文科省、SBIRでアストロスケールに2.5億円・BULLに2.6億円を追加配分|スペースデブリ対策を支援
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2026年10月2日、文部科学省は、スペースデブリ低減技術の開発・実証を支援する「SBIRフェーズ3基金事業」について、株式会社アストロスケール、株式会社Pale Blue、株式会社BULLの3社への追加配分を決定したと発表した。

今回、フェーズ2の追加配分額として、アストロスケールに2.5億円、BULLに2.6億円が示された。Pale Blueも追加配分の対象に含まれるが、今回の資料にはフェーズ2の追加額は記載されていない。

本記事では、今回の追加配分の内容と、3社が進めるスペースデブリ対策技術について解説する。

文科省、スペースデブリ対策3社への追加配分を決定

今回追加配分が決まったのは、文部科学省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金)」のうち、「スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証」をテーマとする事業である。

SBIRフェーズ3基金事業は、スタートアップなどによる大規模な技術実証を支援し、研究開発の成果を社会実装につなげることを目的としている。

今回、外部有識者による臨時のステージゲート審査が行われ、アストロスケール、Pale Blue、BULLの3社すべてに追加予算を配分することが決まった。文部科学省は、事業目標の確実な達成と成果の最大化を目的として、事業フェーズ2と3を対象に追加配分を実施するとしている。

スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証 ステージゲート審査結果
スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証 ステージゲート審査結果 ©Space Connect

アストロスケールには、大型衛星デブリの近傍で撮像・診断するミッションに2.5億円が追加配分される。加えて、アストロスケールホールディングスは10月6日、「ISSA-J1」ミッションのフェーズ2について、契約金額を2億4,900万円(税抜)増額する通知を受けたことも公表している。

一方、BULLには、衛星などがデブリになることを防ぐ軌道離脱促進装置の開発・実証に2.6億円が追加配分される。

Pale Blueも追加配分の対象となっているが、今回の文部科学省資料には新たなフェーズ2追加配分額は記載されていない。フェーズ3の追加配分額については、今後行われるフェーズ3への移行審査の結果とともに公表される予定である。

文部科学省が発表したSBIR事業のテーマと背景はこちら▲
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3社が進める事業の内容と進捗

アストロスケール

大型衛星デブリを宇宙空間で撮像・診断

アストロスケールが進めるのは、大型衛星デブリへ接近し、近距離から撮影して状態を調べる「ISSA-J1(In-situ Space Situational Awareness – Japan 1)」ミッションである。

ISSA-J1イメージ図
ISSA-J1イメージ図(出典:アストロスケールホールディングス/PR TIMES)

運用を終えた衛星などのデブリは、位置データの提供や姿勢制御の協力が得られず、劣化状況や回転状態などを地上からだけでは十分に把握できない場合がある。

ISSA-J1では、こうした大型衛星デブリの近くまで実際に接近し、画像などから軌道上での状態を確認する。デブリへ安全に近づいて状態を把握する技術は、将来、デブリを捕獲・除去する際にも必要となる。

2027年に「ISSA-J1」を打ち上げへ

ISSA-J1は、インド政府宇宙庁傘下のNewSpace India Limited(NSIL)が提供するPSLVロケットで、2027年春にインドのサティシュ・ダワン宇宙センターから打ち上げられる予定となっている。

観測対象となるのは、2000年代に日本が打ち上げ、すでに運用を終了した地球観測衛星「だいち」と環境観測技術衛星「みどりII」の2機である。

ISSA-J1は、まず1機目へ接近して観測した後、その衛星から離れ、異なる軌道にある2機目へ移動する。1機の宇宙機で異なる軌道上にある2つの大型衛星デブリを順番に観測する計画だ。

アストロスケールは、2024年から実施した「ADRAS-J」ミッションでも、ロケット上段のデブリへの接近や近距離撮影などを実証してきた。ISSA-J1では対象を大型の衛星デブリへ広げ、デブリ除去や衛星点検などの軌道上サービスに必要な接近・観測技術をさらに高める。

BULL

軌道離脱促進装置「HORN」の社会実装

BULLが開発しているのは、役割を終えた衛星やロケットを軌道上に長期間残さないための軌道離脱促進装置「HORN」である。

宇宙デブリ化防止(PMD *Post Mission Disposal)装置「HORN」のイメージ図
宇宙デブリ化防止(PMD *Post Mission Disposal)装置「HORN」のイメージ図(出典:BULL/PR TIMES)

HORNは宇宙機にあらかじめ搭載し、運用終了後に大きな膜を展開。膜を広げて大気抵抗を増やすことで宇宙機を減速させ、軌道高度を下げて大気圏への再突入を促す。

HORNは50㎡相当の膜面を展開でき、BULLによると、宇宙デブリ対策を目的とした膜面展開型装置として世界最大級となる。なお、今回の軌道上実証では、HORN-Lは約20㎡、HORN-Rは約10㎡の膜面を展開した。

2026年に初の軌道上実証を実施

BULLは2026年6月12日、H3ロケット6号機でHORNの実証機「HORN-L」と「HORN-R」を打ち上げ、同社初となる軌道上実証を開始した。

実証では、HORN-Lの軌道降下と膜が展開された状態の撮影に成功し、同社が設定した「フルサクセス」を達成。HORN-Lは初期高度約560kmから継続して高度を下げ、打ち上げから76日で大気圏へ再突入した。

一方、同じH3ロケット6号機で打ち上げられた比較対象衛星「VERTECS」は、同期間、初期高度約560kmをほぼ維持していた。BULLはこの結果から、膜面による大気抵抗の増大によって軌道離脱を促進できることを実証したとしている。

今回の2.6億円の追加配分について、BULLは、追加の軌道上実証に加え、社会実装に向けた量産・内製化を加速するために活用するとしている。

Pale Blue

Pale Blueが進めるのは、人工衛星が自ら軌道を変更するための推進機の開発である。

人工衛星に十分な軌道変更能力を持たせることで、運用中は他の衛星やデブリとの衝突を回避し、運用終了後には自ら軌道を下げてデブリとして残ることを防ぐことを目指している。

2025年10月から進めるフェーズ2では、各スラスタのシステム詳細設計や地上での検証を実施している。2026年6月のステージゲート審査ではホールスラスタの技術成立性などが確認され、事業継続が決定。フェーズ2の交付額上限は7.9億円引き上げられ、19.6億円となった。

なお、Pale Blueの計画では当初「水ホールスラスタ」を開発する予定だったが、2025年のステージゲート審査でプロジェクト目標が変更され、ホールスラスタの推進剤は水からキセノンへ変更された。現在の事業計画名も「水ホールスラスタ」ではなく「ホールスラスタ」となっている。

▶Pale Blueについて詳細はこちら

3社が異なる方法でスペースデブリ低減へ

今回追加配分の対象となった3社は、いずれもスペースデブリ低減を目指しているが、その方法は異なる。

アストロスケールは、すでに軌道上に存在する大型デブリへ接近し、状態を把握する技術を開発する。これは将来、デブリを安全に捕獲・除去するための基盤となる。

一方、BULLとPale Blueは、新たなスペースデブリを生み出さないための技術を開発している。BULLは大気抵抗を利用するHORNで運用終了後の宇宙機を軌道離脱させ、Pale Blueは推進機によって衛星自身が衝突回避や軌道離脱を行えるようにする。

衛星の打ち上げ数が増えるなか、スペースデブリ対策では、すでに存在するデブリへの対応と、新たなデブリの発生を防ぐ取り組みの双方が必要となる。

さいごに

今回の追加配分は、接近・観測、軌道離脱装置、衛星用推進機という異なる技術を並行して支援し、実際の宇宙空間での実証から社会実装につなげる取り組みと位置付けられる。

今後は、各社のフェーズ3への移行に向けたステージゲート審査と、軌道上実証の進展が焦点となる。

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参考

文部科学省 発表資料

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