Amazonの衛星事業、スマホと直接通信へ|最大5,105機申請、Appleとも連携
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2026年7月27日、Amazonは、スマートフォンなどと人工衛星を直接つなぐ衛星通信サービス「Amazon Leo Direct-to-Device(D2D)System」について、米連邦通信委員会(FCC)に最大5,105機の低軌道衛星の打ち上げ・運用を申請したと発表した。

本記事では、Amazon LeoのD2Dシステムの概要や既存の衛星通信サービスとの違い、Globalstar買収によるメリット、通信を支える技術について解説する。

最大5,105機でスマートフォンとの直接通信網を構築

D2Dサービス計画の概要

AmazonがFCCに申請した「Amazon Leo Direct-to-Device(D2D)System」は、低軌道衛星と対応するスマートフォンなどを直接つなぐ衛星通信システムである。

最大5,105機の衛星を配備し、携帯電話の基地局が届かない地域でも、音声通話、メッセージ、データ通信、緊急通信を利用できる環境の構築を目指す。衛星の配備は2028年に開始する予定だ。

利用対象には、衛星通信に対応した半導体を搭載する大手メーカーのスマートフォンを含め、システムに対応するあらゆるモバイル端末を想定。

各国の携帯電話会社などと連携してD2Dサービスを提供する方針で、地上の携帯電話網を置き換えるのではなく、基地局の整備が難しい地域や、災害などによって地上設備が利用できなくなった地域の通信を補う役割を担う。

個人向けの通信に加え、災害対応、世界各地で運用する車両などの管理、遠隔地の作業現場や物流網における通信、センサーをインターネットにつなぐIoT通信などへの活用も見込まれている。

既存のAmazon Leoサービスとの違い

Amazon Leoの既存ブロードバンドシステムとD2Dシステムの主な違いは、衛星との通信に専用アンテナを使用するか、対応するモバイル端末を直接接続するかにある。

Amazon Leoが現在構築しているブロードバンドサービスでは、利用者が「Leo Nano」「Leo Pro」「Leo Ultra」と呼ばれる専用アンテナを設置し、低軌道衛星から高速・低遅延のインターネット接続を受ける。個人だけでなく、企業や政府機関などへの提供も想定されている。

一方、D2Dシステムは、専用アンテナを介さず、対応するスマートフォンなどと衛星を直接つなぐ仕組みである。Amazonは今後、接続方法が異なるブロードバンドサービスとD2Dサービスの両方を展開する方針だ。

具体的には、新たなD2Dシステムを、Amazon Leoの第1世代・第2世代ブロードバンド衛星システムや、Amazonが2026年4月に買収に向けた最終合併契約を締結したGlobalstarの衛星コンステレーション「HIBLEO」「C-3」と並行して運用する計画である。

Amazon Leoは2026年7月時点で、第1世代ブロードバンド衛星を390機以上軌道上に配備している。Amazonは、初期の対象緯度帯で固定通信サービスを展開できる通信範囲を確保したとしており、2026年後半からサービスを順次開始する予定だ。

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Globalstar買収計画がD2D構想の基盤に

Amazon Leoがスマートフォンと衛星を直接つなぐD2Dサービスへ進出するうえで、その基盤となるのがGlobalstarの買収計画である。

AmazonとGlobalstarは2026年4月、AmazonがGlobalstarを買収する最終合併契約を締結した。買収は、必要な規制当局の承認などを経て、2027年に完了する予定だ。

Globalstarの周波数をAmazon LeoのD2Dに活用

Globalstarは、低軌道衛星や地上設備、衛星通信の運用技術に加え、世界各地で利用するための承認を得た移動衛星通信用の周波数免許を保有している。Amazonは買収によって、これらの資産をAmazon LeoのD2Dサービスに取り込む計画である。

電波の周波数は、事業者が自由に選んで使用できるものではない。同じ地域で複数の通信システムが同じ周波数を使用すると、電波が干渉して通信に影響を与える可能性があるため、衛星通信で周波数を利用するには、国際的な調整や各国・地域の制度に基づく許可が必要となる。

また、利用できる周波数の範囲は限られている。国際電気通信連合(ITU)は、周波数を限りある天然資源と位置づけ、合理的かつ効率的に使用する必要があるとしている。

このためAmazonは、Globalstarの買収によって、衛星や地上設備を取得するだけでなく、D2D通信の事業化に必要な周波数と各国での運用基盤を一体で確保できる。各国で周波数利用の調整や許可取得を一から進める場合と比べて、Amazon LeoのD2Dサービスを早期に展開しやすくなる点が大きなメリットだ。

Appleと連携し、iPhoneの衛星通信をAmazon LEOが支援

Globalstarの衛星通信網は、すでにAppleのサービスに利用されている。iPhone 14以降のモデルとApple Watch Ultra 3では、Globalstarの衛星網を通じて、携帯電話回線やWi-Fiが届かない場所から緊急サービスへ連絡できる。

このほか、対応する端末では、家族や友人とのメッセージ、位置情報の共有、ロードサービスへの連絡なども衛星経由で利用できる。

そこで、Globalstarの買収計画にあわせて、AmazonとAppleは対応するiPhoneとApple Watch向けの衛星通信をAmazon Leoが支えることで合意している。買収完了後、AmazonはGlobalstarの既存衛星を活用し、現在提供されているAppleの衛星通信サービスを継続する。

さらには、今後配備されるAmazon LeoのD2D衛星網を使った将来の衛星通信サービスについてもAppleと連携する方針だ。Globalstarの買収によって、AmazonはD2Dに必要な周波数や通信基盤を取り込むとともに、Apple端末向けの既存サービスを継続し、将来の機能拡張へつなげる計画である。

D2Dを支えるAmazon Leoの通信技術

Amazon LeoのD2Dシステムでは、Globalstarから取得する周波数を有効に活用しながら、周辺の衛星通信や地上通信への干渉を抑える必要がある。そのためAmazonは、電波を必要な場所へ集中させる技術や、通信状況に応じて信号の送り方を調整する技術を導入する。

必要な場所へ電波を集中させるビーム形成技術

1つ目に、複数のアンテナから送る電波を調整し、特定の方向へ集中させる「デジタルビームフォーミング」である。広い範囲へ一様に電波を送るのではなく、通信が必要な地域へ電波を向けることで、限られた電力と周波数を効率的に使える。

さらに、時間や通信需要に応じて電波を送る地域を切り替える「ビームホッピング」も組み合わせる。利用者が多い地域へ通信能力を重点的に割り当てることで、不要な電波の送信を減らし、通信範囲と容量を確保する仕組みだ。

干渉を抑え、通信品質を高める信号処理技術

2つ目に、割り当てられた周波数帯の外へ電波が漏れることを抑え、隣接する周波数を利用するほかの通信システムへの干渉を軽減する。

また、異なる2方向の電波を同時に受信する「二重偏波受信」により、同じ周波数帯から得られる情報量を増やす。送信電力が小さいスマートフォンからの信号も、より安定して受信できるようにする狙いがある。

通信状態に応じてデータの変換方法を切り替える「適応変調・符号化」も採用する。電波の状態が良いときは通信速度を高め、状態が悪いときは速度を抑えて接続の安定性を優先する。

衛星上で信号を処理し、レーザー通信で経路を調整

3つ目に、D2D衛星は、スマートフォンなどから受信した信号をそのまま地上へ送り返すのではなく、衛星上で処理してから中継する。Amazonは、軌道上で信号を処理することで通信性能を高めるとしている。

各衛星には、衛星同士をレーザーで結ぶ光衛星間通信も搭載する。受信したデータを複数の衛星間で中継し、通信状況に応じて適切な地上局まで送ることで、衛星コンステレーション全体の通信経路を柔軟に調整する。

Amazon Leo参入で競争が広がる衛星D2D市場

スマートフォンと衛星を直接つなぐD2D通信には、Amazon Leoのほか、SpaceXのStarlinkやAST SpaceMobileなども取り組んでいる。

SpaceXは、4G LTE端末を衛星と直接つなぐ「Starlink Direct to Cell」を展開している。携帯電話会社との連携を通じて4億人以上が利用可能な地域へサービスを広げており、第1世代のDirect to Cell衛星コンステレーションとして650機以上を打ち上げた。

AST SpaceMobileは、専用端末やスマートフォンの改造を必要とせず、一般的なスマートフォンへ衛星から4G・5G通信を提供するネットワークを構築している。日本では楽天モバイルと連携し、2025年4月に市販のスマートフォンを使った衛星経由のビデオ通話に成功した。両社は2026年第4四半期から国内サービスの提供を目指している。

Amazon Leoは2028年からD2D衛星を配備するため、実証や商用化ではStarlinkやAST SpaceMobileが先行する。一方、AmazonはGlobalstarの周波数や衛星通信基盤を取得し、Appleとの連携も活用して市場へ参入する計画だ。

さいごに

Amazon Leoは、最大5,105機の新たなD2D衛星コンステレーションを構築し、対応するスマートフォンへ音声通話、メッセージ、データ通信、緊急通信を提供する計画である。

Globalstarの買収によって、D2Dに必要な周波数や衛星通信基盤を取り込み、すでに衛星通信を利用しているiPhoneやApple Watchのサービスも継続する。新たな衛星網を一から構築するだけでなく、既存の通信基盤とAppleとの連携を組み合わせる点がAmazonの戦略の特徴だ。

今後は、FCCによる申請の審査やGlobalstar買収の完了に加え、各国ではどの携帯電話会社と連携し、どの端末からD2Dサービスを開始するのかが焦点となる。

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参考

How Amazon Leo plans to connect mobile devices from space

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