大気圏再突入技術で開発!?超高性能なコンパクト保冷容器とは
©ツインカプセラの画像を使用

2023年10月5日、JAXAベンチャーである株式会社ツインカプセラが、JAXAの宇宙技術を基にし、タイガー魔法瓶株式会社とともに開発を進めてきた超高性能な保冷容器(β版:数量限定)の提供を開始したと発表した。

「宇宙の技術が地上に逆輸入された」ものであるが、具体的にどのような技術が、どのように役立てられるのだろうか。

本記事では、ツインカプセラが解決する課題と、超高性能保冷容器の特長についてご紹介する。

ツインカプセラの保冷容器の画像
©ツインカプセラ

ツインカプセラとは

ツインカプセラは、2021年5月に設立した、JAXAベンチャー認定企業。JAXAの宇宙ステーション補給機である「こうのとり」(HTV)に搭載されている小型回収カプセル[※]の技術を基に、断熱保冷容器技術の社会実装を目指している。

このJAXAの小型回収カプセルは、2018年11月、国際宇宙ステーションの宇宙実験サンプル(タンパク質結晶等)を保冷状態で地上に回収することに初めて成功したもの。

カプセル正面の気体の温度が10000℃を超える大気圏再突入中も含め、回収までの5.6日間、保冷容器内のサンプルの温度変化は0.3℃と、高い断熱保冷性能が実証されている。

この技術を地上社会にも役立てるため、ツインカプセラは、熱制御技術で様々な家電製品を開発するタイガー魔法瓶株式会社との業務提携も行いながら、超高性能な保冷容器の開発を進めてきた。

こうのとりの保冷回収技術
こうのとりの保冷回収技術 ©ツインカプセラ

ツインカプセラの保冷容器が解決する地上の課題

同社がこの保冷容器を開発する背景には、医療系分野における保冷輸送の課題がある。

医療系分野では、検体、ワクチン、医薬品等を、適切な温度に維持することが不可欠となるが、輸送中は確実な温度維持が難しく、サンプルの廃棄など経済的な損害がしばしば発生。

また、少量の保冷輸送であっても、大型の保冷ボックスに大量の保冷剤やドライアイスを使用する必要があるため、特に遠隔地への輸送では高額な輸送コストがかかっている。

ツインカプセラの断熱保冷容器は、これまで困難だった「確実な温度維持」と「低コストでの保冷輸送」の両立という課題を解決するのだ。

小型かつ高性能!? ツインカプセラの保冷容器の特長とは

同社が開発する保冷容器の特長は大きく分けて2つ。

様々な温度帯で、約3日以上温度を維持

まず、同社の保冷容器は-75℃、-20℃、-10℃、4℃、20℃、37℃など、医療系分野でニーズの高い温度領域をはじめ、様々な温度帯で、約3日以上、温度を維持する。

国内の保冷輸送では、丸2日の保冷ができれば離島を除く国内全体をカバーでき、丸3日であれば、週末跨ぎ輸送(金曜発送、月曜受け取り)が可能に、さらに、丸4日であれば、天候不良等での欠航リスクを考慮した上で、離島への輸送もカバーする。

高い保冷性能により可能になること
©ツインカプセラ

小型の断熱保冷容器のみで温度を維持

次に、同社の断熱保冷容器は体積が1.3Lと非常に小型であり、バッテリー等を使用せず、保冷容器のみで温度を高性能に維持することができる。

従来の保冷コンテナでは、保冷性能がコンテナ内の断熱材や保冷剤の量に概ね依存するため、下図の赤線で囲まれた「小型かつ高性能」の領域の性能を出すことは簡単ではなかったのだ。

一方、ツインカプセラの保冷容器は宇宙技術を使用したことで上記の性能を達成。

輸送コストの削減が期待できる他、常温宅配便での保冷輸送を可能とし、航空便での輸送にも対応可能なのである。

既存保冷コンテナとの性能比較
©ツインカプセラ

さいごに

いかがでしたか。

宇宙技術は、限られた体積や電力量、高温かつ低温など、厳しい環境下で活躍している。そのような技術を地球での生活に逆輸入することで、新たな価値・サービスを生むことができる。

今回のスリム型”超”断熱保冷容器は、現在β版を数量限定で提供しているという。

また、2023年10月11日(水)~13日(金)にパシフィコ横浜にて開催予定のBioJapan 2023に、ツインカプセラとして初出展を行い、この断熱保冷容器を展示するとのこと。

ぜひ、興味がある方は見に行ってみてはいかがだろうか。

参考

再突入カプセル技術活用の「小型・超高性能断熱保冷容器」 β版をリリース/BioJapan 2023に出展

【業務提携】JAXA発ベンチャー・ツインカプセラとタイガー魔法瓶 再突入カプセル技術スピンオフの”超”断熱保冷容器事業を加速

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

フォローで最新情報をチェック

おすすめの記事