
米連邦通信委員会(FCC)は2026年7月22日、衛星や地球局のライセンス規則を定める「Part 25」を廃止し、新たな「Part 100」へ再編することを決定した。
本記事では、Part 100によってライセンスの申請・審査手続きがどのように変わるのか、新規則が宇宙産業に与える影響とあわせて紹介する。
FCC、衛星ライセンス規則をPart 100へ再編
FCCは2026年7月22日、「Space Modernization for the 21st Century」と題するReport and Orderを採択し、正式文書「FCC 26-47」を翌23日に公開した。
FCCは、衛星や地球局のライセンスを規定してきた従来のPart 25を削除し、新たなPart 100「Space and Earth Station Services」へ置き換える。
Part 25は、米国で衛星や地球局を運用する事業者のほか、海外で認可された衛星を使って米国市場へ参入する事業者にも適用されてきた。
一方、Part 25では、ライセンスの申請手続きと、認可後に守るべき技術・運用規則が複雑に入り組んでいた。また、申請時に提出する技術情報の多くが文章形式で、書類の構成や記載方法が標準化されていないことも、審査に時間を要する要因となっていた。
FCCは、ライセンス処理の速度、予測可能性、柔軟性を高めるため、規則をPart 100として再編した。Part 100では、申請・審査手続きをSubpart B、認可後の運用規則をSubpart C、違反への対応をSubpart Dに分け、申請者や事業者が必要な規則を把握しやすい構成とする。
ただし、Part 25に含まれていた技術要件や運用要件が、すべて廃止されるわけではない。既存の技術規則の多くはPart 100に引き継がれており、今回の変更は、主にライセンスの申請・審査方法と規則の構成を近代化するものである。

「Part 100」で何が変わるのか
Part 100では、申請内容の標準化や審査工程の明確化に加え、新しい宇宙機に対応したライセンス区分などが導入される。
主な変更点は以下の通りである。

「Licensing Assembly Line」を導入
Part 100の中心となるのが、FCCが「Licensing Assembly Line」と呼ぶ新しい申請処理方式である。
従来のPart 25では、申請者が技術情報を文章形式で提出するケースが多く、書類の構成や記載方法が標準化されていなかった。そのため、FCCの担当者が文章から必要な情報を読み取り、規則への適合状況を確認するまでに多くの時間を要していた。
Part 100では、申請書類を標準化・モジュール化し、申請者が規則や技術要件への適合状況を項目ごとに確認する認証方式を導入する。
申請者の基本情報や所有関係などを記載する「Form 312 – Main Form」は、有効なものを複数の申請に関連付けられるようになる。具体的なライセンス申請を提出する前に、Form 312のみをFCCへ提出し、事前確認を受けることも可能である。
申請者がFCCの規則や方針への適合を示した場合、その申請は公共の利益にかなうものと推定される。FCCは、この考え方を「default to yes」と表現しており、標準的な申請を効率的に処理する一方、個別の確認が必要な部分に審査資源を集中させる。
重点的な審査の対象となるのは、必要な認証を行えない申請、規則の適用除外を求める申請、米国市場へのアクセス申請、外国資本が関係する申請、周波数の一括処理に関係する申請、周波数上の制約がある申請、連邦機関との周波数調整が必要な申請である。
申請から30日以内に初期確認
Part 100では、FCCが原則として申請から30日以内に書類の完全性を確認する。
申請書類が完全であれば公示手続きに進み、不足がある場合は、完全な申請とするために必要な情報が申請者へ通知される。一般的なライセンス申請の公示期間は、法律で別の期間が定められている場合を除き、原則15日間である。
また、公示後の意見募集期間が終了してから60日以内にFCCが判断を下せない場合、処理が完了していない具体的な理由を申請者へ通知する。

ただし、これは「申請から30日以内にライセンスが承認される」という意味ではない。30日という期限は、申請書類が審査に必要な情報を備えているかを確認し、公示または不足事項の通知を行うまでの初期処理に設定されたものである。
その後の審査では、申請内容が公共の利益にかなうかが判断される。規則の適用除外、米国市場へのアクセス、外国資本、周波数上の制約、連邦機関との周波数調整など、個別の確認が必要な申請では、判断までにさらに時間を要する可能性がある。ライセンス期間を原則20年に延長
Part 100では、GSO、NGSO、VTSSなど、多くの宇宙局ライセンスと米国市場へのアクセス認可の有効期間を原則20年とする。送信を行う地球局や、ライセンス・登録の対象となる受信専用地球局についても、原則20年の期間が設定される。申請者は、必要に応じて20年より短い期間を申請することもできる。
従来、GSO衛星のライセンス期間は15年とされていたが、FCCは延長申請を処理する行政負担などを考慮し、20年へ統一した。
ただし、既存ライセンスの期間は自動的に20年へ延長されるわけではなく、現在のライセンス保有者は、Part 100の発効後1年以内に申請することで、当初の許可日から20年間となるよう期間の延長を求めることができる。
・GSO衛星システム:静止軌道上の1つの軌道位置で、1機または複数の衛星を一体として運用するシステム
・NGSO衛星システム:非静止軌道上の複数の衛星などを一体として運用するシステム。VTSSに該当するものは除く
・VTSS(可変軌道宇宙局システム):静止軌道より遠方で運用される宇宙局や、運用期間中に固定的・予測可能な軌道パターンを持たない宇宙局の区分。軌道間輸送機、軌道上サービス機、月・深宇宙ミッションなどが含まれる
軌道上サービスや月輸送に対応する「VTSS」を新設
Part 100では、新たに「Variable Trajectory Space Station System(VTSS)」というライセンス区分が設けられる。
VTSSは、静止軌道より遠方で運用される宇宙局や、運用期間中に固定・予測可能な軌道パターンを持たない宇宙局を対象とする。
具体的には、次のような宇宙機が含まれる。
- 軌道間輸送機
- ランデブー・近傍運用を行う宇宙機
- 軌道上サービス機
- 月やその他の天体で活動する宇宙機

VTSSという区分を設けたことで、従来のGSOやNGSOという分類だけでは扱いにくかった上記のような宇宙機を申請できるようになる。
併せて、GSO、NGSO、VTSSなど、2種類以上の衛星システムを1つのコールサインで運用する「Multi-Orbit Satellite System(MOSS)」も定義された。
これにより、例えばGSO衛星とNGSO衛星を連携させるシステムなど、異なる種類の衛星システムを一体として申請できるようになる。ただし、MOSSを構成する各システムには、それぞれの区分に対応する運用規則や義務が適用される。
コールサインとは、無線局や衛星システムを識別するためにFCCが付与する固有の識別符号である。衛星の名称とは異なり、免許や運用を管理する番号のような役割を持つ。
複数の地球局をまとめるライセンスを導入
地球局(衛星と電波を送受信する地上の通信設備)については、新たに「Nationwide, Non-Site License」が導入される。
これは、同じ技術的特性を持つ複数の固定地球局を、1つのライセンスの下で管理する仕組みである。事業者は基本となるライセンスを取得したうえで、個々の地球局を順次登録する。
多数の地球局を展開する事業者が、設置場所ごとに同じ情報を繰り返し提出する負担を軽減できる可能性がある。
衛星の軌道情報共有を要求
Part 100は、申請手続きを簡素化する一方、宇宙空間の安全に関する規則も強化する。
衛星事業者は、運用する宇宙機の軌道暦データ(宇宙機の位置や速度を予測するためのデータ)や、予定している軌道変更に関する情報を、FCCが指定する宇宙状況把握システムへ提供する必要がある。
さらに、接近警報を受け取った場合は、関係する宇宙機の事業者との連絡、軌道情報の共有、衛星の姿勢や運用の変更など、衝突リスクを評価・軽減するための対応が求められる。
これまで申請時の確認事項として扱われていた宇宙安全上の対応を、Part 100ではライセンス取得後も守るべき運用義務として明確に位置付ける。これにより、宇宙機の増加や軌道上活動の多様化に対応し、衝突リスクの低減を図る。Part 100が宇宙産業に与える影響
Part 100の導入によって、米国で衛星や地球局のライセンスを取得する事業者は、申請に必要な情報や審査の流れを把握しやすくなる。
審査基準が明確になり、初期処理の期限も設定されるため、企業はライセンス取得までの見通しを事業計画へ反映しやすくなる可能性がある。FCCも、規則に適合する申請を公共の利益にかなうものと推定することで、事業者が投資やシステム開発の判断を行いやすくなるとしている。
特に影響が大きいのがGSOやNGSOの区分には当てはめにくかった「軌道間輸送、月輸送、RPO、軌道上サービス」などの事業である。
申請に必要な情報や審査の基準が分かりにくく、ミッションの内容や運用方法を個別に詳しく説明する必要があったが、VTSSが新設されることで、申請準備の負担が減る可能性がある。
日本企業についても、米国の子会社を通じて衛星を運用する場合や、日本など米国外で認可された衛星を使って米国市場へアクセスする場合には、Part 100の規則が関係する。
また、Part 100は、採択と同時に施行されたわけではない。主要な規則は、米行政管理予算局(OMB)の審査後、FCCが連邦官報で発効日を改めて公表する。
発効後に提出される新規申請にはPart 100が適用される。一方、既存のライセンスは直ちに切り替えられず、更新や変更の審査などにあわせて順次Part 100へ移行する。そのため、Part 25からPart 100への移行は段階的に進められる予定だ。
さいごに
Part 100の最大の目的は、複雑化している衛星ライセンスの審査を標準化し、処理の速度と予測可能性を高めることである。
「Licensing Assembly Line」では、申請書類を標準化・モジュール化し、申請から30日以内に書類の完全性を確認するとしており、最終承認までを30日以内とする制度ではないが、審査の初期段階で生じていた停滞を減らし、事業者が承認までの見通しを立てやすくする狙いがある。
あわせて、軌道上サービス機や月輸送機などを対象とするVTSSを新設し、新しい宇宙事業を既存制度の例外ではなく、正式なライセンス区分として受け入れる。
今後、Part 100が実際に審査期間をどこまで短縮し、米国での宇宙事業を後押しするのかは、発効後の運用が焦点となる。
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