インドの歴史的快挙、世界初の月の南極着陸の目的とは

2023年8月23日、インドの無人月面探査機「チャンドラヤーン3号」が月の南極に着陸し、歴史的な瞬間を迎えた。

この偉業により、インドはアメリカ、ロシア、中国に次いで、月面着陸を果たした4か国目となった。特に、月の南極への着陸は世界で初めての成功である。

本記事では、この成功が持つ意味やそれに伴う影響について詳しく解説している。

3分で分かる、月面着陸の歴史

無人月面着陸成功の歴史

最初に成功したのはアメリカ

レインジャー7号 :

月面着陸(正確には衝突)日 : 1964年7月31日

冷戦の緊張が高まる最中、アメリカは1964年、歴史に名を刻む無人探査機「レインジャー7号」を打ち上げた。

レインジャー7号は、アメリカの月探査プログラムにおいて、初めて成功を達成した探査機である。

その主要な目的は、月面衝突に向けて高速で進行する中、最後の瞬間に至るまでの高解像度の写真を地球に送信することであった。

このミッションは、月の微細な表面の特徴を初めてとらえるための貴重な試みであり、後のアポロ計画の成功への礎となったと広く認識されている。

次に大国ソ連(現在のロシア)

ルナ9号 :

月面着陸日 : 1966年2月3日

続いて、旧ソ連のルナ9号は、世界初の月面軟着陸に成功した無人探査機である。

こちらも同様に冷戦の真っ只中、ルナ9号は1966年の2月3日に月の地表に軟着陸を成功させた。

この偉業は、人類が遠隔操作で他の天体に探査機を送り、その地表の写真を取得する技術的な可能性を示すものだった。探査機が送信した月の地表の写真は、それまでの望遠鏡の観測とは比較にならない詳細なもので、人類が初めて直接目にした月の風景となった。

3番手は日本ではなく、中国!?

嫦娥(じょうが)3号 :

月面着陸日 : 2013年12月14日

嫦娥3号は、中国が初めて月面軟着陸に成功した探査機である。月面車「玉兔(ぎょくと)」とともに、月の表面を調査した。

21世紀に入り、新たな宇宙大国として台頭した中国は、2013年に嫦娥3号を打ち上げ、月探査の新たな時代の先駆けを作った。

嫦娥3号は2013年の12月1日に打ち上げられ、2週間後の12月14日に月面軟着陸を達成した。

このミッションの最大の特徴は、月面車「玉兔」とともに月の表面を探査したことであり、玉兔は、月の地質や環境を直接調査し、数多くの科学データを地球に送信した。

このような3カ国に次いで、今回の「チャンドラヤーン3号」の着陸により、インドは歴史上4番目の月面着陸成功国となった。

各国で月探査が加速、競争が激化

近年、アルテミス計画を筆頭に、宇宙探査や月探査に関する関心が、世界各国や企業の間で再び高まっている。

中国は2013年、2019年、2020年に探査機の月面着陸に成功させ、2019年にアメリカが有人月面着陸計画「アルテミス計画」を発表。

そして、2023年には日本の宇宙ベンチャー企業「ispace」やロシアが月面着陸を試みた。

月面探査の中でも特に南極付近は水(氷)の存在が研究により示唆されており、多くの国や企業がこのエリアに注目。

実際に、ロシアも8月11日に月の南極への着陸を目指したが、成功には至らなかった。

月面の資源は非常に限られており、先に探査機を送り込むことで、独自の権利を確立する競争が繰り広げられているのだ。

今回の月面着陸のポイント

注目ポイントは「技術力の高さ」

様々な国・企業が月面への着陸を目指しているが、1970年代以降、月面着陸に成功した国は中国とインドのみである。

その理由の一つとして、月面着陸には、多くの技術的課題が存在する。

例えば、月には大気がなく、空気抵抗を使った減速や制御ができないため、限られた燃料の中、ロケットエンジンのみでの減速が必要となる。

また、地球との通信の遅延や、月の複雑な地形も障壁となっており、高度な自動制御技術やセンサーを必要とする。

今回インドが着陸に成功した月の南極は特にクレーターや岩が多く、表面の凹凸が激しいため探査機を安全に着陸させる難易度が高いエリアであった。

しかしインドはこれらの困難を乗り越え、その高度な技術力を世界に示したのだ。

月の南極の調査は有人基地建設への大きな一歩

では、チャンドラヤーン3号は今後月の南極で何を探査していくのか。

主な目標の一つはやはり、月面の水の氷を探索すること。

もし発見することができれば、将来的には飲料水として活用したり、酸素と水素に分解してロケットの燃料として利用したりすることができる。

さらに、チャンドラヤーン3号には先進的な科学設備が搭載されており、月の地震活動や土壌温度など、月の環境に関する重要な情報を収集することが期待される。

これらの調査によって、有人月面基地の建設のために必要な情報が多く得られるのだ。

さいごに

いかがでしたか。

チャンドラヤーン3号のミッションは、日本とインドの協力での月面の水資源探査プロジェクト「LUPEX」や「アルテミス計画」にも大きく貢献することになるだろう。

今回の成功は、インドの宇宙技術の高さを証明するものであり、国家の威信をかけて取り組んできたプロジェクトが身を結び、「宇宙大国」の仲間入りを果たした歴史的瞬間でもあった。

今後もインドの動向に注目していきたい。

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