ispaceと三菱電機、JAXAの月面太陽電池タワー概念設計に選定|2030年以降の打ち上げを想定
©Space Connect

2026年10月21日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施した「月面太陽電池タワーの実現に向けた概念設計」の企画競争で、株式会社ispace(以下、ispace)と三菱電機株式会社(以下、三菱電機)が、それぞれ契約相手方に選定されたことが発表された。

月面太陽電池タワーは、月南極域で太陽光を利用して発電し、月面活動に必要な電力を供給するための設備である。JAXAは2030年以降の打ち上げを想定している。

本記事では、企画競争の目的や、月面太陽電池タワーが月南極域で求められる理由、今回の概念設計に関連する両社の技術・実績について解説する。

JAXAの月面太陽電池タワー概念設計に2社が選定

今回の企画競争は、持続的な月探査の実現に向け、月南極域で電力を供給する「月面太陽電池タワー」の概念設計について、民間企業から提案を募るものである。

概念設計とは、設備の本格的な設計・製造に進む前に、必要な機能や性能、システムの構成・仕様、実現方法、今後の開発計画などを具体化する工程である。

JAXAは2026年9月2日に「月面太陽電池タワーの実現に向けた概念設計(そのア~イ)」の企画競争を公示。10月21日には、以下の2社をそれぞれ契約相手方に選定した。

区分選定企業
そのア株式会社ispace
そのイ三菱電機株式会社

「そのア」「そのイ」は同じ企画競争に設けられた2つの区分である。各区分の具体的な設計内容や技術的な違い、両社の選定理由については、公表情報からは明らかになっていない。

今後は、選定された企業との契約締結を経て概念設計が進められる。JAXAは、今回の検討結果を踏まえて2027年度以降の設計方針を具体化し、2030年以降の打ち上げを想定している。

なお、今回の選定は概念設計を対象としており、太陽電池タワーの製造や月面への設置に関する契約とは区別される。

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月面太陽電池タワーとは?月南極域で求められる理由

月面太陽電池タワーは、太陽電池とタワー構造を組み合わせ、月面で発電した電力を探査機器などに供給する設備である。

月面太陽電池タワーの設置場所として想定されている月南極域は、将来の有人探査や月面拠点の候補地として注目されている。

月面探査では、探査機等に搭載した太陽電池で発電し、機器の運用に必要な電力を確保する方式が使われている。しかし、月南極域では太陽が地平線近くの低い位置を通るため、クレーターの縁や周囲の地形によって太陽光が遮られ、長時間日陰になる場所もある。

そのため、月南極域で継続的に活動するためには、安定した電力の確保が課題となる。

そこでJAXAが検討しているのが、太陽電池をタワー構造によって地表から高い位置に設置し、地形による影の影響を抑えながら発電する方式である。

太陽光を受けられる時間を長くすることで、探査機器や月面設備への継続的な電力供給につながることが期待されている。

月南極域における太陽電池の設置高さによる日照条件の比較図。地表付近では周囲の地形によって太陽光が遮られる一方、タワーで高所に設置すると影の影響を抑え、太陽光を受けやすくなる。
月南極域で月面太陽電池タワーが必要とされる理由(模式図) ©Space Connect
▲JAXAとエネコートテクノロジーズが開発を進めるペロブスカイト太陽電池は月面太陽電池タワーへの応用も期待されている

概念設計に関連する両社の技術・開発実績

ispace

ispaceは、月着陸船(ランダー)や月面探査車(ローバー)の開発を進め、月への輸送サービスやデータサービスの提供を目指す宇宙スタートアップ企業である。

2023年のミッション1、2025年のミッション2では、それぞれ月面着陸に挑戦。いずれも軟着陸には至らなかったものの、月までの飛行や着陸船の開発・運用を通じて、技術や知見を蓄積してきた。

今回の概念設計では、パートナー企業と協力し、月面太陽電池タワーや電力供給システムの構成・仕様、月着陸船との接続条件などを具体化する方針である。

月着陸船には、太陽電池で発電した電力を管理し、搭載機器へ供給する仕組みが備わっている。こうした電源システムの開発・運用経験に加え、着陸船全体の設計や搭載機器との連携に関する知見は、今回の概念設計でも生かせると考えられる。

▶ispaceの詳細はこちら

三菱電機

三菱電機は、人工衛星や宇宙機の開発・製造に加え、宇宙用の発電・蓄電・送電に関する技術開発にも取り組んできた。

三菱電機は、2025年2月にJAXAの宇宙戦略基金事業「国産太陽電池セル・カバーガラスおよび搭載アレイの開発」の代表機関に選定され、同年8月に契約を締結。同事業では、国内企業と連携し、宇宙用太陽電池の低価格化や量産化に向けた技術開発を進めている。

他にも、2024年5月には、月周回有人拠点「Gateway(ゲートウェイ)」向けの宇宙用リチウムイオンバッテリーをJAXAから受注。

また、JAXAの宇宙探査イノベーションハブでは、電波を利用して離れた場所へ電力を送る24GHz帯の電力伝送に関する共同研究にも参加している。

こうした発電・蓄電・送電にわたる技術開発の経験は、月面太陽電池タワーを含む電力供給システムの構成や性能を検討する上でも参考になると考えられる。

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さいごに

月面で継続的な探査や拠点活動を実現するには、現地で安定して電力を確保する仕組みが欠かせない。月南極域の厳しい日照条件に対応する太陽電池タワーは、将来の月面活動を支える重要な設備の一つとして期待されている。

今回選定されたispaceと三菱電機は、それぞれ月着陸船の開発や宇宙用電源機器の開発で実績を持つ。今後は、両社がそれぞれ取り組む概念設計を通じて、太陽電池タワーの実現に必要な性能や仕様、開発計画がどのように具体化されるかが注目される。

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参考

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