
2026年4月7日、スペースエントリー株式会社(以下、スペースエントリー)は、自律型宇宙ロボット「みんなのハロ」を国際宇宙ステーション(ISS)へ送り込むプロジェクト「HELLO, HARO」を発表した。
「みんなのハロ」は『機動戦士ガンダム』に登場するキャラクター「ハロ」をモチーフとしており、同キャラクターのデザインを実際に手掛けた大河原邦男氏がデザインを担当する。
本記事では、本プロジェクトの概要や特徴について整理する。
目次
HELLO, HAROプロジェクト概要
HELLO, HAROは、自律型ロボット「みんなのハロ」をISSへ打上げ、「きぼう」日本実験棟において長期にわたり運用し、様々な実証を実施するプロジェクトである。

本プロジェクトでは、クラウドファンディングなどを通じて、一般の人々に開発・試験・打上げ・宇宙での運用まで、宇宙開発のプロセスを体験できる機会を提供。
株式会社日本低軌道社中を通じて提供されるJAXAの「きぼう」有償利用制度を活用する形で実施予定で、民間主体によるISS利用の一例としても注目される。2026年春に始動し、各種試験・審査を経て同年冬に打上げが計画されており、2027年には軌道上での実証が行われる見通しである。
自律型宇宙ロボット「みんなのハロ」
IPを活用したデザイン
「みんなのハロ」は、メカニックデザイナーの大河原邦男氏が手がけた自律型宇宙ロボットであり『機動戦士ガンダム』シリーズに登場するキャラクター「ハロ」をベースに設計されている。

本プロジェクトには大河原氏に加え、バンダイナムコフィルムワークスなども協賛パートナーとして参画している。こうしたIPホルダーとの連携は、宇宙開発の文脈では比較的珍しいアプローチといえるだろう。
宇宙開発におけるIP活用は、宇宙に興味があるユーザーだけでなく、一般層への訴求や参加ハードルの低減といった効果が期待される。
機体仕様
「みんなのハロ」の機体仕様は以下の通り。

本ロボットの設計において肝となったのは、「球体デザインの維持と無重力環境における移動性・機能性の両立」であるという。
球体としての愛らしさを保ちつつ、無重力空間で効率よく移動するためのプロペラ機構や、精密なセンサー類をどう配置するか、大河原邦男氏とエンジニアチームが協働し、宇宙機としての要件を満たす形で開発が進められてきた。

誰もが参加できる3つのミッションを計画
本プロジェクトは、3つのフェーズに沿って段階的に検証を進める構成となっている。これらのミッションには、誰もが参加可能だ。
1. 地上での稼働テスト
1つ目のミッションは、地上における組立・試験・各種審査である。
ISSに搭載される機器には厳格な安全基準が求められるため、発火や破損といったリスクを抑える設計や運用が前提となる。そのうえで、[mraker]地上における各種試験や審査を通じて、宇宙環境での運用に耐えうるかが確認[/marker]される。
2. 微小重力環境での動作検証
2つ目のミッションは、ISS到達後に実施される微小重力環境での動作検証である。検証では、プロペラ推進のみで機体がISS船内を360度自由に移動できるかが試される。
微小重力環境では、地上とは異なり、わずかな力でも機体の姿勢や移動方向に影響が出る。そのため、無重力に近い環境に適した制御ができるかに加え、ISS内部という閉鎖空間で他機器や乗員への影響を抑えながら安全に運用できるかも重要なポイントとなる。加えて、長期滞在を前提とするのであれば、バッテリー管理やソフトウェアの安定性など、継続運用に関わる面もポイントとなるだろう。
3. コミュニケーションテスト
3つ目のミッションでは、コミュニケーション機能の検証が計画されている。宇宙飛行士やユーザーとのやりとりを想定した運用テストを通じて、宇宙空間における自律型ロボットの活用可能性を確かめていく。
地上側に用意した別のAI筐体を介して、『みんなのハロ』との会話や指示のやりとりを行う構想が示されている。また、地上との連携を前提とする以上、どの程度のやりとりが実運用で成立するのかも、今後の注目点となりそうだ。
プロジェクトの特徴
民間主導によるISSロボット開発
これまでISSに搭載されるロボットや機器の多くは、JAXAやNASAといった政府機関、あるいはその主導のもとで開発されてきた。代表例としては、JAXAの船内ドローン「Int-Ball」などが挙げられるが、いずれも公的プロジェクトとして設計・運用されている。
一方で本プロジェクトは、ミッション設計・開発・運用を民間主体で実施する構造を採っている。これは、スペースエントリー調べによると世界初のケースだ。このような動きは、ISSの商業化やポストISS時代に向けた民間宇宙ステーション構想とも連動するものであり、今後はロボットやサービスがさらに増加する可能性がある。
汎用OS(ゼファー)の活用
従来、宇宙機のソフトウェアは高い信頼性と耐環境性が求められることから、専用設計や独自仕様が前提となるケースが多く、開発には長期間と高コストを要してきた。
これに対し、「みんなのハロ」では自動車やPC、エッジAIなど高い信頼性が求められる産業で注目を浴びている汎用OSの「ゼファー(Zephyr)」を採用。スペースエントリーは同OS採用のプロセスを公表していくことで、宇宙ロボット開発における地上の開発エコシステムや人材活用の道筋を示していく考えだ。
一方で、宇宙環境における放射線耐性やリアルタイム制御、安全性要件との整合性といった課題に対し、どの程度まで信頼性を担保できるかは今後の検証ポイントとなるさろう。
クラウドファンディングを通した参加型企画
本プロジェクトでは、 クラウドファンディングを通じて資金を募ると同時に、開発プロセスへの参加機会が提供されている。募集開始は2026年4月14日(火)午前7時スタート予定だ。

目標金額300万円のもと、5,000円〜60,000円の価格帯で参加が可能とされており、リターンにはハロ内部の記憶装置への名前搭載や組立作業の体験、各種試験の舞台裏の共有など加え、ステッカーやアパレルなどがある。
従来の宇宙開発は、資金の出し手と利用者が分離した構造が一般的だったが、本プロジェクトでは出資者が開発過程に関与できる点が特徴だ。詳しくはプロジェクトページをチェックしていただきたい。
さいごに
「HELLO, HARO」は、ISSを活用したロボット実証にとどまらず、民間主導・IP活用・参加型モデルを組み合わせたプロジェクトだ。
ISSの商業利用が進む中で、ロボットやサービスがどのような形で提供されていくのか、さらにはポストISS時代の民間宇宙ステーションにおいて同様のモデルが拡張されるのかも注目される。
一方で、こうした取り組みが、継続的な事業として成立するかは今後の焦点となるだろう。
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