「衛星を撮る衛星」豪HEOが約38億円調達|日本の防衛省なども支援
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2026年9月21日、オーストラリアの宇宙企業HEOは、シリーズBで2,500万米ドル(1ドル150円換算で約37億5,000万円)を調達したと発表した。

HEOは、衛星から別の衛星やスペースデブリを撮影・分析する企業であり、支援先には、日本の防衛省やアストロスケールなども含まれる。

HEOが提供するサービスの仕組みと目的、今回の資金調達による静止軌道への進出、アストロスケールとの関係を解説する。

HEOが提供する「衛星が衛星を撮る」サービス

衛星を撮影する「NEI」サービスとは

HEOは、人工衛星に搭載されたカメラを使い、軌道上にある別の人工衛星やスペースデブリを撮影するNEI(Non-Earth Imaging)サービスを提供している。

撮影には、衛星同士が近くを通過する機会を利用する。両者の位置関係や時刻、太陽光の条件を計算し、撮影に適した条件がそろった際にカメラを向ける。

撮影した画像からは対象機体の形状や向き、太陽電池パネルやアンテナの状態など、様々な情報を確認することができる。

例えば、打ち上げ後に太陽電池パネルが正常に展開しているか確認したり、衛星に不具合が発生した際に、機体の姿勢や外観から原因を探る手掛かりを得たりするために利用される。衛星から十分な情報を取得できない場合でも、別の衛星から撮影することで外部から状態を確認できる点がNEIのメリットである。

50基を超える軌道上センサーを組み合わせる

HEOは、自社で開発したNEI専用センサーと、提携企業が運用する衛星のカメラを組み合わせて撮影網を構築している。

同社によると、2023年のシリーズA以降、自社開発のセンサー8基を設計・製造し、軌道上へ配備した。これらのセンサーはHEO独自の衛星ではなく、提携企業の衛星や宇宙機に搭載して運用されている。

さらに、アクセルスペースやBlackSky、Satellogicなどが運用する既存の地球観測衛星のカメラもNEIに活用している。

こうした自社センサーと提携先のカメラを合わせ、HEOは現在、50基を超える軌道上センサーへアクセスできる。自社で多数の衛星を保有するのではなく、複数の衛星事業者と連携することで、撮影機会を増やしている。

撮影依頼から分析までを独自ソフトウェアで管理

こうした複数のセンサーを利用した撮影を管理するのが、HEOのソフトウェア「HEO Inspect 3.0」である。

HEO Inspectでは、撮影可能な機会を探し、利用する衛星へ撮影を指示したうえで、取得した画像の処理や分析まで行う。

利用者は過去に撮影された画像を確認できるほか、新たな撮影を依頼し、対象となる宇宙物体の画像や分析結果を受け取ることができる。

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約38億円の調達で静止軌道へ進出

シリーズBの参加企業と資金使途

今回のHEOのシリーズBは、豪投資会社Beaten Zone Venture Partnersが主導した。オーストラリア政府系のNational Reconstruction Fund Corporation(NRFC)のほか、Dcode Capital、Wunala Capital、既存投資家のAirtree Ventures、Salus Venturesなどが参加している。

調達資金は、新たなセンサーの配備や衛星運用会社との提携拡大、画像を分析するソフトウェア・AIモデルの開発に充てる。

2026年後半に静止軌道向けセンサーを配備

HEOはこれまで、主に低軌道を対象にNEIの撮影網を構築してきた。今回の資金調達では、新たに静止軌道まで撮影範囲を広げる

静止軌道は、赤道上空の高度約3万6,000kmに位置し、通信衛星や気象衛星、安全保障に関わる衛星などが運用されている。しかし、HEOによると、静止軌道上の衛星を宇宙から撮影した商用画像は限られている。

同社は、静止軌道向けセンサーを搭載する最初の2回の打ち上げをすでに確保しており、2026年後半に配備を始める。2027年には、静止軌道上の物体を安定して繰り返し撮影できる体制の構築を目指す。

静止軌道には、第2世代のNEIカメラ「Adler Mk2」を投入する計画だ。同カメラは、放射線や温度変化が大きい静止軌道で5年以上運用できるよう設計されている。撮影データから宇宙機を自動検出し、対象が写った画像だけを地上へ送る機能も備える。

HEOのサービスが必要な理由

防衛分野では衛星の状態・挙動を把握

防衛・情報機関では、軌道上にある宇宙物体の識別や、その能力・行動を把握するためにNEIを活用できる。

NEIによる撮影画像から確認できる衛星の形状や向き、太陽電池パネルやアンテナなどの外観情報は、正体が十分に分かっていない宇宙物体や他国の衛星の種類、搭載機器、能力等を分析する手掛かりとなる。

また、自国や同盟国の衛星へ接近するなど通常と異なる動きがあった場合に、その状況を詳しく確認するためにも利用できる。

今回の資金調達でも、安全保障分野の需要が強く意識されている。HEOの支援実績には米国家偵察局、豪国防省、日本の防衛省、英国宇宙庁などが挙げられている。

静止軌道に進出することで、通信や気象、安全保障を支える重要な衛星も撮影対象に加わることになる。出資したNRFCは、HEOの撮影網によって、オーストラリアや同盟国の防衛・情報機関が関心を持つ宇宙物体の90%を監視できるようになるとしている。

衛星の異常確認や修理・回収を支援

NEIは、打ち上げ直後の状態確認や、不具合発生時の原因調査などといった民間衛星の運用にも利用できる。

衛星運用者は通常、衛星から送られてくる通信やセンサーデータをもとに機体の状態を把握する。しかし、通信が途絶えたり、取得できるデータだけでは不具合の原因を特定できなかったりする場合、実際に機体がどのような状態になっているのかを確認することは難しい。

NEIを使えば、別の衛星から撮影することで、太陽電池パネルやアンテナが正常に展開しているか、機体が正しい方向を向いているか、回転していないかなどを外部から確認できる。

また、故障した衛星の修理や燃料補給、スペースデブリの除去など、別の宇宙機が対象へ接近する場面でもNEIを活用できる。対象の大きさや姿勢、回転状態、機体のどこを向いているかなどを事前に把握することで、接近や捕獲方法を検討するための情報を得られる。

HEOとアストロスケールの関係

HEOとアストロスケールは、宇宙物体の監視と軌道上サービスで協力している。

アストロスケールは、スペースデブリの除去や衛星の点検・修理など、宇宙機を対象へ接近させて行うサービスを手掛ける。こうしたミッションでは、接近する前に対象の形状や姿勢、回転状態などを把握する必要がある。

そこで活用できるのがHEOのNEIである。HEOは対象を別の衛星から撮影・分析し、アストロスケールが接近方法やミッション計画を検討するための情報を提供できる。

両社の役割は似ている部分もあるが、観測方法は異なる。HEOは、複数の衛星が対象の近くを通過する機会を利用して撮影する。一方、アストロスケールはRPO(ランデブ・近傍運用)技術を使い、特定の対象へ宇宙機を接近させて詳しく観測する。

両社は2025年9月に3年間の協力覚書を締結しており、これまで低軌道で進めてきた協力を、静止軌道や静止トランスファー軌道にも広げ、宇宙物体の状態把握や軌道上サービスの対象選定などで連携する方針だ。

さいごに

EOは、既存の地球観測衛星や自社開発のセンサーを活用し、宇宙空間から別の衛星やスペースデブリを撮影するNEIサービスを展開している。

今回の約38億円の資金調達では、これまで主に低軌道で構築してきた撮影網を静止軌道へ拡大する。通信や安全保障などで重要な衛星が多く運用される静止軌道まで観測対象が広がれば、HEOが提供できる情報の範囲も大きく広がる。

NEIは、防衛分野での宇宙物体の監視だけでなく、衛星の不具合確認や、修理・除去などの軌道上サービスを支える情報としても利用できる。アストロスケールとの連携は、宇宙物体を「撮影して状態を把握する」技術と、「対象へ接近してサービスを行う」技術が組み合わされつつある例といえる。

今後は、2026年後半に予定する静止軌道向けセンサーの配備が進み、2027年に継続的な撮影体制を構築できるかが注目される。

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スぺジョブ

参考

HEO公式発表

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