宇宙特化の人材エージェントが解説!「宇宙スキル標準」
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2025年2月25日、内閣府宇宙開発戦略推進事務局は宇宙産業の人的基盤強化を目的とした「宇宙スキル標準(試作版)」を公表し、同日に全国説明会をオンラインにて開催した。

本記事では、「宇宙スキル標準」の概要と宇宙特化人材エージェントならではの視点から宇宙で働く人材の理想と現実について解説している。

「宇宙スキル標準」 全国説明会の概要

宇宙スキル標準とは

宇宙スキル標準とは、宇宙産業の今後の大幅な拡大を見据え、採用・育成・評価活動を効率化する目的で策定されたスキル体系の指針である。内閣府の宇宙開発戦略推進事務局が公表した本スキル標準(試作版)は、日本の宇宙産業における人的基盤を強化し、急伸する市場ニーズに対応するための具体的な枠組みを提供している。

「宇宙スキル標準のステップ」
「宇宙スキル標準のステップ」 ©内閣府宇宙開発戦略推進事務局

現在の宇宙産業と課題

世界的な成長と日本の現状

近年、宇宙産業は世界規模で急速に成長し、2040年には170〜200兆円規模に達すると予測されている。日本では長らく市場規模1兆円、従事者1万人程度にとどまっていたが、政策や技術の進展によって4〜8兆円規模への拡大が進みつつあり、10万人規模の人材確保が必要とされる局面を迎えている。

多様な分野と人材不足

一口に「宇宙」といっても、人工衛星の小型化、民間ロケットの開発、宇宙旅行ビジネスなど、その領域は多岐にわたる。しかし、その分野横断的な成長を支える人材が圧倒的に不足している。教育機関だけでは供給が追いつかず、異業種からの人材を含めて多様な人材を育成・採用する仕組みづくりが急務となっている。

宇宙業界の人材不足の現状
宇宙業界の人材不足の現状 ©内閣府宇宙開発戦略推進事務局

スキル標準の役割

こうした人材不足や多様な業務領域への対応を目的として作成されたのが「宇宙スキル標準」である。業界共通の基準を設けることで、企業が必要とするスキル要件を明確化すると同時に、転職希望者や学生が自身のスキルを宇宙分野へ適用しやすくする狙いがある。これは、宇宙産業における採用・教育・評価などのプロセスを円滑化し、日本の宇宙開発が抱える人材面の課題を解決するための有効な手段として位置づけられている。

今回の説明会では、以下の4点が主な論点として示されている。

  1. 宇宙スキル標準の目的と実際の活用方法
  2. 宇宙関連企業が直面する人材採用の課題
  3. 業界で求められるスキルの整理と明確化
  4. 参加者からのフィードバックと改善案の検討

今後は、今回の試作版をベースに業界関係者や専門家の意見を集約し、より実務に根ざしたスキル項目や評価項目へアップデートしていく予定である。求職者にとっては、自身のスキルや経験が宇宙業界でどう活きるかを把握でき、企業にとっては採用要件を明確に伝えられるため、双方向でメリットが大きいと考えられている。

ポイントと活用方法

今回公表された「宇宙スキル標準」の大きな特徴は、宇宙産業の主要な業務とそれに必要なスキルを体系的に整理している点である。異業種から宇宙関連企業への転職を検討している人にとっても、宇宙分野でのキャリアビジョンを具体化しやすい仕組みとなっている。

業務とスキルの関連づけ

今回の試作版では、宇宙に関わる業務は特性に応じて7つのカテゴリに分類され、特に「プログラム創造・組成」「プロジェクトマネジメント」「システム全体エンジニアリング」「領域別エンジニアリング」の4つに焦点を当てて詳細な整理が行われた。

Ex. 事業検討から運用・活用までの一連の流れを56の業務項目に分解、それらに紐づく94のスキルを定義・記載

宇宙に関わる業務の一覧
宇宙に関わる業務の一覧 ©内閣府宇宙開発戦略推進事務局

各カテゴリのシートには、下記のような情報が整理されている。

  • 詳細業務の内容
  • 必要となるスキル一覧
  • 想定されるロール(役割)

この情報を参照することで、他業種からの転職検討やキャリア形成において、「どの業務に携わりたいか」「その業務にはどんなスキルが必要なのか」を可視化できる。たとえ専門知識がなくとも、スキル項目を洗い出すことで、学ぶべき内容や経験すべき領域を明確にすることが可能となるのだ。

宇宙関連の業務に必要なスキル
宇宙関連の業務に必要なスキル ©内閣府宇宙開発戦略推進事務局

また各スキルに対しては、以下4つの評価軸が設定されており、それぞれ5段階で評価する仕組みを採用している。

  1. 遂行可能な業務範囲・深さ
  2. 業務遂行時の自立性
  3. 資格・検定との関連
  4. 経験年数

この仕組みによって、自分がどの程度のレベルにいるのかを客観的に把握できるだけでなく、企業側も必要とするスキルレベルを明示しやすくなる。

スキルレベルの整理方針
スキルレベルの整理方針 ©内閣府宇宙開発戦略推進事務局
宇宙スキル標準の活用例
宇宙スキル標準の活用例 ©内閣府宇宙開発戦略推進事務局

「宇宙スキル標準」の価値とは

宇宙業界では、「企業が求める人材像やスキル要件」が十分に周知されていないため、学生や転職希望者にとって具体的な就業イメージを掴みにくいのが現状だ。たとえば「宇宙は面白そうだが、自分のスキルが本当に通用するのか分からない」「情報が不足していて、現実的なキャリアパスとして想像しにくい」といった理由から、他業界へ流れてしまうケースは意外と多い。また企業側も、求人要件を明確に示せないことで人材とのミスマッチを引き起こし、結果として貴重な人材を取り逃しているのが実情である。

また、マッチングしたとしても、企業と求職者の間で「現場が求めるスキル」と「求職者が想定するスキル」に依然としてズレがあるケースも少なくない。宇宙という特殊領域ゆえに、職種や工程への理解に大きな差があるからだ。本スキル標準で評価指標を整備することができれば、採用段階のミスマッチを減らす効果が期待されている。

宇宙業界の人材マッチングが難しい理由

「宇宙スキル標準」による人材育成の取り組みが始まったとはいえ、宇宙業界における人材確保には特有の難しさが存在すると考えている。ここで宇宙特化の人材エージェントとして、具体的に人材マッチングの難しさについて明示する。

宇宙業界外との連携不足

「宇宙スキル標準」のような業務と必要スキルを整理した資料の存在は、業界内外の人材流動性を促す上で大きな意義を持つことは間違いないだろう。

ただ、異業種から宇宙分野へ転職を検討する層にとっては、そもそもこうした業界特有の資料に辿り着くルートに乏しい

宇宙関連のニュースやセミナー情報は特定コミュニティの中だけで流通しがちで、日常業務やネットワーク上に接点のない人にとっては、該当情報を見つけるだけでも高いハードルとなる。そのため、スキル標準を適切に整備したとしても、閲覧や活用の機会が限定的になりがちである。

さらに、自力でイベント参加やレポート調査などを行える情報リテラシーの高い層よりも、本当にアプローチすべきは、ミドルクラスの異業種人材である。

彼らをリスキリングし、宇宙業界で活躍してもらうには「宇宙スキル標準」のようなツールが一定の有用性を発揮するものの、それだけでは力不足な面も否めない。より実効性を高めるには、周知活動の体制づくりや、各企業でのオンボーディング環境の整備など、より踏み込んだ施策が不可欠であろう。

この情報の非対称性を解消し、ミドルクラス層を含む異業種の優秀な人材を宇宙分野へ誘導するためには、企業・教育機関・政府などが密に連携し、汎用的な転職サイトやSNSでの情報発信、さらに大学や職業訓練機関との連携強化が必須となる。宇宙に特化した枠組みにとどまらず、あらゆるプラットフォームを通じて認知度を高める取り組みが、今後の人材確保において大きな鍵を握ることは間違いないと言えるだろう。

待遇・環境面での期待値調整

宇宙業界への転職を検討するうえで、待遇や環境における期待値の差は大きなハードルとなっている。特にベンチャー企業では、大手他業種と比べて給与水準や福利厚生が見劣りしがちだ。

また、ロケット開発などでは射場のある地方へ赴く必要があり、家族の転居や生活基盤の変更を敬遠するミドルクラスの候補者も少なくない。

さらに、人材採用にあたり「宇宙への熱意」を原動力に異業種から挑戦する人材も多いが、実際の業務と理想のギャップにより早期退職に至るケースも散見される。こうしたミスマッチを回避するには、企業と候補者の間でマッチング前に期待値を丁寧に調整し、双方が納得できる条件を提示することが必要不可欠だ。

一方で、「宇宙の仕事は高度な専門知識が必要」という先入観も根強く、逆に門戸を広げすぎれば十分な基礎力を備えていない応募が増える可能性もある。給与や勤務地の条件を含め、企業が求めるスキルレベルを具体的に提示しながら、候補者のモチベーションやライフスタイルとのすり合わせを行うなど、バランス感を担保する仕組みづくりが肝要といえる。

育成環境と専門人材の不足

前提として、宇宙業界全体で人材数が不足しているため、若手を育成しようにも指導者となる経験豊富な人材が足りないのが実情だ。宇宙開発のマネジメント経験や、宇宙特有の高度な技術に精通した人材自体がそもそも希少であり、即戦力としていきなり外部から確保するのは容易ではない。

必然的に、他産業から広く人材を募集し、業界内で育成する必要があるが、効果的な社内教育には時間とリソースがかかり、急成長中のベンチャー企業では、そのような人材の採用に対して、二の足を踏みがちである。

さらに、大手企業であっても育成体制が十分に整っているところは決して多くなく、せっかく育った人材が他業種へと転職してしまうケースも少なくない。結果として、業界全体でノウハウの蓄積や安定した育成環境の整備が進まず、急激に拡大する市場ニーズに追いつけないという課題が顕在化している。

スペジョブの役割と提供する価値

このように宇宙産業への参入やキャリア形成を目指す求職者と企業の間では、期待値のずれやミスマッチによる課題が多く存在しています。スペジョブは、そのような課題解決を目的として、スペジョブでは、求職者と企業の適切な期待値調整を可能にするエコシステムを有している

具体的には、求職者が自身に最適な企業に出会えるよう、宇宙関連の情報提供のもと精度の高いマッチングを提供している。また、仮に現在の状況で直接的に宇宙産業に携われなくとも、未経験からでも5年後を見据えた具体的なキャリアロードマップを提案し、宇宙利活用の進んだ世界の実現に向けて、長期的なキャリア支援も実施している。

スペジョブの特徴

  • 宇宙スキル標準に基づく高精度マッチング:企業の求人要件と求職者のスキルを詳細に照合し、双方に最適なマッチングを実現します。
  • 求職者向けスキル可視化支援:求職者自身が自分のスキルや強みを客観的に把握し、転職市場での競争力を高められるよう支援します。
  • 企業向け採用支援サービス:効果的な求人票作成のサポートや採用戦略の最適化を行い、採用成功率の向上に貢献します。
  • 未経験からの長期的キャリア支援:たとえ宇宙産業未経験者であっても、明確なキャリアロードマップを提示し、5年後、10年後を見据えた具体的な支援を提供します。
スぺジョブの特徴
スぺジョブの特徴 ©Space Connect株式会社

スペジョブではいつでもカジュアルに面談やご相談を受け付けているので、少しでも興味がございましたらいつでもご連絡をお待ちしております。ご相談はこちらから!

さいごに

いかがでしたか。

宇宙スキル標準の整備が進むことにより、宇宙産業における人材育成と採用の課題が良い方向に進む可能性は高い。しかし、人材エージェントの観点で考えた際に依然として企業と求職者の間の期待値差が大きく、適切な人材マッチングを推進する仕組みが強く求められているように思う。

そういった観点でも「スペジョブ」のような航空・宇宙特化型の人材マッチングプラットフォーマーの立ち位置は、企業にとっては適切な人材を確保する手段となり、求職者にとっては理想的なキャリアを支援するための支援ツールとなることだろう。

もし、宇宙に関わるキャリアを検討している方や、優秀な人材を求める企業は、ぜひスペジョブを活用し、一歩目を踏み出してみてはいかがだろう。

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