
リモートセンシングとは、対象物に直接触れず、離れた場所から地表や海洋、大気などの状態を観測する技術である。なかでも人工衛星を使う衛星リモートセンシングは、広域を継続的に観測できる手段として、さまざまな分野で活用が期待されている。
こうした中、衛星リモートセンシングの社会実装を広げるコミュニティとして注目されるのが、衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)である。本記事では、リモートセンシング事業化の課題と、CONSEOの役割について整理する。
目次
衛星リモートセンシング活用の背景と課題
衛星リモートセンシングの活用が注目される背景
衛星リモートセンシングでは、人工衛星から地表や海洋、大気などを観測し、そのデータをさまざまな分野で活用する。
たとえば、農業分野では農地の作付け状況や生育状況の把握、防災分野では災害発生時の被害把握、インフラ管理では地表や構造物周辺の変化の監視などに活用できる。広い範囲を継続的に観測できる点は、人工衛星を使う大きな利点である。
内閣府が示す宇宙基本計画では、日本の宇宙産業の市場規模を2030年代早期に約8兆円へ拡大する目標が掲げられており、衛星データ利用を含む宇宙ソリューション産業も2倍以上への拡大が期待されている。

衛星リモートセンシング活用の課題
しかし、衛星リモートセンシングを事業や行政業務で活用するには、技術の有用性を理解するだけでは十分ではない。実際の活用に移す段階では、例えば以下のような課題がある。
一つは、目的に合う衛星データを探し、入手することである。衛星画像は、観測する衛星やセンサ、撮影時期、分解能、観測範囲によって得られる情報が異なる。そのため、何を確認したいのかによって、必要なデータも変わってくる。
二つ目は、解析のハードルである。衛星画像は、取得すればすぐに業務で使えるとは限らない。それぞれ観測できる対象や読み取り方が異なるため、用途によっては、前処理や解析、地上データとの組み合わせが必要になる。
三つ目は、解析結果を事業や行政業務にどう組み込むかが見えにくい点である。衛星データにより情報を把握できたとして、具体的な業務にどう反映するかを設計する必要がある。
さらに、こうした活用事例や知見は、企業や分野ごとに分散している。新たに衛星リモートセンシングを活用したい企業や自治体にとっては、どの分野でどのような活用が進んでいるのか、どのような企業や機関が関わっているのかを把握しにくい。
だからこそ、利用者と提供者をつなぎ、社会実装に向けた議論を進める場が重要となる。その役割を担うコミュニティの一つが、CONSEOである。

CONSEOとは
CONSEOは、JAXAが事務局を務める、衛星地球観測に関する産学官連携の枠組みである。
2022年に設立され、衛星地球観測の政策議論への貢献や、産学官連携による衛星地球観測分野の産業拡大を目指して活動している。
会員には、三菱電機株式会社、ソニーグループ株式会社、株式会社野村総合研究所、株式会社QPS研究所など約350の団体が名を連ねる。宇宙関連企業だけでなく、IT、金融、建設、コンサルティング、研究機関、自治体なども関わっており、衛星リモートセンシングを幅広い産業や社会課題に接続するための場となっている。
CONSEOの活動
CONSEOの活動は、政策提言、エコシステム形成、情報発信の3つに整理できる。
1|政策提言
衛星リモートセンシングの活用を広げるには、技術開発だけでなく、観測体制や重点分野、官民の役割分担を整理することも重要である。
たとえば、衛星地球観測をどのように活用するのか。官民でどのように役割を分担し、観測データの継続性や利用しやすさをどう確保するのか。こうした論点は、衛星リモートセンシングを社会実装していくうえで欠かせない。
CONSEOでは、産学官の会員が衛星地球観測の戦略について議論し、国への提言や報告を行っている。これまでにも、衛星地球観測の全体戦略、異分野連携、将来SAR観測、防災ドリルなどに関する提言・報告を公表している。
2|エコシステムの形成
衛星リモートセンシングの成果を社会に還元するには、衛星を開発・運用する企業、データを解析する企業、実際に利用する企業や自治体、研究機関、行政機関などがつながる必要がある。
CONSEOでは、勉強会やイベントなどを通じて、会員間の議論や情報共有、交流の機会を設けており、こうした活動を通じて、衛星リモートセンシングを実際の産業や行政課題に結びつけるための接点が生まれている。
3|情報発信
CONSEOは、衛星地球観測や衛星リモートセンシングの価値を広く伝えるため、レポートやイベント、動画、コミュニティ運営などを通じた情報発信にも取り組んでいる。
たとえば、CONSEOもくもくスクール、GOSAT-GW打上げ応援イベント、会員向けの活動レポート、CONSEOコミュニティなどを通じて、専門家だけでなく、企業、行政、研究機関、学生、一般層にも衛星地球観測への理解を広げている。
また、分野ごとの活用可能性を整理した資料として、CONSEOレポートも公開されている。
CONSEOレポートで分かる衛星リモートセンシング活用
CONSEOの活動の中でも、衛星リモートセンシングの活用を考えるうえで注目されるのが、CONSEOレポートである。
CONSEOレポートは、衛星地球観測に関する基礎知識やトレンドを整理した「基礎編」と、カーボンクレジット、スマートシティ、海洋DX、防災DXの4分野を扱う「各分野編」で構成。各分野編では、業界動向や基礎情報、ユースケースなどが整理されている。特に、ユースケースでは類似するサービスを提供する企業が一覧で示されており、市場理解や連携先の把握にも役立つ内容となっている。
さらに2026年4月には、CONSEOレポートの内容を解説する動画シリーズも公開された。動画は、基礎編と4つの分野別解説を合わせた全5本で構成されており、CONSEOのYouTubeチャンネルで視聴できる。レポートを読み込む前に概要をつかみ、理解の入口にすることができる。
CONSEOは現在、多様な企業・団体が参加しており、活動を通じて、分野ごとにどのような課題があり、衛星データがどのように役立つのかも見え始めている。本レポートはそうした知見をもとに作成されており、これから衛星リモートセンシングを活用したい企業や自治体にとって、衛星リモートセンシングをどの分野で、どのように活用できるのかを示す入口資料として活用できる。
さいごに
衛星リモートセンシングは、農業、防災、インフラ管理、都市開発、環境監視など、さまざまな分野で活用が期待されている。
しかし、その可能性を事業や行政の現場で活かすには、技術の進化だけでは不十分である。どの分野で使えるのか、どのような事例があるのか、誰と連携すればよいのかを整理し、利用者が一歩を踏み出しやすい環境をつくる必要がある。
CONSEOは、産学官連携により、衛星地球観測に関する政策提言、エコシステム形成、情報発信を通じて、衛星リモートセンシングの社会実装を後押ししていく。衛星データ活用に関心を持つ企業や自治体にとって、CONSEOでの活動や情報は、最初に全体像をつかむための有用な入口となるだろう。









