
2026年10月14日、小型SAR衛星の開発・運用事業を行う株式会社QPSホールディングスは、2027年5月期第1四半期(Q1)決算を発表した。
本記事では、最新決算のポイントと事業の進捗について整理する。
QPSホールディングスの概要
QPSホールディングスは、福岡市に本社を置き、小型SAR(合成開口レーダー)衛星事業を展開するQPS研究所を中核子会社とする持株会社である。
QPS研究所は、九州大学発の宇宙ベンチャーとして、小型SAR衛星※「QPS-SAR」の開発・製造から運用、衛星画像データの販売までを一貫して手がける。
地表に向けて電波を照射し、その反射波から画像を生成する人工衛星。天候や昼夜に左右されず地表を観測できる特性を持ち、災害対応やインフラ監視、安全保障など、幅広い分野での活用が期待されている。
同社グループは、複数の小型SAR衛星を連携させて地球を高頻度で観測する衛星コンステレーションの構築を推進している。従来は36機による衛星網の構築を計画していたが、世界的な観測データ需要の拡大を受け、36機を超える規模へ計画を拡大。
また、衛星の量産や打ち上げ機会の確保を進めるとともに、衛星間通信や軌道上画像化技術の商用化を目指す。観測頻度の向上とデータ提供時間の短縮を通じ、衛星画像データ事業の拡大を図る方針である。

QPSホールディングスの決算内容|2027年5月期第1四半期決算
第1四半期決算概要
QPSホールディングスが発表した2027年5月期第1四半期決算(2026年6月~8月)では、売上高が18億9,500万円、営業利益が5億9,400万円となった。

前年同期にあたる2026年5月期第1四半期のQPS研究所の売上高は4億2,500万円であり、今回の売上高はその約4.5倍に相当する。
また、前年同期のQPS研究所は4億1,000万円の営業赤字だったが、今回は営業黒字となった。
※前年同期との比較には、持株会社設立前のQPS研究所の非連結決算数値を使用している。
売上高の拡大と営業損益の黒字転換
QPSホールディングスグループの収益は、主にSAR衛星による画像データ提供と、衛星の開発・調査研究による売上高から構成される。
今回、売上高が拡大した主な要因は、防衛省が進める「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」における画像データ提供収入の増加である。
画像データ提供による売上高は、前年同期の3億2,500万円から17億6,400万円へ増加。一方、開発・調査研究による売上高は1億3,100万円となり、関連案件は第2四半期以降に主に進捗する見通しである。
費用面では、衛星の運用機数増加に伴う減価償却費や通信費、研究開発費などが増加した。売上原価は前年同期の5億9,400万円から9億3,300万円、販売費および一般管理費は2億4,100万円から3億6,600万円へ増加したが、売上高の伸びが費用の増加を上回り、営業黒字への転換につながった。
2027年5月期の営業利益予想を上方修正
QPSホールディングスは今回の決算発表に合わせ、2027年5月期の通期連結業績予想を修正し、営業利益などを上方修正した。売上高予想は従来の100億円を据え置いた一方、営業利益は3億円から20億円、経常利益は20億円から32億円、当期純利益は19億円から27億円へ引き上げた。

主な要因は、衛星の減価償却費が当初計画を下回る見込みとなったことと、研究開発費の計上時期が変更されたことである。
衛星の減価償却費については、実際の稼働時期に合わせて費用を計上するため、当初計画より減少する見込みとなった。また、経済産業省のSBIR事業に関連する研究開発費についても、計上時期が来期以降にずれ込むことで、当期の費用が12億円減少する見通しである。
一方、研究開発費の減少に伴い、SBIR事業による補助金収入も当初計画から5億円減少する。これにより、売上高と補助金等の営業外収益を合計した事業収益は、従来予想の120億円から115億円へ下方修正された。
財務状況と衛星への先行投資
QPSホールディングスの2027年5月期第1四半期末(2026年8月末)における総資産は427億2,400万円となり、前期末から約2.6億円増加した。
現金および預金は前期末の212億4,800万円から189億8,300万円へ約22.7億円減少した。一方、固定資産は190億1,900万円から211億6,400万円へ約21.5億円増加した。
固定資産の増加は、主に人工衛星の資産計上額が約12.9億円、建設仮勘定が約5.7億円増加したことによるもので、衛星コンステレーション構築に向けた先行投資が資産の増加に表れている。
また、純資産は前期末の316億8,000万円から322億200万円へ増加した。主な要因は、当期純利益4億8,000万円の計上と、新株予約権の行使に伴う新株発行による資本金・資本剰余金の増加である。
なお、同社グループは2026年8月末時点で約189.8億円の現預金を保有しており、今後も宇宙戦略基金による交付金やシンジケートローンを活用し、衛星コンステレーションの構築を進める方針である。

事業の進捗と今後の計画
2026年8月に小型SAR衛星2機の打ち上げに成功
QPS研究所は2027年5月期第1四半期に、2機の小型SAR衛星を新たに打ち上げた。
2026年8月6日には、QPS-SAR13号機「ミクラ-Ⅰ」を米Rocket LabのElectronロケットで打ち上げ、衛星分離と初交信に成功。続く8月20日には、QPS-SAR18号機「スサノオ-Ⅱ」の打ち上げにも成功した。
両衛星はその後、初期運用と試験観測を進め、13号機は9月1日、18号機は9月11日に初画像(ファーストライト)を公開した。2026年10月14日時点では、両衛星とも初期運用中であり、商用運用の開始には至っていない。
現在、QPS研究所は初期運用中の2機を含む計11機の小型SAR衛星を軌道上で運用しており、衛星コンステレーションの拡大を進めている。
11月には19号機・20号機の打ち上げを計画
QPS研究所は2026年10月13日、QPS-SAR19号機「ヤマツミ-Ⅱ」と20号機「ワダツミ-Ⅱ」の打ち上げ予定を発表した。
20号機は2026年11月4日以降、19号機は11月10日以降に、それぞれRocket LabのElectronロケットで打ち上げられる予定だ。両衛星ともに、高度約575kmの中傾斜軌道への投入が計画されている。なお、QPS-SARの号機番号は打ち上げ契約の手続き順に付与されているため、実際の打ち上げ順とは一致しない場合がある。今回も16・17号機に先行して、19・20号機を打ち上げる計画となっている。
大規模コンステレーション構築と画像データ事業を拡大
2027年5月期には7機を打ち上げ、期末までに運用機数を16機とする計画である。また、2028年5月期末までに24機、2030年には36機体制の構築を目指すほか、世界的な観測データ需要の拡大を受け、36機を超える規模への拡張も計画している。
衛星の打ち上げ機会の確保も進んでおり、2026年9月には三菱重工業とH3ロケットによる小型SAR衛星3機分の相乗り打ち上げ契約を締結。2026年10月時点で、計14機分の打ち上げ契約を締結している。
また、フランスのMaiaSpaceとも2029年以降の打ち上げサービスに関する基本合意を締結し、打ち上げ手段の多様化を進めている。
さらに、次世代SAR衛星の開発では、衛星間通信や軌道上画像化技術の商用化を目指す。これらの技術により、衛星への観測指示や取得データの処理・送信を効率化し、観測から画像データ提供までの時間短縮を図る。
画像データの活用領域の拡大に向けては、2026年9月にイタリアのe-GEOSと複数年にわたる戦略的協業を開始した。
本協業では、e-GEOSがQPS-SARの画像データを一部の顧客向けに、QPS研究所がイタリアのSAR衛星「COSMO-SkyMed」の画像データを、それぞれ非独占的に提供・販売。
さらに、両社の衛星データを組み合わせることで、観測頻度や対象範囲を拡大し、災害対応や鉱業活動、インフラ監視などに活用できる情報提供・解析サービスの共同開発に取り組む。
さいごに
QPSホールディングスの2027年5月期第1四半期決算では、売上高が18億9,500万円となり、営業利益は5億9,400万円の黒字を確保した。防衛省向けの画像データ提供が増収をけん引し、前年同期のQPS研究所の営業赤字から黒字へ転換した。
また、2027年5月期の通期営業利益予想を従来の3億円から20億円へ上方修正した。ただし、今回の上方修正には、衛星の減価償却費が当初計画を下回る見込みとなったことや、研究開発費の計上時期が来期以降にずれ込む影響も含まれている。今後も衛星コンステレーション構築に向けた先行投資が続くことから、費用の推移や資金の使用状況が注目される。
事業面では、8月に2機の小型SAR衛星の打ち上げに成功し、11月にはさらに2機の打ち上げを予定している。防衛省向け事業を着実に進めながら、海外政府や民間企業向けの画像データ販売をどこまで拡大できるかが、中長期的な成長における重要なポイントとなる。
同社グループは現在、様々なポジションで人材を募集している。興味のある方は業界特化型の転職プラットフォーム「スペジョブ」をぜひチェックしていただきたい。

参考
※本記事は、公開されている決算資料やIR情報をもとに、企業の事業動向を整理することを目的としたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、投資助言を目的としたものでもございません。














