Fusic、SPACE DAY 2026を開催|宇宙産業の成長はソフトウェアで決まる!?
ⒸSpace Connect株式会社

2026年4月10日、X-NIHONBASHI TOWERにて「SPACE DAY 2026」が開催された。

本記事では、SPACE DAY 2026の注目セッションを整理するとともに、主催企業であるFusicへのインタビューを通じて、宇宙業界におけるソフトウェアの役割や可能性について取材した。

SPACE DAY 2026 とは

イベント概要

SPACE DAY2026の入口装飾
SPACE DAY 2026の内観 Ⓒ株式会社Fusic

SPACE DAYは、宇宙産業におけるソフトウェア実装をテーマにしたコミュニティイベントである。今年で3回目の開催となり、「宇宙産業のソフトウェア・エコシステム構築」を掲げ、宇宙業界におけるソフトウェアプレイヤーの交流と知見の流通を目的としている。

当日は、午前にクラウドや衛星データを扱うハンズオンワークショップ、午後に各社によるセッションおよびネットワーキングが実施された。講演にとどまらず、実践的な学習機会と業界内の横断的な接点創出を組み合わせた構成となっており、宇宙×ソフトウェア領域におけるコミュニティ形成の基盤形成に役立つイベントとなっていた。

JASPOの方がハンズオンをしている様子
株式会社JAOPS CEO & Co-Founder アレハンドロ・セラ氏 Ⓒ株式会社Fusic
主催企業の詳細は去年の記事をチェック▲

SPACE DAY 2026 - 注目セッションを紹介

今年のセッションにおいて特徴的だったのは、ロケット、衛星、地上局、衛星データといった宇宙産業を包括的に構成する各プレイヤーがソフトウェアを活用並びに重要性を定義していた点にあると考えている。

そこで産業構造に沿って「上流(ロケット)」「中流(衛星・地上局)」「下流(データ利活用)」の3領域に分解し、各セッションを紹介することとする。

宇宙アクセス・インフラ全体

米宇宙開発を加速させているのはソフトウェアの設計思想

宇宙領域におけるソフトウェア実装に強みを持つFusicの吉野雅耶氏は、日本の宇宙開発においてもソフトウェアの横断的活用が開発速度の向上に直結するとの見解を示した。

米国では、イーロン・マスク率いるSpaceXや、ジェフ・ベゾスが創業したBlue Originといった企業がロケット開発を高速に進めている。その背景には、ハードウェア開発にソフトウェア的な設計思想を組み込んでいる点がある。設計から実機試験までを短期間で回す開発体制や、自律着陸、コマンド送受信といった機能をソフトウェアで実現する構造が、その象徴である。

また、開発プロセスにおいてAIの活用も進んでおり、ソフトウェアを前提とした開発体制の有無が、スタートアップにおける開発速度を大きく左右していると指摘した。

Fusicの取り組みを説明している図解
日本の宇宙市場に対するFusicの解決アプローチの図解 ©Space Connect株式会社

日本の宇宙産業に共通する構造的課題

一方で、日本の宇宙産業には共通した課題が存在するという。吉野氏によれば、複数の企業から寄せられる相談内容は共通しており、クラウド設計やセキュリティに関する知見不足、人材不足による開発スピードの停滞といった課題が挙げられる。

これらは、Web業界ではすでに標準化されている領域でもある。具体的には、OSS(オープンソースソフトウェア)を活用した共通基盤の整備や、API連携によるシステム接続、クラウド活用によるインフラの外部化といった取り組みが十分に進んでいない点が、産業全体の効率性を制約している。

こうした状況の中で、Fusicは宇宙関連企業との累積取引社数を12社に拡大しており、業界横断で課題に向き合ってきた実績を背景に、各企業ごとに最適化されたソリューション提供を強みとしつつ、業界全体の効率化にも取り組む方針を示していた。

Fusicの吉野氏が企業説明をしている様子
株式会社Fusic 事業本部/先進事業部門 部門長/プリンシパルエンジニア. 吉野 雅耶氏 Ⓒ株式会社Fusic

日本のロケット企業もソフトウェアの重要性を提示

地球上を60分で移動するP2P(高速2地点間輸送)技術をコアとするロケット企業、将来宇宙輸送システムの細國敬祐氏は、創業初期から開発を高速に進められている要因として、ソフトウェアの実装を挙げた。

ロケット開発は、実証実験の回数が成否を左右する領域である。同社はこの特性を踏まえ、IT業界で一般的なアジャイル開発の考え方を取り入れ、開発工程の効率化と高速化を図っている。限られたキャッシュと時間の中で、試験と改善のサイクルをいかに多く回すかが、競争力の源泉となるためである。

その中核となるのが、「P4SD(Platform for Space Development)」と呼ばれる仕組みである。設計データ、試験結果、シミュレーション情報といった開発に関わるデータを一元管理し、相互に連携させることで、開発サイクル全体を継続的に最適化する。

P4SDの概要を説明している図解
ロケット開発をソフトウェアで加速する「P4SD」アジャイル開発モデル図 ⒸSpace Connect株式会社

従来のロケット開発が「ハードウェア中心の逐次開発」であったのに対し、P4SDは「ソフトウェアとデータによる並列・反復開発」であり、ロケット開発においてもソフトウェア的に再定義することがいかに重要かを示す内容であった。

将来宇宙輸送システム株式会社の説明をしている一ノ瀬氏
将来宇宙輸送システム株式会社 一ノ瀬 友宏氏 Ⓒ株式会社Fusic

衛星・地上システム

衛星開発もソフトウェア文化の導入が差別化に直結する

超小型人工衛星のミッション検討から設計・製造、試験、運用までを一貫して手がけるKick Space Technologiesの代表・佐藤凜氏は、小型衛星開発において重要なのは「すべてを自社で内製化しないこと」であると指摘した。

同社は九州工業大学発の企業として、衛星のハードウェア開発には強みを持つ一方で、ソフトウェア領域についてはまだ発展途上にあるとの認識を持っている。そのため、ソフトウェアを含む開発領域を外部と連携しながら拡張していくことが、競争力の確保につながると考えている。

Kick Space Technologiesの説明をする佐藤氏
Kick Space Technologies株式会社 代表取締役CEO. 佐藤 凛氏 Ⓒ株式会社Fusic

またこうした考え方はソフトウェア領域に限らず、ハードウェア開発においても重要であると強調する。ソフトウェアの設計思想(モジュール化や分業、再利用性)を前提としたサプライチェーン構築が、開発効率とスケーラビリティを高めるとのことであった。

自社単独での成長ではなく、QPS研究所やFusicといった九州の主要企業と連携しながら、九州全体として宇宙産業の基盤を強化していきたいとの展望を示した。

地上局も「ネットワーク化」と「運用基盤化」が重要

衛星の地上局サービスを展開するインフォステラの倉原直美氏は、今後の地上局ビジネスにおいては「アセットを持たないネットワーク型モデル」が重要になるとの見解を示した。

同社はこれまで、世界各地の地上局を接続することで、単一の設備に依存しないアセットライトなサービスを展開していたが、今後は、日本の衛星数の増加を見据え、重点地域におけるアンテナ拡充を進め、安全保障の観点を踏まえて、日本企業が優先的に利用できるネットワークの構築を目指していると展望を公開。地上局ネットワークそのものが付加価値の源泉となる可能性があると指摘した。

また、アンテナのプラットフォームとして提供してきた「ステラステーション」を、将来的には衛星運用基盤へと発展させていく方向性についても言及した。単なるインフラ提供にとどまらず、運用領域まで踏み込むことで、より高い付加価値を提供する狙いである。

こうした構想の実現に向けては、ソフトウェア領域での連携が不可欠であり、同構想を提示していたFusicとの協業も視野に入れているとした。

インフォステラの説明をしている倉原氏
株式会社インフォステラ 代表取締役CEO. 倉原 直美氏 Ⓒ株式会社Fusic

データ利活用・サービス領域

衛星データは「意思決定インフラ」になる

宇宙技術を活用したデジタルツイン領域で注目を集めるスペースデータの飯野翔太氏は、衛星データと都市データを統合した3Dモデルを軸に、デジタルツインの実用化を進めていると説明した。

デジタルツインは、現実空間をデジタル上に再現する技術であるが、同社の特徴は「可視化」にとどまらない点にある。都市環境を再現したデジタル空間上で、ドローンの飛行や避難経路の検証などを行い、その結果を現実の意思決定に反映させる構造を構築している。

また、建物や地形といった物理情報だけでなく、人の行動や判断といった要素もAIに取り込み、「空間×物理×認知」を統合したシミュレーションを実現している点も特徴であった。

こうした衛星データを単なる分析対象から、都市開発や防災などの意思決定に直接活用される「インフラ」へと進化させるものであり、データ利活用のあり方そのものが変化しつつあることを示している事例であった。

スペースデータの説明をしている飯野氏
株式会社スペースデータ イノベーティブプロダクトマネージャー. 飯野翔太氏 Ⓒ株式会社Fusic

AI時代における衛星ビジネスのあり方

超小型衛星の開発を推進するArkEdge Spaceの共同創業者・鈴本遼氏は、生成AIの台頭に対し、単なる業務効率化にとどまらず、組織全体で使いこなし、AIを前提としたプロダクトへ再設計する必要があると指摘した。

同社ではAIに知識とツールを教え、日常的に活用を進めており、その影響は主に「組織設計」「開発」「ユーザ体験」の3領域に及んでいる。

アークエッジスペースの鈴本氏が説明をしている様子
株式会社アークエッジ・スペース 共同創業者・鈴本遼氏 Ⓒ株式会社Fusic

組織設計では、AIを既存業務の補助としてではなく、衛星の製造・開発・運用といった全工程を前提から再設計する方向にある。一方で、活用が一部メンバーに偏っている現状を踏まえ、組織全体で使いこなす体制への移行を進めている。

開発面では、自社知識を学習したAI基盤を構築しつつ、衛星の多数機開発を前提に運用の自動化を推進している。特徴的だったのは、AIに作業を代替させるのではなく、「自動化の仕組みそのものを生成させる」アプローチであり、一度構築した仕組みを継続的に活用することで、開発効率を構造的に引き上げるのが狙いとのことだ。

ユーザ体験では、地理空間情報プラットフォーム「ArkEdge Insight」を例に、従来の開発プロセス(BizDev→PdM→エンジニア)がボトルネックになっていたと説明した。生成AIの活用により、非エンジニアでもプロトタイプを迅速に構築できるようになり、試行回数の増加と意思決定の高速化が可能となった。一方で、コード品質の低下といった副作用も生じるため、これもAIを活用したテストやリファクタリングの自動化を重要な論点としていた。

AI前提の宇宙ビジネスを説明している図解
AI前提の宇宙ビジネスの説明図 ⒸSpace Connect株式会社

また、AIが衛星データの解析・活用を担う前提に立つと、現行のデータ利活用サービスのユーザ体験自体が最適なのかという根本的な問いが浮かび上がる。衛星データの普及が進まない要因の一つとして、ユーザが本質的に求める体験が十分に実現されていない可能性を指摘し、AI時代に適合したプロダクトへの再設計が必要なのではと事業開発の観点から見解を示した。

総じて、AIは単なる機能ではなく、組織が生き残るために、組織・開発・ユーザ体験そのものの再設計を迫る「構造的な圧力」であると結論づけた。

主催企業Fusicに独占インタビュー

SPACE DAY 2026の主催企業であり、宇宙ビジネスにおいてソフトウェア領域を強みとするFusicに、独占インタビューを実施した。今回話を聞いたのは、同社で宇宙事業開発をリードし、イベント全体の取りまとめも担った室井氏である。本稿では、宇宙産業におけるソフトウェアの重要性と今後の可能性を整理し、締めくくりとする。

背景としては、お察しの通り生成AIの台頭が大きく、宇宙業界においても一定のインパクトが出始めています。例えば、フィジカルAI(物理的な機体に知能を持たせ、自律的に判断・動作させる技術)の進展により、ハードウェアを扱う企業においてもソフトウェアやAIを前提とした設計が不可欠になりつつあります。従来のようにハードウェア単体で価値を出すのではなく、ソフトウェアと一体で価値を設計する流れに変わってきている印象です。

また、国が主導する宇宙戦略基金においても、ソフトウェアやAIの活用を前提としたテーマが増加しており、政策レベルでもその重要性が明確になっています。

こうした流れを踏まえると、ソフトウェア領域全般を強みとする当社にとっては、事業機会が拡大している局面であると捉えています。

Fusicの説明をしている室井氏の様子
株式会社Fusic 事業本部/先進事業部門 AI×宇宙事業開発チーム. 室井 慎太郎氏 Ⓒ株式会社Fusic

はい、おかげさまで着実に拡大しています。昨年は宇宙領域の案件が立ち上がりフェーズだったこともあり、数名規模での対応が中心でしたが、宇宙系の案件に関与する人員は、現在10名以上の体制で対応する案件も増えてきています。それに伴い、対応可能な案件の幅も広がり、プロジェクト数自体も前年と比較して倍以上に増加しています。結果として、売上についても着実に伸長している状況です。

最も大きいのは、既存のクライアントの皆様からの紹介や継続的なご依頼によるものです。

当社は「OSEKKAI × Technology」を掲げており、いわゆる「お節介」とも言えるレベルで、顧客に対してきめ細かく向き合うことを重視しています。単に開発を請け負うのではなく、期待値を上回る形で価値を提供することを徹底してきました。

こうした姿勢の背景には、20年以上にわたりソフトウェア開発の品質に向き合い続けてきた実績があります。宇宙領域において求められるのは、リアルタイム性や堅牢性といった高い要求水準を満たすソフトウェアですが、最終的には「高品質なものを安定して提供できるか」が評価の軸になると思っております。

そのため、一度プロジェクトを任せていただいた後に、期待を超える品質と対応を実現できれば、自然と次の案件や紹介につながっていきます。結果として、案件が継続的に拡大していると認識しています。

長期的に見れば、一定の領域では十分に代替される可能性はあると考えています。

私自身も日々Claude Codeを使っていますが、進化スピードには正直驚かされます。一方で、宇宙領域に限らず、当社が担っている業務全体を代替できる段階には、まだ至っていないという認識です。

例えば、「仕様書に基づいて正確に実装する」といった領域については、比較的近い将来に代替が進む可能性があります。ただし、実際の開発現場では、仕様書に書かれている内容だけで完結するケースは多くありません。

むしろ重要なのは、「このサービスであれば将来的にどのような機能が求められるか」「そのためにどの程度の拡張性や余裕を持たせるべきか」といった、仕様書の前後にある前提や文脈を踏まえた設計です。

例えばクラウドのアーキテクチャ設計においても、単に要件通りに構築するだけでなく、将来の機能追加やスケールを見据えて設計することが求められます。こうした「仕様書の外側」を含めて考え、提案まで行える企業は決して多くありません。

その意味で、プロンプト入力を超えた思考や設計が求められる領域については、現時点ではAIによる完全な代替は難しいと考えています。

Fusicの説明をしている室井氏の様子2
株式会社Fusic 事業本部/先進事業部門 AI×宇宙事業開発チーム. 室井 慎太郎氏 Ⓒ株式会社Fusic

宇宙業界への関わり方としては、特定の領域に限定するのではなく、上流から下流までを俯瞰したうえで、当社のスキルが活かせる領域に横断的に関与していきたいと考えています。

当社の本質的な強みは、さまざまな分野で培い評価されてきた高品質かつ信頼性の高いソフトウェア技術にあります。そのため、各企業が抱える複雑かつ高度な課題に対して、ソフトウェアの力で解決していくことを重視しています。

一方で、こうした取り組みは当社単独で完結するものではないとも認識していますので、今回開催したSPACE DAYのようなコミュニティ型のイベントを通じて議論を重ねながら、ソフトウェア文化を醸成し、宇宙業界全体の拡大に寄与していきたいと考えています。

現在、当社は宇宙領域においてクラウドを主軸とした取り組みで認知されることが多い一方で、クラウド以外のソフトウェア領域にも積極的にチャレンジしていければと思います。

クラウド技術の実装はもちろんのこと、デジタルツイン(現実空間をデジタル上に再現する技術)やエッジAI(端末側でデータ処理を行うAI)、IoT、フィジカルAIといった領域も含め、宇宙に関連するソフトウェア全体に関与していきたいと考えています。

Fusicのメンバーの写真
主催株式会社Fusicの社員の皆様 Ⓒ株式会社Fusic

さいごに

前年の「SPACE DAY 2025」ではクラウド活用の有用性が主な論点であったが、本年は議論が一段進み、宇宙産業全体におけるソフトウェアの重要性がより明確に示された。

米国の宇宙産業の発展がソフトウェアと不可分であったように、日本においてもロケット、衛星・地上システム、データ利活用といった各レイヤーで、ソフトウェアが開発速度・スケーラビリティ・競争力を左右する中核要素となりつつある。

特にデータ利活用領域では、衛星データを単なる分析対象から「意思決定インフラ」へと価値転換し、ビジネスの出口として成立させようとする動きが際立っていた。

宇宙産業は依然としてハードウェア中心の側面を持つ一方で、ソフトウェア起点で価値を捉えるプレイヤーほど、個別最適にとどまらず産業全体の最適化を志向している。日本の宇宙産業の成長を左右するのは、ソフトウェア前提の産業構造をいかに設計・実装できるかにかかっている。

上記のことを踏まえると、宇宙×ソフトウェアというテーマのもと、これだけ幅広いプレイヤーが一堂に会する場は国内でも希少であり、その意義は今後さらに高まる可能性がある。次回の動向にも注目したい。

Space Day2026に参加した人の集合写真
SPACE DAY 2026 参加者の集合写真 Ⓒ株式会社Fusic

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