
2026年8月5日、スカパーJSAT株式会社(以下、スカパーJSAT)は、2027年3月期第1四半期の決算を発表した。
本記事では、スカパーJSATの連結業績と、成長を牽引した宇宙事業の動向、今後の安全保障分野に向けた投資について解説する。
スカパーJSATの概要
スカパーJSATは、通信衛星を利用した衛星通信サービスや有料多チャンネル放送、衛星データ、衛星運用などを手がける日本の企業である。
宇宙事業では、北米上空からインド洋上空まで計17機の静止軌道通信衛星を保有しており、国内外の企業や政府機関、航空機、船舶などへ衛星通信サービスを提供するほか、地球観測衛星のデータ提供、衛星運用、地上局サービスなども展開。
近年は、安全保障分野や衛星データを扱うスペースインテリジェンス事業も強化している。
メディア事業では、有料多チャンネル放送サービス「スカパー!」を運営しており、放送サービスに加え、光回線を通じてテレビ放送を提供する光再送信サービスや、配信事業者向けの映像伝送・制作支援なども手がける。
2026年4月には、持株会社だったスカパーJSATホールディングスが事業子会社を吸収合併し、商号を「スカパーJSAT株式会社」へ変更した。持株会社と事業会社を一体化し、宇宙事業とメディア事業の経営判断の迅速化と効率的な事業運営を図っている。

スカパーJSATの決算内容|2027年3月期第1四半期
スカパーJSATは、事業を「宇宙事業」と「メディア事業」の2つに分けて開示している。
宇宙事業には衛星通信、グローバル・モバイル、スペースインテリジェンスなどが含まれており、メディア事業には放送・配信、光アライアンス、メディアソリューションなどが含まれている。
2027年3月期第1四半期の決算概要
スカパーJSATの2027年3月期第1四半期における営業収益は、前年同期比12.0%増の334億円となった。
営業利益は同36.0%増の109億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同49.6%増の82億円、EBITDAは同24.1%増の147億円となり、すべての主要指標で前年同期を上回った。

営業収益の伸びを上回るペースで利益が増加したことで、売上高営業利益率は前年同期の約26.9%から約32.6%へ上昇している。
宇宙事業だけでなく、メディア事業も増収増益となった。メディア事業の営業収益は前年同期比2.4%増の173億円、営業利益は同59.3%増の47億円である。
放送・配信関連収入は減少したものの、光再送信サービスの値上げと接続世帯数の拡大が収益を押し上げた。コンテンツ費用や顧客対応費用などの削減も進み、メディア事業の営業利益率は17%から27%へ改善している。
宇宙事業は営業収益175億円、営業利益64億円
宇宙事業の営業収益は、前年同期比20.7%増の175億円となった。営業利益は同21.8%増の64億円、純利益ベースのセグメント利益は同27.3%増の46億円である。
営業収益の増加額は30億円で、このうちスペースインテリジェンス事業が22億円、グローバル・モバイル分野が5億円、為替影響が3億円を占めた。
一方、営業費用は増収に伴う原価の増加などにより、前年同期比20.1%増の111億円となった。それでも営業収益の拡大が費用増加を上回り、増益を確保している。
なお、スカパーJSATは2026年度から映像ネットワーク関連サービスを宇宙事業からメディア事業へ移管している。前年同期の数値は、この組織変更を反映して組み替えた数値である。
宇宙事業の進捗状況
防衛省の衛星コンステレーション事業が開始
宇宙事業の成長を牽引したのが、安全保障分野を含むスペースインテリジェンス事業である。
スカパーJSATは、三菱電機と三井物産とともに特別目的会社「トライサット・コンステレーション」を設立し、2026年2月に防衛省と「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」に関する契約を締結した。
同事業では、Synspective、QPS研究所、アクセルスペース、三井物産エアロスペースと連携し、衛星画像データの取得、専用地上施設の運用、事業全体の管理などを行う。
事業期間は2031年3月末までの約5年間で、契約総額は2,831億円である。契約総額の全額がスカパーJSATの営業収益になるものではなく、特別目的会社や参画企業の役割、契約関係に応じて配分されるとみられる。
今回の第1四半期決算では、同事業の開始がスペースインテリジェンス事業の増収要因として挙げられており、大型契約が実際の営業収益へ反映され始めた点は、今後の業績を確認するうえで重要である。
HYLAS 3取得でKaバンド通信へ本格参入
スカパーJSATは2026年6月、英国のAvanti Communicationsと、静止軌道通信衛星「HYLAS 3」の売買契約を締結した。
HYLAS 3はKaバンドを利用する通信衛星で、広い周波数帯域を活用した大容量通信に対応している。複数の狭いエリアへ電波を照射するマルチスポットビームを備え、需要に応じてカバレッジを変更できる点も特徴である。
同衛星は軌道上での試験などを経てスカパーJSATへ引き渡され、「JSAT-144D」として2027年度初頭を目途に運用を開始する予定である。
スカパーJSATは、既存のKuバンド通信衛星にKaバンド衛星を加え、複数の周波数帯を組み合わせた通信網を構築する。

Kaバンドは広い帯域を確保しやすく、船舶や航空機、無人システムなどの大容量通信に適している。スカパーJSATは、安全保障分野を含む通信需要を取り込み、Kaバンドの活用によって10年間で累計200億円以上の安全保障関連収益を獲得する計画である。
同社は今後、JSAT-32を2027年、Superbird-9を2028年、JSAT-31を2029年に打ち上げる計画を示している。
すでに軌道上にあるHYLAS 3を取得することで、新規衛星の打ち上げを待たず、2027年度から東アジアにおけるKaバンド通信サービスの事業基盤を確保する狙いがある。
地上局網を6カ所から7カ所へ拡大
衛星フリートの拡大にあわせて、地上局への投資も進めている。
スカパーJSATは熊本県に新たなネットワーク管制センターを建設し、拠点を6カ所から7カ所へ増やす。横浜、山口、北海道、沖縄の既存拠点についても、設備を拡張する計画である。
これらの整備により、地上局の敷地面積は合計約14万平方メートルから約23万平方メートルへ拡大する。2024年度から2030年度までの土地、建物、アンテナ設備などへの投資総額は、400億円を超える見通しである。
地上局網を拡充することで、自社衛星の運用体制を強化するとともに、今後増加する衛星運用や地上局利用の需要に対応する。
衛星運用・地上局サービスの受託を拡大
スカパーJSATは、自社衛星の運用に加え、外部の衛星事業者や政府機関を対象とした衛星運用・地上局サービスも展開している。
衛星運用では、防衛省、JAXA、QPS研究所などから業務を受託している。2026年8月には、QPS研究所から受託する小型SAR衛星の保守運用対象を5機追加し、合計8機へ拡大した。
地上局サービスでは、JAXA、NASA、ispaceなどへ設備を提供している。さらに、ノルウェーの地上局サービス会社KSATとの業務提携を通じて、海外を含む地上局ネットワークにも対応する。
今後は、自社衛星による通信・衛星データ収入に加え、他社衛星の運用や地上局利用によるサービス収入をどこまで拡大できるかが焦点となる。
さいごに
スカパーJSATの2027年3月期第1四半期は、営業収益334億円、営業利益109億円、連結純利益82億円となり、宇宙・メディアの両事業で増収増益となった。
その中でも宇宙事業では、防衛省の衛星コンステレーション事業が始まり、スペースインテリジェンス事業の営業収益が拡大した。これまでの通信衛星だけでなく、衛星画像、衛星運用、地上局、安全保障通信まで収益源を広げていることが今回の決算から確認できる。
今後は、防衛省案件の収益計上ペース、HYLAS 3の取得とサービス開始、地上局の拡張、低軌道地球観測衛星の打ち上げが、宇宙事業の成長を左右することになるだろう。
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参考資料
・スカパーJSAT「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」
・防衛省「衛星コンステレーションの整備・運営等事業民間事業者の選定について」
・スカパーJSAT「Kaバンド通信衛星『HYLAS 3』の売買契約を締結」
※本記事は、スカパーJSATが公表した「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」をもとに、同社の事業動向を整理することを目的としたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、投資助言を目的としたものでもございません。









