
2026年9月25日、Terra Drone(テラドローン)は、JAXAが進める「災害・緊急時等に活用可能な小型無人機を含めた運航安全管理技術」において、「有人機サブシステム【地上部】」の開発業務を落札したと発表した。
JAXAは、災害時に有人機やドローンを安全に運用するための技術開発を進めており、これまでには人工衛星も活用した災害情報の収集・共有技術を研究してきた。
本記事では、テラドローンが担う役割と、JAXAが進める災害対応技術の全体像を解説する。
テラドローン、JAXAの有人機向けシステム開発を受注
災害時の安全な運航を支援
今回テラドローンが開発を担うのは、JAXAが進める運航安全管理システムの「有人機サブシステム【地上部】」である。
運航安全管理システムは、JAXAの研究開発プロジェクト「DOER」で開発が進められているシステムの一つだ。災害や緊急時に、ヘリコプターなどの有人機とドローンが同じ空域で活動する際、それぞれの飛行状況を把握し、安全な運航を支援する。
災害現場では、有人機による救助や情報収集に加え、ドローンを使った被害状況の確認や捜索、物資搬送なども想定される。こうした複数の航空機を安全に運用するため、JAXAは有人機と無人機を統合的に管理できる仕組みの構築を進めている。
今回テラドローンが担当する有人機サブシステム【地上部】は、このシステムを構成する機能の一つで、有人機の安全な運航を地上から支援する。
無人機側で培った運航管理の知見を有人機側へ
テラドローンはこれまで、JAXAなどと連携し、主に無人機を運航する側のシステム開発を進めてきた。
2025年4月からは、「無人機サブシステム」を構成する「運航者サブシステム」の研究開発を開始。運航者サブシステムは、現場を飛行するドローンと運航安全管理システムをつなぎ、ドローンの安全な運航を支援する仕組みである。ドローンの飛行計画や位置情報を共有するほか、統合運用側からの指示や調整をオペレーターへ伝える役割を担う。
その後、実際の運用を想定した実証も進めてきた。2025年10月に奈良県で行われた消防訓練では、神戸市消防局が運用するドローンの位置や機体の向きなどをシステムへ連携。ヘリコプターや複数のドローンの情報をリアルタイムで同じ画面上に共有した。
さらに2026年には、有人機50機、無人機80機を同じ空域で運用する高密度環境を再現。テラドローンは無人機80機分の経路計画や最大84機分のシミュレーション位置情報をシステムへ連携し、多数の機体を運用する環境でデータ連携などを検証した。

こうした研究開発を通じ、テラドローンは無人機の飛行情報をシステムへ連携する技術を開発し、有人機と無人機の運航情報を一元的に管理する実証に参加してきた。
今回新たに担当する「有人機サブシステム【地上部】」では、これまでの無人機側に加え、有人機の安全な運航を地上から支援する機能の開発にも領域を広げる。無人機側で蓄積してきた運航情報の連携や統合運用に関する経験は、今回の開発にも活きるだろう。

JAXAが「DOER」を進める理由
K ProgramとJAXAの航空技術を組み合わせて研究開発
DOERは、JAXAが2024年度に始動した研究開発プロジェクトで、正式には「災害・緊急時等に活用可能な運航安全管理システム及び小型固定翼無人機システムの研究開発」という。

DOERには政府の「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)」で採択された研究内容も取り込まれている。K Programでは複数の研究テーマが設定されており、その一つが「災害・緊急時等に活用可能な小型無人機を含めた運航安全管理技術」である。
JAXAをはじめ、複数の研究機関や企業がこの研究テーマに採択され、テラドローンもその一員として無人機側の「運航者サブシステム」の研究開発を担当してきた。
一方、JAXAはK Programへの採択以前から、災害時に航空機や災害対策本部などの間で情報を共有する「D-NET」の研究開発を進めてきた。
現在のDOERでは、こうしたD-NETなどの災害対応航空技術に、K Programで採択された研究内容を組み合わせて研究開発を進めている。
能登半島地震の経験が背景に
DOERの研究開発背景には、2024年1月に発生した能登半島地震で明らかになった課題もある。
JAXAは地震発生後、職員を石川県庁の災害対策本部へ派遣し、災害時の航空機運用を支援する「D-NET」を使った技術支援を実施。その際、被災地で無人機を含む航空機を運用する際の情報共有体制や、無人機自体の機能・性能に課題があることが確認された。
こうした課題とK Programで示された研究課題を踏まえ、DOERでは、有人機と無人機が連携して安全に任務を行うための技術開発を進めている。
運航安全管理システムは2028年度末まで研究開発を行う計画で、2025年度の警備を想定した実証に続き、2026年度と2027年度には災害対応、2028年度には遠隔地での活動を想定した実証を行う予定だ。
衛星システムとの連携も想定
JAXAはこれまで、災害対応において航空機やドローンだけでなく、人工衛星から得られる情報も活用する技術を研究してきた。
2013年度から研究が始まった「D-NET2」では、ヘリコプターなどの航空機、無人航空機、人工衛星を統合的に運用し、災害情報を収集・共有する仕組みを開発した。
人工衛星は広い範囲の被害状況を把握できる一方、ヘリコプターやドローンは被災地へ接近し、より詳細な状況確認や救助、物資搬送などを行える。異なる手段から得られる情報を組み合わせることで、広域的な被害把握と現場での活動をつなげることができる。
現在のDOERで開発される運航安全管理システムは、有人機と無人機の統合的な運航管理を中心としている。一方、その基盤となるK Programの研究開発構想では、各種衛星情報や防災情報システムなど外部情報との連携も目標として示されている。
つまり、D-NET2で進められてきた衛星情報の活用は、現在の研究開発にもつながっている。今後、衛星による広域的な状況把握と、有人機・ドローンによる現場活動をどのように連携させていくかも、災害対応技術の高度化における重要な要素となる。
さいごに
テラドローンは、Drone Industry Insightsが発表する「ドローンサービス企業 世界ランキング」で2019年以降トップ2に入り、2024年には世界1位を獲得するなど、国内外でドローン事業を展開してきた企業である。
一方、JAXAはこれまで、航空機やドローン、人工衛星などを活用し、災害情報を収集・共有する技術の研究を進めてきた。
こうしたJAXAの災害対応技術と、テラドローンが培ってきた無人機の運航管理技術が組み合わさることで、災害時に有人機とドローンをより安全かつ効率的に活用する仕組みの構築が期待される。将来的に、衛星から得られる広域的な災害情報との連携がどのように発展していくのかも注目したい。
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