
2026年9月29日、株式会社アクセルスペース(以下、アクセルスペース)は、次世代地球観測衛星「GRUS-3」7機のうち4機で、高速通信系統に不具合が発生したと発表した。
同社は、該当する4機について、高速通信系統の復旧と予定していた商用運用が困難と判断。残る3機は、品質確認を行いながら初期運用を続けている。
本記事では、不具合の内容と衛星ごとの状況、GRUS-3が担う地球観測事業、今後の対応について解説する。
GRUS-3の4機で高速通信系統に不具合
今回の発表では、画像データの伝送に関わる不具合と、衛星ごとの運用状況が示された。
画像データを地上へ送る通信系統に異常
問題が確認されたのは、GRUS-3B、3E、3F、3Gの4機である。商用サービスの開始に向けた初期運用の中で、撮影した画像データを地上へダウンロードする高速通信系統に異常が見つかった。
初期運用は、搭載した各機器の状態を確かめ、サービス提供に向けた準備を進める段階である。異常の発生後、同社は高速通信系統を正常に動作させるための確認や復旧作業を続けていた。
しかし、9月28日のコンプライアンス・リスク管理委員会で、高速通信系統の復旧と予定していた商用運用は困難との結論が報告された。同社はこの報告を受け、翌29日に不具合を公表した。
残る3機は商用運用に向けた確認を継続
9月29日の発表時点で、GRUS-3A、3C、3Dでは同じ事象は確認されていない。同社は、この3機の初期運用を引き続き進めている。
商用サービスの開始に向けては、品質保証のための確認を慎重に実施しているという。9月29日の発表では、これら3機の商用運用を開始する具体的な時期は示されていない。
| 対象衛星 | 公表された状況 |
|---|---|
| GRUS-3B・3E・3F・3G | 高速通信系統に不具合。復旧と予定していた商用運用は困難 |
| GRUS-3A・3C・3D | 同じ事象は未確認。初期運用と品質確認を継続 |
GRUS-3とはどのような衛星か
7月7日に7機を打ち上げ
GRUS-3は、同社の地球観測データ提供事業「AxelGlobe(アクセルグローブ)」で使用する光学観測衛星である。
7機は2026年7月7日、SpaceXのFalcon 9による相乗りミッション「Transporter-17」で打ち上げられ、すべての衛星から最初の電波を受信した。
続く7月10日には、軌道上で衛星の健全性を確認するクリティカル運用を正常に完了。2026年中の商用サービス開始を目指し、搭載機器の状態や性能を確認する初期運用へ移行していた。
GRUS-3は7機で「1日1回」の観測を目指していた
GRUS-3の地上分解能は2.2m、1機あたりの観測幅は28.3km。アクセルスペースは7機を連携して運用することで、北緯25度以上の地点を1日1回観測し、合計で1日最大230万km²を撮影する能力を見込んでいた。
衛星の数を増やして観測頻度を高めることで、農地や森林、都市などの変化を継続的に捉えやすくなる。同社は9月2日時点で、運用中のGRUS-1の4機とGRUS-3を合わせ、10機以上の衛星コンステレーションへ拡充する計画も示していた。
しかし今回、GRUS-3の7機のうち4機で予定していた商用運用が困難と判断された。残る3機は初期運用を続けており、今後の観測体制やコンステレーション拡充への影響が注目される。

原因究明と今後の運用が焦点に
電力増幅回路の不具合を調査
アクセルスペースは、通信系統内の電力増幅回路の不具合が原因とみて、詳細な原因究明を進めている。
電力増幅回路は、衛星から地上へデータを送信する際に、通信信号の電力を高める役割を担う。今回不具合が発生した高速通信系統は、GRUS-3が撮影した画像データを地上へダウンロードするために使われる。
同社は今回の問題を受け、衛星の開発プロセスを見直し、今後打ち上げる衛星の品質と信頼性を高めるための施策を検討する方針だ。
画像提供事業の拡大をどう進めるか
GRUS-3は、アクセルスペースが衛星画像の提供能力を高め、事業を拡大していくうえで重要な役割を担う計画だった。
同社は2026年5月時点で、GRUS-3の画像やサービスの商用利用に関心を示す国内外25社以上と意向証明書(LOI)を締結。9月にはAirbus Defence and Spaceとの衛星画像販売に関する提携も発表するなど、GRUSの画像をより幅広い顧客や用途へ提供する取り組みを進めている。
こうした需要に応えるには、観測能力だけでなく、必要な衛星を継続的に開発・製造していく体制も欠かせない。GRUS-3では、アクセルスペースとして過去最多となる7機を並行して製造・試験しており、そこで得た経験やノウハウは今後の衛星量産を進めるうえでの蓄積となるだろう。
今回4機で不具合が発生した一方、残る3機の商用運用に向けた確認や原因究明、開発プロセスの見直しも進められている。GRUS-3で得た製造・運用の経験を今後の衛星開発に生かし、画像の供給能力をどのように高めていくかが、事業拡大に向けたポイントとなるだろう。
さいごに
GRUS-3では、7機のうち4機で高速通信系統の不具合が確認され、予定していた商用運用が困難となった。一方、残る3機では同様の事象は確認されておらず、商用運用に向けた初期運用が続いている。
アクセルスペースは原因究明と開発プロセスの見直しを進める方針だ。GRUS-3で得た7機同時開発の経験も生かしながら、今後どのように衛星画像の供給能力を高め、地球観測データ提供事業の拡大につなげていくのかが注目される。
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