
2026年8月18日から23日まで、楽天モバイル 最強パーク宮城で開催された「夏スタ! STARLIGHT GALAXY」に、宇宙港をテーマとしたVRコンテンツ「スペースドーナツ ~東北からロケットを飛ばそう!~」が登場した。
企画・監修を手がけたのは、スペースポートの企画・運営などを行うASTRO GATE株式会社である。
本記事では、SPACE CONNECT編集部が実際に体験したVRコンテンツの内容とASTRO GATEへの取材をもとに、今回の企画の狙いや、東北で進む宇宙輸送産業の動きを紹介する。
楽天イーグルスの球場に「宇宙港」が登場
楽天モバイル 最強パーク宮城で開催された「夏スタ! STARLIGHT GALAXY」では、ASTRO GATEが企画/監修したVRコンテンツ「スペースドーナツ ~東北からロケットを飛ばそう!~」体験ブースが設置された。コンテンツのプロデュース/制作はSTYLYが実施している。
ロケット打ち上げを支える「宇宙港」をVRで体験
「スペースドーナツ ~東北からロケットを飛ばそう!~」では、VR空間に再現された宇宙港を巡りながら、ロケットの打ち上げまでに必要な準備を体験できる。
参加者は、燃料補給や管制、搭乗準備などのミッションを進め、最後には有人ロケット「イーグル・ワン」に乗り込み、打ち上げから宇宙へ向かうまでを体験する。ロケットを外から眺めるだけではなく、自分自身が宇宙港の中を動き、打ち上げに関わり、最後には宇宙へ飛び立つまでが一つのストーリーになっている。


企画で意識したのは、ロケットが飛び立つ瞬間だけではなく、その打ち上げを支える宇宙港の存在にも目を向けてもらうことだったという。
ロケットの打ち上げには、発射設備だけでなく、管制や燃料供給などさまざまな設備や役割が関わっている。一方で、それらを一つずつ詳しく説明すると、宇宙に詳しくない人や子どもにとっては難しくなりやすい。
そこで今回は、宇宙港について文章を読んで学ぶのではなく、実際にその中を巡り、手を動かしながら打ち上げ準備を進める体験へと落とし込んだ。宇宙港の仕組みを理解することを前面に出すのではなく、「ロケットを打ち上げて、自分も宇宙へ行く」という楽しさの中に、宇宙輸送を支える設備や役割を自然に知る要素を組み込んでいる。
野球観戦に訪れた人へ、宇宙産業の取り組みを届ける
今回の企画には、宇宙業界の外にいる人にも、宇宙関連の取り組みを知ってもらいたいという狙いがあった。
宇宙関連のイベントや事業を通じた情報発信では、どうしても宇宙に関心を持つ人や業界関係者が中心になりやすい。一方、プロ野球の試合には、子ども連れの家族をはじめ幅広い層が訪れる。ASTRO GATEは、こうした場だからこそ、これまで宇宙産業に触れる機会がなかった人にも情報を届けられると考えたという。
そのため、VRで描かれた宇宙港には、架空の設備だけでなく、AstroX、将来宇宙輸送システム、岩谷技研など、実際に宇宙輸送分野で開発を進める企業の取り組みも取り入れられた。体験を楽しんでもらうだけでなく、その先に実在する企業や技術があることを知ってもらう狙いだ。
6日間で約300人がVRを体験し、中にはゴーグルを外した直後に「もう一回やりたい」と話す子どももいたという。また、スタッフから東北で実際に宇宙関連の事業が進められていることを聞き、興味を示す参加者も見られた。
野球観戦という宇宙とは異なる目的で訪れた人に、VRをきっかけとして宇宙輸送や関連企業を知ってもらう。今回の取り組みは、宇宙産業と一般の人々との接点を広げる機会となった。



東北で進む「宇宙港」と宇宙輸送産業
東北では現在、今回のVRテーマとなった宇宙港の取り組みや、ロケットの研究開発・試験、宇宙関連企業の集積など、宇宙輸送を支える基盤づくりが進んでいる。ASTRO GATEはこのような取り組みに深くかかわる企業の1つだ。
研究・試験拠点を生かして進む東北の産業集積
東北では、宮城県角田市、秋田県能代市、福島県南相馬市を中心に、宇宙関連産業の広域的な連携が進み始めている。
角田市には、ロケットエンジンなどの研究開発を行うJAXA角田宇宙センター、能代市にはロケットエンジンの燃焼試験などを行うJAXA能代ロケット実験場が立地する。一方、南相馬市では、福島ロボットテストフィールドなどの実証環境を背景に、AstroXをはじめとする宇宙関連企業の進出や事業展開が進んでいる。。
こうした地域の特徴を生かすため、東北経済産業局は2025年9月、角田市、能代市、南相馬市と宇宙関連産業振興に向けた広域連携の検討を開始した。2026年3月にはJAXAも加わった「東北宇宙産業検討会」を設置し、宇宙関連企業のさらなる集積や人材育成、実証試験環境、地域企業を含むサプライチェーンの構築などについて検討を進めている。
ASTRO GATEは、この動きに深く関わる企業の一つである。同社は2024年に南相馬市と宇宙関連事業の促進に向けた連携協定を締結し、ロケット打ち上げに必要な設備や運用を支えるスペースポート事業を進めている。また、南相馬市で実施されたAstroXのロケット打ち上げ実証では、スペースポートオペレーターとして運営を支援した。
2026年8月には、東北経済産業局から、東北を中心とした宇宙産業集積地における試験環境やサプライチェーンの構築に向けた調査を受託。宇宙インフラ施設の整備・運営、人材、サプライチェーンなどを調査し、東北における宇宙産業集積に向けた課題や解決策を検討している。
このように東北では、既存の研究・試験施設と、新たに進出する宇宙企業をつなぎながら、宇宙輸送を支える産業基盤を地域全体で形成しようとする動きが広がっている。
VRに登場した宇宙企業 進む次世代宇宙輸送の開発
今回のVRには、AstroX株式会社、株式会社岩谷技研、将来宇宙輸送システム株式会社が登場した。3社はいずれも、人や物を宇宙へ運ぶ技術の実現を目指している。
AstroX|南相馬から「気球×ロケット」の宇宙輸送へ
AstroXは、福島県南相馬市を主要な開発拠点の一つとして、気球でロケットを高高度まで運び、空中から打ち上げる「Rockoon方式」の宇宙輸送システムを開発している。
2023年4月には南相馬市と宇宙関連産業の推進に向けた連携協定を締結。市内には「AstroX南相馬MSL工場」を構え、ロケットの開発や製造を進めるほか、成層圏環境を地上で再現する試験設備「SETS」の整備にも取り組んでいる。
2026年には、大型気球とロケットを組み合わせた統合試験を南相馬市で実施。連携協定の締結から開発拠点の整備、実証までを南相馬市で進めており、AstroXは同地域における宇宙輸送産業の集積を示す代表的な企業の一つである。
岩谷技研|気球技術で宇宙へのアクセスを広げる
岩谷技研は北海道を拠点に、高高度ガス気球と気密キャビンを使った宇宙遊覧の実現を目指す企業である。
2024年には高度20kmを超える有人飛行に成功するなど、気球を活用して人を成層圏まで運ぶ技術の開発を進める。
東北との接点の一つが、AstroXとの技術協力だ。2022年には、AstroXと千葉工業大学が主体となって実施したRockoon方式のモデルロケット空中発射試験に、岩谷技研製の気球が採用された。
有人宇宙遊覧だけでなく、同社が培ってきた高高度気球の技術は、様々な分野で活用されている。
将来宇宙輸送システム|南相馬で再使用ロケットの開発を加速
将来宇宙輸送システムは、人や貨物が宇宙と地上を繰り返し往復できる再使用型宇宙輸送システムの実現を目指している。
同社は南相馬市と連携協定を締結し、福島支社や開発拠点を設置。2026年2月には、南相馬市の「MLC SPACE LAB」内に新工場を開設した。
ここでは、ロケットの帰還・着陸に必要となる技術実証機や試験環境の開発を進めており、2026年度には実機を使った飛行試験も計画している。
機体構造や着陸装置の製造では浜通り地域の製造業とも連携しており、「メイドイン浜通り」の開発体制を構築している。宇宙輸送システムそのものの開発だけでなく、地域企業を宇宙産業の供給網へ取り込む動きも進んでいる。
さいごに
東北では、南相馬市をはじめ各地で宇宙輸送の研究開発や実証、企業集積が進んでいる。こうした産業を地域に根付かせるには、企業や設備を集めるだけでなく、一般の人に知ってもらう機会をつくることも重要だ。
今回のVRイベントは、野球場という普段は宇宙産業と接点のない場所で、その取り組みを身近に伝える新たな試みとなった。宇宙産業の裾野を広げていくうえで、こうした一般層との接点づくりも、地域に宇宙産業を根付かせる重要な要素となるだろう。
宇宙業界では現在、様々な企業が人材を募集している。興味がある方は、業界特化型の転職プラットフォーム「スペジョブ」をチェックしていただきたい。

参考
ASTRO GATEが、楽天イーグルス【夏スタ! STARLIGHT GALAXY】外周イベントにて、VR体験コンテンツの企画・プロデュースを手がけました
















