
2026年4月14日、小型衛星の開発・運用および地球観測データ事業を手がける株式会社アクセルスペースホールディングスは、2026年5月期第3四半期(Q3)決算を公開した。
本記事では、最新決算のポイントと事業の進捗について整理する。
目次
アクセルスペースの概要
アクセルスペースグループは、小型地球観測衛星の開発・製造から運用、データ提供までを一貫して手がける企業である。
2008年に東京大学発のベンチャー企業として株式会社アクセルスペースが設立。その後、2020年に単独株式移転の方式により純粋持株会社として株式会社アクセルスペースホールディングスが設立され、2025年8月に東京証券取引所グロース市場へ上場した。
自社衛星による光学地球観測データを提供する『AxelGlobe』と、顧客向け小型衛星プロジェクトの設計・製造・打上げ・運用を提供する『AxelLiner』の2事業を通じて、官民顧客に衛星ソリューションを提供している。

アクセルスペースの決算内容|2026年5月期Q3
アクセルスペースが発表した2026年5月期Q3決算は下図の通りである。

2026年5月期Q3の決算概要
2026年5月期第3四半期において、アクセルスペースホールディングスは、売上の減少とともに損失が拡大する決算となった。
売上高は967百万円(前年同期比-21.7%)となり、前年の1,234百万円から減少した。これは主に、AxelLiner事業における政府系案件の製造フェーズの変化によるものとされる。
費用面では、GRUS-3αや高分解能衛星に関連する研究開発費の増加が損益を押し下げた。資料では、その影響額は前年同期比で1,059百万円と示されている。加えて、人件費や採用費の増加(約178百万円増)も影響し、販売費及び一般管理費は3,356百万円(前年同期比+82.3%)まで拡大している。
この結果、営業損失は3,312百万円(前年同期1,750百万円)と赤字幅が拡大した。また、営業外収益の減少(-39.3%)および営業外費用の増加(+265.2%)も影響し、経常損失は3,113百万円(前年同期994百万円)となっている。
さらに、固定資産の減損損失の計上などにより、特別損失は338百万円(前年同期68百万円)となった。その結果、親会社株主に帰属する四半期純損失は3,457百万円(前年同期1,066百万円)となり、赤字幅が大きく拡大した。
総じて、売上は案件進捗の影響により減少する一方、研究開発費の増加に加え、人件費や採用費の増加も重なり、損失が拡大した。現時点では、収益性よりも将来の衛星開発に向けた投資負担が先行している構造がうかがえる。

財務状況と受注残高の状況
財務状況
2026年5月期第3四半期末における総資産は15,487百万円となり、前期末(9,523百万円)から大きく増加した。
このうち、現金及び預金は8,677百万円(前期末5,006百万円)まで増加しており、上場に伴う資金調達や長期借入の実行が主な要因とされる。また、固定資産についても1,600百万円(前期末126百万円)まで増加しており、GRUS-3に関連する資産計上が進んでいる状況だ。
負債は7,981百万円(前期末6,495百万円)となり、流動負債の増加が見られる。これは借入金の返済区分変更や補助金に関連する前受金の増加などによるものである。一方で、固定負債は減少しており、資金構成の見直しが進められている。純資産は7,505百万円(前期末3,027百万円)と大きく増加しており、上場に伴う資本金および資本剰余金の増加が寄与している。
このように、同社では上場による資金調達を背景に財務基盤が厚くなり、あわせて衛星開発に関連する資産計上も進んでいる。
受注残高
受注残高は54,835百万円となり、前年同期比で大幅に増加した。
セグメント別に見ると、AxelLiner事業の受注残高は11,064百万円(前年同期7,909百万円、+39.9%)と着実に積み上がっている。一方、AxelGlobe事業の受注残高は43,771百万円となり、防衛省案件の寄与により大幅に増加している。
特に、AxelGlobe事業においては契約総額436億円規模の防衛省コンステレーション案件が進行しており、今後は年度ごとに段階的に売上へ計上される見込みだ。
なお、同社の売上は案件の納品・検収タイミングに依存する側面があり、四半期ごとの変動が大きくなる傾向があるとされる。こうした点を踏まえると、足元の売上は減少しているものの、受注残高は大きく積み上がっており、中長期の売上機会を示す材料となっている。
事業の進捗状況
①AxelLiner事業
AxelLinerは、顧客向けに小型衛星の設計・製造から、打上げ、運用までを一貫して提供する事業である。あわせて、自社衛星に他社の宇宙機器やコンポーネントを搭載し、軌道上での実証機会を提供するサービス「AxelLiner Laboratory(AL Lab)」も展開している。
2026年5月期Q3では、NEDOの経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプログラム)『光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証』を中心に売上高を計上した。加えて、将来の事業拡大に向けて、NEDOの『超小型衛星コンステレーション技術開発実証事業』を進めているほか、宇宙戦略基金第二期の『次世代地球観測衛星に向けた観測機能高度化技術』にも採択されている。
AL Labでは、小型衛星向け推進機を開発する株式会社Pale Blueとの軌道上実証サービス契約を締結しており、民間企業の宇宙実証ニーズの取り込みも進み始めている。
現時点では、売上の中心は依然として政府系案件であり、開発フェーズの進行に応じて収益が変動する構造にある。AL LabではPale Blueとの契約締結も公表されており、民間向け実証サービスの立ち上がりが見え始めている。
②AxelGlobe事業
AxelGlobeは、アクセルスペースが自社で運用する衛星にて撮影した画像データの販売や、衛星画像を活用した解析サービスを提供する事業である。
2026年5月期Q3では、国土交通省・国土地理院の電子国土基本図関連プロジェクトにおいて、AxelGlobeの衛星画像の継続提供が決定。複数時点の画像を組み合わせることで、雲のない高品質な画像データの生成・提供を実現している。
さらに、防衛省の『衛星コンステレーションの整備・運営等事業』では、アクセルスペースが唯一の光学画像提供者として参画し、事業期間を通じた契約総額436億円(税抜)の画像データ取得業務委託契約を締結した。
さらに、宇宙戦略基金第二期において複数の技術開発課題に採択されており、海外展開やデータ利活用基盤の高度化に向けた取り組みも進められている。
足元では政府系案件の比率が高いものの、海外や民間領域への展開も進みつつあり、データビジネスとしての拡張が進行している段階にある。
さいごに
2026年5月期第3四半期のアクセルスペースは、売上の減少と損失の拡大が目立つ決算となった。一方で、その背景には、Kプログラムをはじめとする政府系案件の進行や、GRUS-3α・高分解能衛星に向けた研究開発の加速といった、将来の事業拡大を見据えた動きがある。
また、受注残高は大きく積み上がっており、AxelLinerでは政府案件を軸とした開発基盤の強化、AxelGlobeでは防衛省案件を含む大型案件の進展が確認された。足元の業績だけを見ると負担先行の印象もあるが、衛星開発、実証、データ提供を一体で進める同社の事業構造が、今後どのように収益へ結びついていくかが注目される。
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