
2026年9月19日、NASAは、国際宇宙ステーション(ISS)への有人輸送を担うSpaceXに対し、3便を追加発注したと発表した。
追加されるのは「Crew-15」「Crew-16」「Crew-17」で、契約額は関連サービスを含めて9億4,600万ドル。1ドル150円で換算すると約1,419億円となる。
本記事では、追加契約の内容やBoeingの宇宙船「Starliner」との差を解説する。
NASA、SpaceXにCrew-15〜17を追加発注
契約の概要
NASAは2014年、民間企業の宇宙船を使ってISSへ宇宙飛行士を輸送するため、SpaceXと有人輸送契約を結んだ。この契約は「Commercial Crew Transportation Capability(CCtCap)」と呼ばれる。今回、NASAはこの契約に、「Crew-15」「Crew-16」「Crew-17」の3便を追加した。
当初の契約は、SpaceXの有人宇宙船「Crew Dragon」のNASA認証に必要な開発・試験と、認証取得後のISS有人輸送2〜6便をSpaceXに任せる内容だった。その後、NASAはISSの運用計画に応じて追加発注を重ね、今回の発注前までに対象はCrew-14までの計14便に拡大していた。
今回、新たに3便と関連サービスを追加したことで、SpaceXへの発注は計17便、CCtCap契約の総額は59億2,000万ドルとなった。主な契約内容は以下の通りである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 追加ミッション | Crew-15、Crew-16、Crew-17 |
| 追加契約額 | 9億4,600万ドル(約1,419億円) |
| 実施準備が整う時期 | 2027〜2028年 |
| 契約期間 | 2030年まで |
| SpaceXへの発注数 | 計17便 |
| SpaceXとのCCtCap契約総額 | 59億2,000万ドル(約8,880億円) |
※日本円は1ドル150円で換算。
追加契約に含まれるサービス内容
追加契約の9億4,600万ドルには、Crew-15〜17の3便について、地上での準備、打ち上げ、軌道上での運用、地球への帰還、宇宙船と乗員の回収まで、一連のサービスが含まれる。
SpaceXは、自社で開発するFalcon 9ロケットとCrew Dragon宇宙船を使い、1便あたり最大4人の宇宙飛行士と重要な貨物をISSへ輸送する。
Crew DragonはISSへの到着後も接続した状態で待機し、滞在中に緊急事態が発生した際には、宇宙飛行士が地球へ退避するための宇宙船として機能する。


Boeing「Starliner」との差が拡大
NASAは2014年、米国からISSへの有人輸送を担う事業者として、SpaceXとBoeingの2社を選定した。異なる企業が開発した宇宙船とロケットを確保し、一方の輸送手段に問題が生じても、もう一方でISSへの輸送を続けられる体制を構築するためである。
Crew Dragonは2020年にNASAの認証を取得
SpaceXのCrew Dragon宇宙船とFalcon 9ロケットで構成される有人輸送システムは2020年11月、ISSへの有人輸送に必要なNASAの認証を取得した。
その後、ISSの定期的な乗員交代に使用されており、2026年9月18日の発表時点では、12回目の乗員交代ミッション「Crew-12」が軌道上でISSに接続している。
StarlinerはNASAの認証取得前
一方、Boeingの有人宇宙船「Starliner」は2024年に有人飛行試験を実施したものの、飛行中に確認された技術的な問題への対応が続いており、定期的な乗員交代ミッションに必要なNASAの認証をまだ取得していない。
NASAとBoeingは2025年11月に契約を見直し、確定発注を4便とし、残る2便を追加発注可能な選択肢とした。
確定した4便のうち最初の「Starliner-1」は、宇宙飛行士を乗せずに貨物をISSへ運ぶ計画である。2024年の有人飛行試験後に施した改修を軌道上で確認し、NASAの認証取得につなげる。Starliner-1の成功と認証取得後には、最大3回の有人ミッションを実施する想定だ。
ただしNASAは2026年5月時点で、2024年の飛行試験で判明した技術的な問題への対応や調査報告に基づく作業を続けており、Starliner-1の打ち上げ時期を検討中としている。
NASAは、Starlinerの遅れを今回のSpaceXへの追加発注の直接的な理由とは説明していない。それでも、Crew Dragonが認証取得後の定期運用を重ねる一方、Starlinerは認証に向けた無人飛行を控える段階にある。NASAが目指す2つの輸送手段による体制が整うまで、SpaceXがNASAの米国発ISS有人輸送を事実上単独で担う状況が続く。
Crew Dragonの運用実績はISS退役後も強みに
今回の追加発注は、SpaceXがCrew Dragonの運用実績をさらに積み上げ、ISS退役後に見込まれる民間宇宙ステーション向け輸送市場で、同社の競争力を高める要素になると考えられる。
NASAはISSを2030年まで運用する計画で、これと並行して、ISS退役後の活動拠点を民間企業が所有・運営する宇宙ステーションへ移す準備を進めている。移行後、NASAは民間事業者が提供する滞在や研究などのサービスを購入する顧客の一つとなる方針である。
民間宇宙ステーションとしては、Axiom StationやOrbital Reef、Starlabなどの計画が進められている。NASAは、こうした軌道上の施設に加え、宇宙飛行士や貨物の輸送も民間事業者から購入できる市場の形成を目指している。
輸送事業者を選ぶ際には、安全性や継続的な運用能力を示す実績が重要となる。Crew-15〜17を含むISSへの定期輸送は、SpaceXが将来の輸送契約を獲得するうえでの競争力を支える材料となるだろう。
さいごに
NASAによるCrew-15〜17の追加発注は、Crew Dragonが米国発のISS有人輸送を支える中心的な存在となっていることを示している。SpaceXは打ち上げだけでなく、地上準備や軌道上運用、帰還、乗員回収、ISS接続中の緊急退避機能まで一貫して担う。
今回の契約は、2030年まで続くISSの有人運用を支えるとともに、Crew DragonとStarlinerの運用状況の差を改めて示すものとなった。
ISS退役後には、民間宇宙ステーションへの有人・貨物輸送が新たな市場となる。Crew-15〜17を通じてSpaceXが積み重ねる実績は、将来の輸送市場における同社の競争力を判断する重要な材料になると考えられる。
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