JASMINEは近赤外線で星の位置や動き、LiteBIRDはマイクロ波で宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光、NewAthenaはX線で高温ガスやブラックホール周辺の現象を調べる。
次世代宇宙望遠鏡3計画の比較図©Space Connect

JASMINEは近赤外線で星の位置や動きを、LiteBIRDはマイクロ波でCMBの偏光を、NewAthenaはX線で高温ガスの状態や運動を調べる。解明したい宇宙の謎に応じて、観測する電磁波や検出器の仕組みが異なる。

JASMINEでは高精度な近赤外線検出器、LiteBIRDでは微弱な信号を捉える超伝導検出器、NewAthenaでは精密な分光装置と広視野撮像装置の開発が進められている。

特に、LiteBIRDとNewAthenaはどちらもTES(超伝導転移端センサー)を利用する計画だが、測定対象や用途は異なる。同じ原理を持つ技術でも、観測目的に応じて異なる形で活用されている。

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さいごに

JASMINE、LiteBIRD、NewAthenaは、それぞれ近赤外線、マイクロ波、X線を用いて、銀河の形成や宇宙初期の現象、ブラックホールの活動などの解明を目指す次世代宇宙望遠鏡計画である。

各計画では、赤外線検出器や超伝導センサー、X線ミラーなど、観測目的に応じた技術開発が進められている。こうした技術の高精度化や冷却技術の進歩は、これまで捉えることが難しかった宇宙の現象を明らかにするうえで重要となる。

3計画はいずれも2030年代の打ち上げを目指しており、今後も設計や性能評価、開発体制の整備が進められる。各計画の進捗とともに、観測技術がどのように発展し、新たな宇宙観測につながっていくのか注目したい。

※計画の進捗・打ち上げ予定は2026年10月7日時点の公式情報に基づく。将来計画の時期や装置仕様は変更される場合がある。

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参考

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