
宇宙ビジネスでは、衛星データをどう取得するかだけでなく、取得したデータをどう活用するかが重要になっている。その活用を支える仕組みの一つがGISである。
本記事では、GISの基本を整理したうえで、衛星データとの関係や、宇宙ビジネスにおける活用事例について解説する。
目次
GISとは
GIS(Geographic Information System, 地理情報システム)は、位置情報を持つデータを地図上で管理・分析・統合し、表示するシステムである。
GISの特徴は、さまざまな情報を「場所」という共通の軸で結びつけられる点にある。人口、建物、道路、農地、災害リスクといった情報は、それぞれ単独でも意味を持つ。しかし、地図上で重ね合わせることで、次のような分析が可能になる。
- 地域の状況を一目で把握する:人口が集中している地域、浸水リスクが高い地域など
- 場所同士の関係を分析する:避難所と住宅地の距離、農地と水源の位置関係など
- 変化や異常を見つける:都市開発による土地利用の変化、地盤沈下の兆候など
例えば、地図上に人口分布と店舗の位置を重ねると、人口が多いにもかかわらず店舗が少ない地域を把握し、新店舗を設立する地域を選ぶために活用することができる。

このように、GISは地域の特徴を個別の数値としてではなく、空間的なまとまりとして直感的に理解できる仕組みであり、意思決定に使える形にするための基盤である。
GISで使用するデータと衛星データの役割
GISで使用するデータは、主に ①道路や建物、地形などを示す「地図の土台となるデータ」と、②人口、土地利用、災害リスク、農地の状態など、「その場所の状態や変化を示すデータ」に分けられる。
近年、注目を集めている衛星データは、この両方に関わることができる。
GISで使用するデータ
① 地図の土台をつくる基盤データ
GISで使われる地図は、最初から完成された形で存在しているわけではない。航空写真、衛星画像、地上での調査情報などをもとに、道路、建物、河川、地形、行政区域などの情報が整理され、地図データとして整備されている。
例えば、国土地理院が整備・提供する地図情報である「電子国土基本図」も、こうした情報をもとに整備・更新されている。アクセルスペースは、国土地理院が進める「衛星・AIを活用した地図更新の効率化」を目的とする電子国土基本図関連プロジェクトに、地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」の衛星画像を継続的に提供している。
② 分析するための状態・変化を示すデータ
地図上で分析するためのデータも必要である。行政の統計情報、現地調査、センサー、車両データなど、さまざまなデータを地図上に重ねることで、状態や変化を把握できる。
衛星データも、その一つとしてGISに取り込まれる。衛星画像は、解析によって土地の状態や地表の変化を示す情報に変換され、他のデータと同じ地図上で扱えるようになる。
例えば、衛星画像をそのまま見るだけではなく、農地、森林、市街地、水域などを分類したデータにしたり、過去の画像と比較して変化が起きた場所を抽出したりする。こうした処理によって、衛星データはGIS上で分析に使える情報になる。
衛星データがGISに適している理由
衛星データがGISと相性が良い理由は、大きく「広域性」「継続性」「災害時の有効性」にある。
まず、衛星は広い範囲を一度に観測できる。地上調査では時間やコストがかかる地域でも、衛星を使えば広域の状況を一括して把握しやすい。
次に、同じ場所を繰り返し観測できる。これにより、土地利用の変化、農地の状態、森林の変化、インフラ周辺の変動などを継続的に追うことができる。
さらに、災害時にも有効である。道路が寸断されたり、現地確認が難しかったりする場合でも、衛星から被災地域を観測できる可能性がある。特に、広い範囲で被害状況を把握する必要がある災害対応では、衛星データはGIS上で状況を整理するための重要な情報源となる。

宇宙ビジネスにおけるGIS活用の実例
サグリ|農地の状態を地図上で可視化

サグリ株式会社は、衛星データやAIを活用し、農地の状態を可視化するサービスを展開している。
同社のサービスでは、衛星画像を解析することで、作付け状況や生育状況などを把握可能。また、衛星データ解析とGIS技術を用いて点在する農地を検出することで、農地所有者と担い手のマッチングにも活用している。
この事例では、衛星データが農地の状態を把握するための情報源となり、GISがその情報を地図上で整理する役割を担っている。農業行政や農地管理において、衛星データを判断に使える情報へ変換している例といえる。
天地人|水道管の漏水リスクを地図上で管理

株式会社天地人の「天地人コンパス 宇宙水道局」は、衛星データを活用した水道DXソリューションである。
同サービスでは、衛星データを活用して管路の漏水リスクを診断し、漏水の可能性が高いエリアを絞り込むことで、優先的に調査すべき場所を見つけやすくしている。
この事例では、GISは水道管路データと漏水リスクを地図上で結びつける役割を担っている。地下にあるインフラは直接確認しにくいため、リスクを空間的に整理することが、維持管理の効率化につながる。
スペースシフト|浸水域と通行困難な道路を推定

株式会社スペースシフトは、衛星データ解析技術を活用し、災害時の浸水域推定に取り組んでいる。
同社はトヨタ自動車と、衛星データや車両データを活用した水害対策技術の共同開発を進めている。スペースシフトは人工衛星データを解析して浸水域を推定し、トヨタ自動車の車両プローブ情報などと組み合わせることで、通行できない可能性が高い道路の把握にもつなげている。
この事例では、GISは衛星から得た浸水情報と、道路や車両データを結びつける場になる。災害時には、被害の範囲だけでなく「どの道が使えるか」が重要になるため、GIS上で複数のデータを統合する意義が大きい。
さいごに
GISは、単に地図を表示するためのツールではなく、位置情報を軸にデータを地図上に統合し、地域の状況や変化を整理するための基盤である。
データの価値は「取得」だけで決まるものではなく、どのように活用されるかによって決まる。衛星データも例外ではなく、地図上で他の情報と結びつけ、意思決定に使える形へと変換してはじめて価値を持つ。
今後、衛星コンステレーションの進展により、取得できるデータ量と更新頻度はさらに高まっていく。膨大なデータをどのように整理し、判断に使える情報として扱っていくのかが、宇宙データ活用の重要な論点となる。
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