アークエッジ・スペース、次世代の衛星測位「LEO-PNT」実証へ|'28年度に衛星2機打ち上げ
©Space Connect

2026年9月18日、株式会社アークエッジ・スペースは、低軌道衛星を使った新たな衛星測位システム「LEO-PNT」の商用化に向け、軌道上実証プロジェクトを本格始動した。

2028年度中に2機の超小型衛星を打ち上げ、宇宙から測位信号を送信。地上で受信して位置を求めるところまでを一貫して検証する計画だ。

LEO-PNTとはどのような仕組みなのか。本記事では、今回の実証内容、GPSとの違いなどを解説する。

アークエッジ・スペースが開発するLEO-PNTとは?

位置情報などを提供する衛星測位システム

LEO-PNT(Low Earth Orbit Positioning, Navigation and Timing)は、地球に近い低軌道を周回する衛星から信号を送り、位置・航法・時刻に関する情報を提供する衛星測位システムである。

衛星測位は、人工衛星から送られる電波を利用して、地上の位置や正確な時刻を求める技術だ。スマートフォンやカーナビなどの位置情報だけでなく、通信や金融、電力などの正確な時刻同期にも利用されている。

こうした衛星測位システムの代表例には、米国のGPSや欧州のGalileo、日本の準天頂衛星システム「みちびき」などが挙げられる。

LEO-PNT衛星コンステレーションのコンセプトイメージ
LEO-PNT衛星コンステレーションのコンセプトイメージ(出典:アークエッジ・スペース/PR TIMES)

GPSとの違いは地球との距離

LEO-PNTがGPSなど従来の衛星測位システムと大きく異なる点は、衛星が地球に近い場所を飛ぶことである。

GPS衛星は、地上から約2万km離れた中軌道を周回している。一方、アークエッジ・スペースが開発を進めるLEO-PNTは、概ね高度500〜1,200kmの低軌道に衛星を配置する構想だ。

従来の衛星測位システムと比べて地上の利用者との距離が近くなるため、地上へより強い測位信号を届けられることが利点の一つである。ビルなどによって従来の衛星測位信号が遮られたり弱まったりしやすい都市部でも、測位の精度や利用しやすさ、安定性の向上が期待される。

LEO-PNT商用化に向け、超小型衛星2機打ち上げへ

アークエッジ・スペースは、低軌道衛星から測位信号を送る「LEO-PNT」商用化に向けた軌道上実証プロジェクトにて、同社の6U衛星汎用バスを活用した実証衛星2機を2028年度中に打ち上げる計画だ。

2機の衛星では、自社開発の軌道・時刻決定モジュールや測位信号生成モジュールなどを宇宙空間で動作させ、将来の商用LEO-PNTコンステレーションに必要な技術を検証する。

実証では、衛星は高度約550kmの太陽同期軌道を周回する予定で、L6帯とC1帯という2種類の周波数帯を使った測位信号を地上へ送信する。加えて、地上での信号受信や測位処理までを一貫して行い、宇宙から地上の利用者までをつなぐシステム全体を評価する。さらに、既存の衛星測位システムとの相互運用性についても検証する計画だ。

将来的には、今回の実証で得られた技術を活用し、複数の低軌道衛星で構成する商用LEO-PNTコンステレーションの実現を目指している。

宇宙業界の人材マッチングサービス スぺジョブ 広告バナー
[PR]

L6帯とC1帯、2種類の信号を使う理由

今回の実証では、「L6帯」と「C1帯」の2種類の周波数帯を利用する。それぞれ異なる特徴を持ち、アークエッジ・スペースは両者を組み合わせた測位システムの成立性や実用性を検証する。

「みちびき」でも使われるL6帯

L6帯は、日本の準天頂衛星システム「みちびき」が提供する高精度な測位補強サービスでも使われている周波数帯である。

アークエッジ・スペースによると、既存の衛星測位システムで広く使われているL1帯やL5帯と比較して電波利用の集中が少ないほか、既存のGNSS受信技術を活用しやすいという特徴がある。

そのため、LEO-PNTに対応した受信機の開発や普及につなげやすいとされている。

将来利用を見据えるC1帯

もう一つが、L帯より高い周波数を使うC1帯である。

C1帯は、電離層による信号遅延の影響が小さいほか、波長が短いためアンテナ素子を小型化しやすい[/marer]という特徴がある。

また、国際的な電波利用のルールを決める世界無線通信会議(WRC)では、C帯の一部である5030〜5250MHz帯について、LEO-PNTでの利用も視野に、無線航行衛星業務への周波数分配拡大の可能性を2031年までを目途に検討することが決議されている。

今後、国際的なルール整備が進めば、C帯を衛星測位に活用できる範囲が広がる可能性がある。

JAXA委託事業での技術検討から軌道上実証へ

アークエッジ・スペースは今回のプロジェクト以前から、LEO-PNTの技術検討を進めてきた。

2025年9月から2026年3月には、JAXAから委託された「低軌道測位衛星システム(Dedicated LEO PNT)の要素技術及び関連するシステムの検討」を実施。

この事業では、GPSなど既存の衛星測位システムの信号を利用できない状況でも、位置や時刻の情報を提供できる仕組みの実現に向けた技術を検討した。

具体的には、既存の衛星測位システムに頼らず、低軌道衛星自身の軌道や時刻を決定する技術をはじめ、測位信号の設計や地上で信号を受信するための技術などを検討している。

今回の自社プロジェクトでは、こうした技術検討で得た成果を活用し、実際に衛星を打ち上げて宇宙空間で技術を検証する段階へ進む。

さいごに

アークエッジ・スペースは2028年度中に2機の実証衛星を打ち上げ、低軌道からの測位信号配信や地上での受信、測位処理までを一貫して検証する計画だ。

まず2機の衛星で必要な技術を宇宙空間で検証し、その先に商用LEO-PNTコンステレーションの構築を目指す。

スマートフォンや車だけでなく、ドローン、ロボット、通信、金融など幅広い分野を支える「測位」。GPSや「みちびき」など既存の衛星測位システムを補完するとともに、既存の信号が利用できない状況でも位置・時刻情報を提供できる環境を構築できるかが今後の焦点となる。

宇宙業界では現在、様々な企業が人材を募集している。興味のある方は業界特化型の転職プラットフォーム「スペジョブ」をぜひチェックしていただきたい。

スぺジョブ

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

フォローで最新情報をチェック

おすすめの記事