2023年9月8日福島県南相馬市にて、東北初の宇宙ビジネスカンファレンス「福島スペースカンファレンス2023」が行われた。
本記事では、今回初開催となった福島スペースカンファレンスに参加してみた感想とその一部始終をまとめてみました。
※宇宙産業に関連する福島県の特色やカンファレンスの概要についてはこちら【福島でスペースカンファレンスが開催】
目次
第一部 トークセッション
第一部のトークセッションでは、宇宙ベンチャー企業、VC(ベンチャーキャピタル)、大学の教授、政府関係者など幅広い産業からメンバーが選出。
合計5つのセッション、4~6人が登壇し、宇宙産業に関するトークを繰り広げた。
実際にトークセッションの内容を聞いていると、福島県と宇宙産業の意外な関係性ついて、知ることができた。
福島県と宇宙産業は実は相性が良い!?
まず気になったのが、福島県と宇宙産業、実は相性が良いのではといったポイントだ。
福島県の浜通り地域(福島県沿岸部)で、創業支援プログラム「Fukushima Tech Create」のメンターを務める、SPACETIDEの佐藤将史氏によると、自分がメンターとして関わった廃炉系で復興に携わりたいと考える人達の半分は、その先に宇宙を見据えていると仰っていた。
「放射線というのは宇宙にとっても一大イシューで、人体ももちろんですが、電気機械も放射線の対策がすごく大事です。
復興というところから福島を盛り上げるとすると、放射線配慮っていうところが一つ揺るぎない柱になってくると思うので、そこを宇宙と繋ぐのが一つのアイデアだと思っています。元々医療機器も強い地域だと思いますし、福島がこれから知の集積拠点となって盛り上がっていくと良いなと思います。」
SPACETIDE 佐藤将史氏
と、述べており、廃炉や医療機器を機転に宇宙産業を見据える発想は非常に興味深いと感じた。
また経済産業省の小原夏美氏は、
「スペースポートや大学など、知の集積拠点や、何か強みがあると、そこから産業が広がっていくと思っています。
南相馬には福島ロボットテストフィールドという、宇宙開発で必ず必要な実証試験のための施設があり、さらに今度浪江町にF-REI(福島国際研究教育機構)という知が集積する拠点ができます。」
経済産業省製造産業局 宇宙産業室室長補佐 小原夏美氏
上記のように述べており、福島県の産業ポテンシャルの高さが伺えた。
復興 × 宇宙産業の可能性
福島県では震災による原発被害があったこともあって「復興」という言葉が1つのキーワードになっている。
そのような論点から、スペースポートを活用したまちづくりの話は積極的に進められていた。
実際、北海道の大樹町では、スペースポートを核としたまちづくりがすでに始まっており、減少状態が続いた人口動態が一転、十勝管内で唯一人口が増加した町としても知られている。
福島県商工労働部 次世代産業課の橋本浩江氏は、
福島県として、宇宙産業の開発側の支援もそうですが、利用する側の支援も行っていきたい。
宇宙産業を軸とした城下町みたいな町が生れて、その町が復興にも大きく力を発揮していただけるというのが福島県の理想的なビジョンです。 福島県商工労働部 次世代産業課の橋本浩江氏
上記のように述べており、福島においての宇宙を起点としたまちづくり構想を後押ししていた。
また、ロケット製造会社として有名なインターステラテクノロジズの代表である稲川貴大氏も南相馬市にロケットを量産するための部品工場を立てることをやんわりと示唆しており、福島県が宇宙産業の街になる可能性は十分に考えられると感じた。
また、SPACETIDEの佐藤氏は、
「ロケットでのサービスを差別化する上では、工場をたくさん作って、適切なタイミングで衛星を打ち上げられる環境を作るという、サービスの高速化・高頻度化はとても重要です。
そのためのサプライチェーンに問題意識があるというのは宇宙産業全体の話だと思っています。
なので、そこに協力できる福島の地場の産業とサプライチェーンがあればそこがすごくビジネスチャンスになるんじゃないかなと思いました。」
SPACETIDE 佐藤将史氏
と語っており、福島県の宇宙産業におけるポテンシャルを評価していた。
第二部 懇親会
福島の伝統芸能や地元料理を満喫
セッションの後の交流会では、伝統的なほら貝の演奏「礼螺奉吹(れいがいほうすい)」などの演奏が行われた他、地元産のブランド羊「メルティ―シープ」のジンギスカンやお刺身、サケのハラス焼き、地元のクラフト酒など、豪華な食材が並んだ。
立食形式で参加者同士の距離が近く、美味しいご飯を食べながら密に交流できる場となっていた。
福島スペースカンファレンスの裏側が熱い
今回のカンファレンス終了時の取材にて、カンファレンスの開催費用は補助金等の外部資金を一切使用しておらず、東北を拠点とする民間企業が集まって、それぞれが費用を持ち出すことで開催されていたことが明らかになった。
実行委員の1人でもあり、南相馬でコミュニティスペースを運営する但野 謙介氏は、「赤字ではあるが、これからの南相馬や福島のことを考えるとなんともない。未来への投資です。」と笑顔で語っていたのが印象的だ。
総じて、処理水の海洋放出の話題もあり、福島県の度重なる風評被害の中でこのカンファレンスを来年以降にもつなげていきたい、宇宙産業を起点に東北地方を変えたいといった、運営の熱い想いが伝わる素晴らしいカンファレンスであった。
さいごに
いかがでしたか。
今回のカンファレンス開催の発端となった、南相馬に拠点をもつロケット開発企業AstroX代表の小田翔武氏は、以下のようにコメントしている。
「福島を今後宇宙産業集積地としていくべく、その熱量を県内外問わず多くの方々に体感してもらいたい。」
そんな話がきっかけで始まった本イベントだったが、狙い通り今後の発展に寄与する大きな1歩になったと思う。
各セッションでも話されていたが、あらためてこの地の可能性を感じた。AstroXも福島の宇宙産業発展により寄与できるよう成長していきたいと思う。
AstroX 代表取締役 小田翔武
今後、福島県が日本を代表する宇宙産業の集積地になるのか。
そのような未来を楽しみにしながら、来年もカンファレンスに参加することとしよう。