
2026年10月28日(現地時間)、米国の宇宙スタートアップ企業Rendezvous Robotics(以下、Rendezvous)は、トヨタの投資会社Toyota Venturesなどが主導する資金調達ラウンドで、2,000万米ドルを調達したと発表した。
同社は、宇宙空間で複数の小型モジュールを自動的に結合し、大型の宇宙機を構築する技術を開発している。2028年には、7つのモジュールを軌道上で結合・分離し、別の形に組み替える実証を計画している。
本記事では、資金調達の概要や宇宙機の自動組み立て技術、今後の実証計画について解説する。
トヨタ系投資会社らが主導、2,000万ドルを調達
Rendezvous Roboticsとは
Rendezvousは、米国コロラド州ゴールデンに本社を置く宇宙スタートアップ企業である。2024年に設立され、宇宙空間で自動的に組み立て・再構成できる宇宙機の開発を進めている。
同社の技術は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で始まった宇宙構造物の自動組み立て研究「TESSERAE」を基盤としている。
TESSERAEは、複数の小さなパネル状の部品を磁力などで結合し、宇宙空間で大型構造物を形成する技術である。これまでにBlue Originのロケット「New Shepard」や国際宇宙ステーション(ISS)で技術実証が行われてきた。
Rendezvousは、こうした研究成果を発展させ、通信衛星や観測衛星などに利用できる、実用的な宇宙機の自動組み立て技術の開発を目指している。
Toyota Venturesなどが資金調達を主導
今回の資金調達は、スタートアップ企業の初期段階を対象とするシードラウンドとして実施された。
調達額は2,000万米ドルで、米国の投資会社MaC Venture Capitalと、トヨタの投資部門であるToyota Venturesが共同で主導。
ほかにも、ミシガン大学の基金や、民間宇宙ステーションを開発するVastの創業者が共同設立したAstera、SpaceXなどへの投資実績を持つIndustrious Venturesなどが参加した。
調達した資金は、次世代宇宙機の開発や飛行実証、人員体制の拡充などに活用される予定だ。

Toyota Venturesが宇宙開発企業に出資する背景
Toyota Venturesは宇宙・AIなどの先端技術に投資
Toyota Venturesは、2017年に設立された米国カリフォルニア州に拠点を置くトヨタ系投資会社である。
トヨタは、事業との連携を重視する「Toyota Invention Partners」、成長段階の企業に投資する「Woven Capital」、先端技術の初期段階に投資する「Toyota Ventures」の3社で役割を分担している。
Toyota Venturesは、AI(人工知能)、宇宙、素材、水素、再生可能エネルギーなどの先端技術を持つ、創業初期のスタートアップ企業への投資を担当。現在の自動車事業に直接関係する技術だけでなく、将来の新たな産業や市場につながる技術も投資対象としている。
宇宙分野では、再使用型ロケットを開発するStoke Spaceや、人工衛星の機体部分を開発・量産するApex、衛星の寿命延長や宇宙ごみの除去に取り組むStarfish Spaceなどへの出資実績がある。
今回のRendezvousへの出資も含めると、Toyota Venturesの宇宙分野への投資は、ロケットや衛星の開発から、打ち上げ後の宇宙機の運用・機能拡張に関わる技術まで幅広く及んでいる。
Toyota VenturesがRendezvousを評価した理由
今回の出資について、Toyota VenturesのパートナーであるChris Abshire氏は、宇宙機の自律性が単なる追加機能ではなく、設計の根幹となっている点を評価している。
従来の人工衛星は、地上で組み立てた機体をロケットで打ち上げることを前提に設計されている。一方、Rendezvousは宇宙空間での自動組み立てを前提としており、打ち上げ後に宇宙機の構成を変更できる点が特徴である。
Abshire氏は、個々のモジュールが自律的に移動・結合し、軌道上で再構成できる技術について、宇宙機の設計者や運用事業者に新たな選択肢をもたらす可能性があると説明。また、ロボット技術、モジュール化、自律制御を組み合わせた技術にも大きな可能性を見いだしている。
Rendezvousの技術がもたらす3つのメリット
Rendezvousが開発する技術は、六角形の小型モジュールを宇宙空間で自動的に組み立て、一つの宇宙機を構築するものである。
各モジュールは、電磁石の力を利用して互いの位置を調整し、機械的な結合機構によって連結する。結合後は、モジュール間で電力やデータをやり取りできる。
この技術によって、従来の人工衛星が抱える設計・運用上の制約に対応し、主に3つのメリットが期待される。

① 大型化による人工衛星の高性能化
1つ目に、ロケットの収納寸法を超える大型の宇宙機を構築し、通信能力や発電能力などの向上につなげられる点である。
従来の人工衛星は、ロケット先端の「フェアリング」と呼ばれる保護カバーの内部に収める必要があり、大きさや形状に制約がある。
一方、Rendezvousの技術では、小型のモジュールを宇宙空間で結合することで、ロケットに収納できる寸法を超える構造物の形成を目指している。
これにより、より大きな通信アンテナや太陽電池パネル、放熱設備などを備えた宇宙機の開発が可能となり、通信能力や発電能力、計算性能の向上が期待される。
② 打ち上げ後の機能の追加・変更
2つ目に、打ち上げ後も、ミッションの目的や需要の変化に合わせて宇宙機の機能を追加・変更できる点である。
従来の人工衛星は、搭載する機器や機能を基本的に打ち上げ前に決定する必要があり、軌道上で構成を変更することは容易ではない。
一方、Rendezvousが開発する宇宙機は、複数のモジュールを結合・分離できるため、打ち上げ後に新たなモジュールを追加したり、異なる構成に組み替えたりすることを目指している。
例えば、通信需要の増加に合わせてアンテナや電力供給用のモジュールを追加するなど、運用状況に応じた機能拡張が考えられる。
③ 故障した機器の交換や衛星の長寿命化
3つ目に、故障した機器を含むモジュールの交換や、残ったモジュールの再構成によって、宇宙機の運用を継続できる可能性がある点である。
人工衛星は、宇宙空間で故障が発生した場合、地上から直接修理することが難しい。一部の機器が故障しただけでも、衛星全体の機能に影響する可能性があり、代替衛星の打ち上げが必要になるケースもある。
Rendezvousの技術では、故障した機器を含むモジュールだけを交換したり、残ったモジュールのみで衛星を再構成したりすることで、衛星全体を新たに製造・打ち上げる必要性を減らすことができる。
こうした運用が実現すれば、人工衛星の長寿命化に加え、代替衛星の製造・打ち上げに伴う費用の削減にもつながる可能性がある。
Rendezvousの技術は何に使われる?
Rendezvousは、自動組み立て技術の活用先として、衛星通信、防衛、宇宙空間での大規模な計算設備などを挙げている。

大型アンテナによる衛星とスマートフォンの直接通信
通信分野では、宇宙空間で大型アンテナを構築し、人工衛星とスマートフォンなどの携帯端末を直接つなぐ通信サービスへの活用を想定。
衛星と地上の携帯端末が直接通信する場合、遠く離れた端末との間で電波を送受信する必要があるため、衛星側のアンテナ性能が重要となる。
Rendezvousの技術により、複数のモジュールを軌道上で結合することでキロメートル規模の大型アンテナを構築し、通信性能を高められれば、スマートフォンと衛星を直接つなぐ通信サービスの拡大につながる可能性がある。
防衛分野での情報収集・監視・通信
防衛分野では、大型の観測・通信設備を宇宙空間に構築し、情報収集・監視・偵察(ISR)やミサイル追跡、安全性の高い通信などに活用することを想定。
例えば、より大きなアンテナや観測設備を軌道上に構築することで、微弱な信号の受信能力や観測性能を高められる可能性がある。
また、複数のモジュールを組み合わせる方式は、防衛任務に必要な機能の追加や、運用中の構成変更にも応用が考えられる。
宇宙データセンターの構築
宇宙空間でAIによるデータ処理や大規模な計算を行う「宇宙データセンター」の構築も、Rendezvousの自動組み立て技術が期待される用途の一つである。
宇宙データセンターには、GPU(画像処理やAIの計算に用いる半導体)などを備えた計算設備に加え、大量の電力を供給する太陽電池や、機器から発生する熱を宇宙空間へ逃がす放熱設備が必要となる。
Rendezvousと宇宙データセンターを開発する米Starcloudは2025年10月に協力覚書を締結しており、宇宙空間での自動組み立て技術を活用し、ギガワット級の大規模なデータセンターや電力設備の実現を目指している。
2028年に宇宙機の自動組み立て・再構成を実証へ
2026年には微小重力環境での試験を予定
Rendezvousは、2028年の軌道上実証に先立ち、2026年にも複数の試験を計画している。
2026年11月には、航空機による放物線飛行を利用し、微小重力環境での電磁石による動作制御やモジュールの移動性能を検証する予定である。
さらに同年12月には、ISSで第5世代のTESSERAE技術を使用した実証を計画。32枚のパネル状モジュールを使用し、ISS内の管理された微小重力環境で三次元構造物を自動的に組み立てることを目指す。
これらの試験を通じ、宇宙空間での自動組み立てに必要な技術を段階的に検証していく。
2028年には7つのモジュールを軌道上で結合
2028年には、地球低軌道で次世代宇宙機の実証ミッションを実施する計画である。
実証では、独立して展開された7つの宇宙機モジュールが自動的に移動・結合し、一つの宇宙機を形成する。さらに、結合したモジュールを一度分離させたうえで、異なる形状に再構成する試験も行う。
これまでのTESSERAE研究では、ISS内などの管理された微小重力環境で技術検証が進められてきた。
これに対し、2028年のミッションでは、宇宙空間に独立して展開されたモジュールによる自動組み立てを検証する。
外部のロボットアームなどを使用せずに、一つの宇宙機を形成し、再構成できるかが重要な検証項目となる。
さいごに
Rendezvousが開発する宇宙機の自動組み立て技術は、ロケットの収納寸法による制約を緩和し、打ち上げ後の機能追加や構成変更を可能にするものとして期待されている。
今回の資金調達にはToyota Venturesも参画しており、トヨタ系投資会社による宇宙分野への投資の広がりもうかがえる。
2028年に予定される軌道上実証で、自動組み立て・再構成技術の有効性を示せるかが、今後の実用化に向けた重要なポイントとなるだろう。
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