
2026年11月3日、株式会社QPS研究所(以下、QPS研究所)が開発・運用する小型SAR(合成開口レーダー)衛星QPS-SAR20号機「ワダツミ-Ⅱ」が、米Rocket Labの小型ロケット「Electron」によって打ち上げられた。
本記事では、今回の打ち上げ結果に加え、「ワダツミ-Ⅱ」が配置される軌道や愛称の由来、後続衛星の打ち上げと衛星コンステレーション構築の計画について解説する。
QPS-SAR20号機「ワダツミ-Ⅱ」の打ち上げに成功
Electronによる専用打ち上げを実施
「ワダツミ-Ⅱ」は、2026年11月3日1時41分(日本時間)、ニュージーランド・マヒア半島にあるRocket Lab Launch Complex 1から打ち上げられた。
今回のミッションは、衛星の愛称にちなんで「The Sea God Surveys(海の神が見渡す)」と名付けられ、「ワダツミ-Ⅱ」1機を搭載する専用打ち上げとして実施された。QPS研究所の衛星をElectronで打ち上げるミッションは、今回が10回目となる。
「ワダツミ-Ⅱ」は、打ち上げから約50分後にロケットから分離し、その約30分後には初交信にも成功した。QPS研究所は、搭載機器の正常な動作と、衛星の良好な健康状態を確認したと発表している。

SAR(合成開口レーダー)衛星は、地表に電波を照射し、その反射波を解析することで地表の状態を観測する衛星。太陽光を必要とせず、雲や雨などの影響も受けにくいため、昼夜や天候を問わず観測できる点が特徴。
衛星番号は打ち上げ契約の手続き順
QPS研究所の衛星番号は、実際の打ち上げ順ではなく、ロケットの打ち上げ契約手続きを行った順に付与されている。
このため、今回の20号機「ワダツミ-Ⅱ」は、16・17・19号機に先行して打ち上げられた。同社は、こうした順番の前後は事業の進捗に影響しないとしている。

「ワダツミ」の軌道面に2機目を追加
10号機「ワダツミ-Ⅰ」と同じ軌道面へ
「ワダツミ-Ⅱ」は、10号機「ワダツミ-Ⅰ」と同じ軌道面に投入する2機目の衛星である。
QPS研究所では、日本神話の神々に由来する愛称を衛星に付けている。商用機となる3号機以降は、同じ軌道面に配置する衛星に共通の愛称を付けており、20号機にも「ワダツミ」の名が引き継がれた。
軌道面とは、衛星が地球の周りを回る軌道を含む平面のことである。同じ軌道面でも、衛星の位置が異なれば対象地域を観測できるタイミングが異なるため、複数機の配置は観測機会の増加につながる。
海や港湾、街を見守る思いを込めたマーク

愛称の「ワダツミ」は、日本神話で海上守護や交通安全などを司る神に由来する。
衛星のミッションマークは、QPS研究所のコーポレートカラーであるブルーを基調に、波と海をモチーフとしている。大海原を航行する船舶や、大都市圏の港湾、街を見守るという思いが込められた。
また、「ワダツミ-Ⅱ」のマークには、先に打ち上げられた「ワダツミ-Ⅰ」が描き込まれている。
同じ軌道面に配置される2機の関係を、デザインでも表している。
一方、Rocket Labの打ち上げミッションのパッチには、海を司る龍神が描かれている。パッチ内の星は、これまでElectronで打ち上げられたQPS-SARの数を表している。

11月10日以降には「ヤマツミ-Ⅱ」も打ち上げ予定
QPS研究所は、「ワダツミ-Ⅱ」に続き、2026年11月10日以降にQPS-SAR19号機「ヤマツミ-Ⅱ」を打ち上げる予定としている。
使用するロケットは同じくElectronで、ニュージーランド・マヒア半島のLaunch Complex 1から、高度575kmの中傾斜軌道への投入を目指す。
「ヤマツミ-Ⅱ」は、11号機「ヤマツミ-Ⅰ」と同じ軌道面に配置される2機目の衛星となる。ミッション名は「The Mountain God Rises(山の神が昇る)」で、打ち上げミッションのパッチには、愛称にちなんだ富士山が描かれている。
計画どおりに進めば、11月は「ワダツミ」と「ヤマツミ」の2つの軌道面で、それぞれ衛星の追加が進むことになる。
2028年5月末までに24機体制へ
平均約10分間隔の準リアルタイム観測を目指す
QPS研究所は、2028年5月末までに24機のQPS-SARを配置する計画を進めている。さらに、2030年には衛星数を増やし、大規模な衛星コンステレーションによる平均約10分間隔の準リアルタイム観測データ提供サービスを目指す。
同社はこれまで、1つの軌道面に3機ずつ、12の軌道面に計36機を配置する構想を進めてきた。現在は、拡大するデータ需要に対応するため、独自の傾斜軌道を軸として、さらに大規模なコンステレーションへ計画を拡張している。
平均約10分間隔という目標は、衛星群全体で実現を目指す観測頻度であり、今回の1機の追加だけで達成されるものではない。後続衛星の打ち上げと、それぞれの初期運用・観測への移行を積み重ねていくことが必要となる。
災害対応やインフラ監視への活用に期待
SAR衛星は、地表に電波を照射し、その反射波を解析することで地表の状態を観測する。太陽光を必要とせず、雲などの影響も受けにくいため、昼夜や天候に左右されにくい点が特徴である。
こうした観測は、災害発生時の状況把握をはじめ、インフラ監視、海洋監視、安全保障などへの活用が期待されている。
災害対応では、被災地域の状況が時間とともに変化するため、異なる時点の観測データを比較することが重要となる。衛星コンステレーションによって繰り返し観測する体制を整えることは、こうした変化を把握するための基盤となる。
さいごに
QPS-SAR20号機「ワダツミ-Ⅱ」は、Electronによる打ち上げに成功した。今後は初期運用の進捗に加え、11月10日以降に予定される「ヤマツミ-Ⅱ」の打ち上げが注目される。
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参考
- QPS研究所:「ワダツミ-Ⅱ」の打ち上げ日時について
- QPS研究所:「ワダツミ-Ⅱ」のミッション・衛星概要
- QPS研究所:「ヤマツミ-Ⅱ」の打ち上げ予定について
- Rocket Lab:「The Sea God Surveys」ミッション















