アストロスケールの決算内容を解説・考察|2027年4月期第1四半期決算
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2026年9月11日、株式会社アストロスケールホールディングス(証券コード:186A、以下、アストロスケール)は、2027年4月期第1四半期の連結決算を発表した。

プロジェクト収益は前年同期を下回り、営業損失も拡大した。一方、6月には大型資金調達を実施し、現金及び現金同等物は約350億円まで増加している。

本記事では、アストロスケールの決算内容に加え、受注残高や財務状況、ADRAS-J2をはじめとする軌道上サービス事業の進捗について整理する。

アストロスケールの概要

アストロスケールは、スペースデブリ(宇宙ごみ)の除去や、人工衛星の点検・寿命延長・燃料補給などの軌道上サービスを開発する宇宙企業である。

軌道上サービスの中核となるのが、RPO(Rendezvous and Proximity Operations)と呼ばれる接近・近傍運用技術だ。サービス衛星を対象の人工衛星やデブリへ安全に接近させ、相対位置を保ちながら観測や捕獲などを行う。

同社は日本、英国、米国、フランス、イスラエルに拠点を持ち、政府機関や宇宙機関、民間企業向けに複数のミッションを進めている。これまでに、技術実証衛星「ELSA-d」やデブリ観測衛星「ADRAS-J」を通じて、軌道上でRPO技術を実証してきた。

アストロスケールの決算内容|2027年4月期第1四半期

アストロスケールが発表した2027年4月期第1四半期の決算は下図の通りである。

アストロスケールの決算内容(2027年4月期Q1)
アストロスケールの決算内容(2027年4月期Q1) ©︎Space Connect

プロジェクト収益は14.5%減、営業損失は27.5億円

2027年4月期第1四半期のプロジェクト収益は、前年同期比14.5%減の20億2,400万円となった。内訳は、売上収益が同4.4%減の11億9,500万円、政府補助金収入が同25.9%減の8億2,900万円である。

同社は減少の主な要因について、複数プロジェクトにおける部材調達や打ち上げ契約のタイミングがずれ、費用と収益の認識が後ろ倒しになったためと説明している。収益認識の遅れによる事業への本質的な影響は軽微との評価を示した。

売上総利益は7,200万円となり、前年同期の3,000万円から増加した。売上総利益率も2.4%から6.0%へ上昇し、売上総利益は2四半期ぶりの黒字となった。

一方、営業損失は27億5,000万円となり、前年同期から赤字幅が3億7,400万円拡大し、研究開発費は減少したものの、円安の影響などにより研究開発費を除く販売費及び一般管理費が前年同期比21.2%増加したことが重荷となった。

当期損失は30億7,100万円で、前年同期の12億1,100万円から赤字幅が拡大した。営業損失の拡大に加え、前年同期に計上していた金融収益が大きく縮小したことも影響している。

306億円の資金調達で現預金は349.52億円に増加

2026年7月末時点の現金及び現金同等物は349億5,200万円となり、2026年4月末の100億2,100万円から249億3,100万円増加した。6月に転換社債や普通株式の発行などによって総額306億円を調達したことが主因である。

資本合計も76億5,700万円から128億5,300万円へ増加した。普通株式の発行や転換社債の資本計上、従業員によるストックオプションの行使などが寄与している。一方、転換社債の発行により有利子負債は304億7,200万円まで増えており、このうち転換社債が223億1,600万円を占める。

第1四半期の営業キャッシュ・フローは28億9,600万円のマイナス、投資キャッシュ・フローは13億2,700万円のマイナスで、両者を合計したフリー・キャッシュ・フローは42億2,300万円のマイナスだった。

大型の資金調達により、ミッション開発を進めるための手元資金は大きく増加した。軌道上サービスは衛星開発や打ち上げに先行投資が必要となるため、今後はこの資金を活用しながら、開発中の案件を打ち上げ・実証・収益化へつなげられるかが焦点となる。

受注残高は363.5億円、既存案件の進捗で減少

2026年7月末時点の受注残高は363億5,400万円となり、2026年4月末の379億3,800万円から15億8,400万円減少した。

内訳は、契約を締結済みの「受注済み案件」が258億5,100万円で、前期末の274億3,500万円から減少した。「選定済み案件」は105億200万円で、前期末と同水準だった。

第1四半期の新規受注高は2億2,400万円にとどまった一方、既存プロジェクトの進捗に伴って受注残高の一部が収益として計上されたことも、残高減少の要因となっている。

その後、9月にはフランス子会社がExotrailから1,320万ユーロの軌道離脱実証案件を受注している。今後は、既存案件の収益化を進めながら、新規案件をどこまで積み上げられるかが受注残高を見るうえでのポイントとなる。

通期業績予想は据え置き

アストロスケールは、2027年4月期の通期連結業績予想を据え置いた。

アストロスケール 2027年4月期業績予想
アストロスケール 2027年4月期業績予想 ©︎Space Connect

通期予想は、受注済み・選定済み案件の進捗をもとに算出されており、未受注の新規案件による収益は織り込んでいない。新規案件による収益寄与が生じた場合には、プロジェクト収益予想の上方修正を検討する方針である。

第1四半期のプロジェクト収益は低い進捗にとどまったものの、同社は収益認識の遅れが主にタイミング要因であり、通期の営業損失予想は達成可能な水準と説明している。今後、後ろ倒しとなった収益を第2四半期以降に計上できるかが、通期予想の達成を判断するポイントとなる。

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軌道上サービス事業の進捗

決算説明資料では、既存ミッションの開発状況に加え、第1四半期末後に発表された打ち上げ契約や新規受注、英国での入札結果も示された。

ADRAS-J2はSpectrumで2027年度に打ち上げへ

アストロスケールは2026年9月1日、JAXAの商業デブリ除去実証「CRD2」フェーズⅡとして開発する「ADRAS-J2」について、ドイツの宇宙企業Isar Aerospaceと打ち上げ契約を締結したと発表した。

ADRAS-J2は、地球低軌道に残る全長約11m、直径約4m、重量約3トンの日本のロケット上段へ接近し、捕獲したうえで軌道から除去するミッションである。同社が世界初と位置付ける本格的な大型デブリ除去の実証を目指す。

打ち上げには、Isar Aerospaceのロケット「Spectrum」を使用し、2027年度にノルウェーのアンドーヤ宇宙港から打ち上げる予定である。Spectrumは2026年9月に実施した2回目の飛行で、初の軌道投入に成功した。

機体開発では、筑波宇宙センターで捕獲機構の振動試験を実施したほか、衛星システムの組立・統合・検証も開始している。打ち上げ手段の確保と機体製造が並行して進み、ミッションは実行段階へ近づいている。

APS-Rなど既存ミッションも打ち上げへ前進

複数の既存ミッションでも、設計審査や地上試験が進んだ。

プロジェクト拠点主な進捗
APS-R米国相関振動試験が完了。2027年4月期中の打ち上げに向け、2026年9月から環境試験を開始予定
LEXI-P米国ペイロードとドッキングシステムの詳細設計審査を完了
ISSA-J1日本衛星の組立・統合・検証を継続し、電気試験を実施
REFLEX-J日本システム要求審査を完了し、システム定義審査へ向けて準備
ELSA-M英国Airbusの施設で熱真空試験を完了し、電磁適合性試験へ向けて準備

なかでも直近の打ち上げを予定するAPS-Rは、米国の防衛関連案件として軌道上で燃料補給を実証するミッションである。

軌道上で衛星へ燃料を補給できれば、既存衛星の運用期間を延ばし、衛星事業者の更新投資を柔軟にできる可能性がある。

フランス子会社が約23.6億円の軌道離脱案件を受注

フランス子会社のAstroscale Franceは2026年9月11日、フランスの宇宙企業Exotrailから、Eutelsat OneWeb衛星の軌道離脱実証ミッションを受注したと発表。契約額は税抜1,320万ユーロ、発表時の為替換算で約23億6,000万円である。

本ミッションはフランス政府の国家投資計画「France 2030」の下で実施され、Exotrailが主契約者を務める。Astroscale Franceは、軌道上で対象衛星へ接近してドッキングするための技術や知見を提供する。

実証は2029年から2030年にかけて行われる予定で、運用を終えるOneWeb衛星へ接近・ドッキングし、軌道離脱させる。同社のフランス拠点にとって初の具体的な軌道上ミッションであり、同社は欧州で継続的に提供できる軌道離脱サービスの基盤づくりにつながる案件と位置付けている。

なお、この契約は第1四半期末の7月31日より後に締結されたものであり、第1四半期の受注高2億2,400万円とは時点が異なる。

COSMICフェーズ3は不採用、今期予想には織り込まず

一方、英国宇宙庁が進めるデブリ除去ミッション「COSMIC」のフェーズ3では、アストロスケール以外の事業者が選定された。

COSMICは、役目を終えた英国の衛星2機を軌道上で捕獲・除去する計画である。アストロスケールは2021年から初期フェーズや設計段階に参加し、フェーズ3の受注を目指していたが、2026年8月に不採用が公表された。

同社はCOSMICフェーズ3を2027年4月期の業績予想に織り込んでいなかったため、今回の結果に伴う通期予想の修正はないと説明している。

また、COSMICで実証する予定だった非協力物体への接近、複数物体への接近、ロボットアームによる捕獲は、ISSA-J1、ELSA-M、ADRAS-J2でも実証できるとしている。

さいごに

今回の決算では、収益認識の後ろ倒しなどによりプロジェクト収益が前年同期を下回り、営業赤字も続いた。その一方で、大型資金調達によって手元資金を大きく積み増し、ADRAS-J2やAPS-Rなど複数のミッション開発を並行して進めている。

アストロスケールは現在、技術実証の段階から、軌道上サービスを継続的な事業として提供する段階へ移行しつつある。今後は、開発中のミッションを予定通り打ち上げ・実証へ進められるかに加え、新規案件の獲得によって受注残高を積み上げられるかが重要になる。

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参考資料

Astroscale - 2027年4月期第1四半期 決算説明資料

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