3分でわかる!? H3ロケットの技術革新の本質についてまとめてみた
©Space Connect株式会社

2023年2月17日、2014年から開発が始まった次世代の液体燃料ロケット『H3ロケット』が遂に宇宙へ向かう。

ニュースで頻繁に取り上げられているが、H3ロケットがどのようなロケットで何が革新的なのか、理解していない人も多いのではないだろうか。

だからといって、H3ロケットに関しての記事は内容が難しく、読んでいても正直疲れてしまう。

今回の記事では、そんな人向けに最新のH3ロケットについて、3分ポッキリでわかるよう説明しようと思う。

ここだけ抑えて!! H3ロケットはとにかく低コスト

改めて、冒頭でも述べたが、H3ロケットとは、JAXAと三菱重工が国の中核を担う次世代ロケットとして開発している大型の液体燃料ロケットのことである。

H3ロケットを考える上で抑えておくべきポイントは、従来のロケットと比べて、圧倒的に低価格になったこと。

打ち上げ費用をなんと従来のロケットと比べて、約100億円から1/2の50億円にまで抑えることに成功したのだ。

ここでは価格を抑えるために、H3ロケットの開発・打ち上げにおいて、導入された新技術を駆け足で3つ紹介する。

  • 低コストかつ高推力の新エンジンシステム
  • 生産過程見直し
  • 射場整備工程の短縮

新エンジンシステムの搭載

H3ロケットの第1段エンジンである「LE-9」は、これまでのH-ⅡAロケットと比較して、低コストかつ1.3倍の高推力を持つ。

従来のエンジンは、副燃焼室で水素を燃やし、そのガスでエンジンの駆動源となるターボポンプを動かしてから、燃料を再利用して主燃焼室で酸化剤とともに燃やす「二段燃焼サイクル」を採用していた。

この方式は、推進剤を無駄にしない代わりに、構造が複雑であり、取り扱いが煩雑であった。一方、今回のLE-9では、水素を燃焼室の熱で膨張させ、その熱でターボポンプを動かす。

要するに、燃料が再利用できない代わりに、副燃焼室がないため部品数が2割以上減る上、制御が容易となる。

生産過程の見直し

当然のことながら生産過程についても、大幅に見直しが行われた。

生産ラインの効率化はもちろんのこと、電子部品をはじめ各種の部品は極力宇宙専用部品ではなく、自動車などの民生品を採用するなど、使用する部品についても低価格化に向けて、工夫が施された。

宇宙機器の部品の特徴としては、製造自体に費用がかかっていなくても、宇宙機器専用の部品であるがゆえに、信頼性の担保の関係上、高価格化する。

従って、これらを民生品に代替することで、コストを低減することができるのだ。将来的には3Dプリンターの導入も視野に入ってくるだろう。

射場整備工程の短縮

H3ロケットでは、作業要員の人数を大幅に削減するために、現在の100~150人体制から30~40人体制へと、人員を大幅に削減できるよう射場整備に新しい仕組みを採用。

また機体の自動点検などにより、発射台の近くにあった管制室を約3キロ離れた地点に設置可能にした。

技術革新の背景

上記の新技術の導入により、従来の高信頼性を保ちつつ、従来のロケットと比較して圧倒的に低価格で高品質なロケットであるH3ロケットが完成した。

低価格化の実現に加えて、従来のロケットと同様、大型の衛星の打ち上げはもちろん、受注から打ち上げまでの期間も短縮される。

おまけに打ち上げの所要間隔についても、2か月弱から1か月程度に縮まるというのだ。

これまでH3ロケットの開発計画は度々話題になっていたが、ここ数年で大幅なアップデートを見せた背景には、宇宙産業における国際競争力の高まりが関係していると筆者は予想している。

SpaceXをはじめ、世界中のロケット開発が民間に移行する背景を受けて、ロケット開発における価格競争が年々激しさを増してきている。

その流れに便乗するかのように、今回のH3ロケットは圧倒的な低価格開発を実現している。

ファルコン9と比較しても、同程度もしくはそれ以下のコストでの打上げを可能としていることを踏まえると、国際競争力を非常に意識した上での開発だと言えるのではないだろうか。

何はともあれ、そんな夢のようなH3ロケットの開発を実現させてしまうJAXAをはじめとする日本の技術力の高さには感服である。

H3ロケットの開発状況
H3ロケットの開発状況について ©文部科学省

さいごに

いかがでしたか。

本記事では、2023年2月17日に打ち上げが行われるH3ロケットの前夜祭として、H3ロケットの技術革新について簡易ながら紹介した。

今回の打ち上げは、試験機1号の打ち上げであり、地球観測衛星である「だいち3号」を搭載。成功した場合、試験機2号の打ち上げの実施・評価が行われた後、開発が完了する予定である。

宇宙産業の今後の未来にも大きく繋がるH3ロケットの成功をただただ祈るのみである。

補足:H3試験機1号機打ち上げの詳細

  • 打上げ日:2023年2月17日(金)
  • 打上げ時間帯:10時37分55秒~10時44分15秒(日本標準時)
  • 打上げ予備期間:2023年2月18日(土)~2023年3月10日(金)

当日9時45分からは、JAXAによるライブビューイングも行われます!

H3ロケット試験機1号機/先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)打上げライブ中継

参考

JAXAにおける宇宙輸送に関わる取り組み

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