日本の民間ロケット会社、インターステラテクノロジズ株式会社が題材になった漫画『晴天のデルタブイ』がLINEマンガとebookjapanにて2023年2月7日に公式にリリースされました。
それに伴って、今回の記事では、『晴天のデルタブイ』を制作している株式会社ナンバーナイン代表取締役の小林琢磨さんに、なぜ民間ロケット会社インターステラテクノロジズ(以下IST)の漫画の制作に至ったのか、制作秘話について根掘り葉堀り聞いてみました。
目次
なぜロケット会社の漫画を!? 制作秘話について教えて
ISTの漫画を書くことになった経緯について
ー どういった経緯でISTさんの漫画を書くことになったのか教えてください。
小林 氏:
そうですね、宇宙の漫画となると、『プラネテス』というものすごく有名な漫画があるのですが、僕は本当にその漫画が大好きで、それこそ人生でトップ10に入るくらい大好きな漫画なんです。
ただその内容は、10年以上前のSFなんですよね。
SFって当然ですが、「サイエンスフィクション」、すなわち、フィクションの要素が非常に強い。
ただその作品が有名過ぎて、何て言えばいいのか、その世界観があたかも現実世界でも正しいというか、時代がこの世界観に近づいてきて、SFが一般の人たちの当たり前みたいになっちゃっているという事件がちょっと前にあったんですよね。
その中で、今のリアルな宇宙の状況や現状というものをもっと広く世の中に知ってもらいたいと思いまして、今回、弊社の親会社のINCLUSIVE株式会社と一緒に作ることになりました。
ー なるほど。今回の漫画制作は、それこそ『左ききのエレン』のかっぴーさんやISTの稲川さん、堀江さんといった、いわゆる要人たちを巻き込んだ一大プロジェクトになってますよね。どういった経緯でこの話に繋がったのですか。
小林 氏 :
実は、元々ナンバーナインって、僕らの会社にはファウンダーとして堀江さんが入っていたんですよね。
今は株主からは外れたんですけれども、創業の時に出資をしてくださったのも堀江さんでして。
当然、ISTのファウンダーも堀江さんなんですよ。
その繋がりで、堀江塾という堀江さんが出資している会社の社長が集まる会でIST代表の稲川さんとは、出会ったんです。
そこで初めてお会いしたのですが、年齢も近いというところもあって、結構意気投合していたんですよね。
あとは、堀江さんのツテとかもあって、だったら宇宙の漫画を作ろうとなった時に、当然ですけれども、まずはISTさんにお話しさせて頂いて。といった経緯です。
『晴天のデルタブイ』はここが面白い
『晴天のデルタブイ』の見所を教えて
ー 今回連載が始まった漫画『晴天のデルタブイ』の見所を教えてください。
小林 氏 :
今回、連載が始まった『晴天のデルタブイ』という作品ですが、今現在、LINEマンガとebookjapanにて配信しています。
やはり見所としましては、宇宙に関わる漫画の中でも宇宙飛行士ではない人たちが主人公の群像劇というところがこの漫画の見どころかなと思っています。
これまでも宇宙の漫画って、結構沢山あるのですが、基本的には多くの作品が宇宙飛行士を主人公にしているんですよね。宇宙兄弟とかまさしくそうなんですけど。
ただ、宇宙業界に携わりたいってなっても、宇宙飛行士になれる人って、本当にひと握りしかいない。
でも宇宙飛行士にならなくても宇宙業界に携わることはできますし、その人にとって、その仕事に向き合っている自分こそが、主人公でもあるんですよね。
『晴天のデルタブイ』と同じ作者のかっぴーさんが描く大ヒット漫画、『左ききのエレン』という作品がまさにそのクリエイターの群像劇になっています。それこそ、営業マンもいれば、クリエイターもいる。色んな主人公がいるんですけど、各キャラクターがそれぞれの場所で活躍するんですよね。
まさにロケット開発も同じで、色々な主人公たちが出てきます。
例えば、開発以外にも資金を調達する人は必須ですよね。
ロケットの開発ってめちゃくちゃお金がかかるので、その資金調達をするメンバーもいれば、営業するメンバーもいる。プロマネとしてそのプロジェクトを円滑に進める人間もいれば、設計図を描く人間もいる。
一人一人が主人公として、みんなでチームワークというか、力を合わせて何かこうロケットをつくるという夢に向かって、突っ走っていく。これこそが、この作品の醍醐味です。
堀江さんがなぜ女性に
ー ちなみに今回の作品でモチーフになっているであろう堀江さんポジションのキャラクターは、なぜ女性に描かれているんですか?
小林 氏 :
ホリエリっていうキャラクターなんですけど、堀越エリで略してホリエリみたいな感じなんです。笑
あれは原作者であるかっぴーさんのアイデアです。
僕らも最初見たときに、えっちょっと待って、堀江さんて女性なんですか。
これ堀江さんに怒られるんじゃないかみたいなのがあったんですけれども、堀江さんに見せた時に「俺かわいいじゃん、いいじゃん。」みたいな感じになってよかったなと思っています。
これの裏話ですが、原作者のかっぴーさん曰く、何事もしっかりストレートに発言をされる方なので、堀江さんは当然間違っていないんですけども、ストレートすぎてしまって、ちょっと炎上してしまう部分がある。
みたいな話をかっぴーさんがしてて、そのイメージを女性にするとやや柔らかくなるのではないかというところからこのホリエリってキャラクターが誕生しているのです。
ー それこそ稲川さんも、イケメンになってますよね。
小林 氏 :
稲川さんがモチーフになっているキャラクターは、名前が稲川ではなく、稲月って名前のキャラクターで出ています。
ISTさんのチャットの中では、稲川さんが「俺、まじそっくりだ。」と言ったことを仰っていて、社内が炎上した事件があったらしいです。笑
ー 私も最初みた時、あれこれ稲川さん...だよね?ってなりました。笑
小林 氏 :
あとは、『晴天のデルタブイ』は、実話をもとにした物語ということで、今回、大樹町さんをはじめ、ISTさんだったり、HOSPOを運営しているSPACE COTANさん全面協力の下で、色々取材をさせてもらいました。
なので、内容としては、本当にリアルな話になっています。
ただ、登場する人物もやはりモチーフというか堀江さんだったり、稲川さんだったりいるんですけど、あくまでモチーフであって本人ではないっていう形を取っています。
実話を元にしたフィクションといった形で今回はやらせてもらっています。
読者に対して工夫していること
ー 一般の方向けにロケット開発を伝えるというところが今回の趣旨だと思うのですが、技術的な内容を多く含むロケット開発の内容を描く上で難しい点や工夫している点等ありますか。
小林 氏 :
そうですね。やはり本当に難しいなと思っているのは技術監修みたいなところで、嘘をつかないというか、間違った情報を世の中に出すのをやめようというのが今回の『晴天のデルタブイ』のテーマの一つになっています。そういった観点で監修として、やっぱりISTさんの方に入っていただいて、本当にセリフの一つ一つをチェックしてもらっているんですよね。
描写もその中でこういうのはありえないとか、こういう言葉は使わないとか、そういう風にチューニングをさせていただいているっていうところが、難しいというか大変ですよね。
あと補足としては、かっぴーさんが本当にあった実話をうまくミックスさせるのが本当に得意です。
2日か3日ぐらい取材ツアーみたいなものをやったのですが、そこでいろいろな話をミックスさせて、物語をできるだけわかりやすく伝えるようにはしているっていうところが今回の漫画の工夫している要素ですね。
小林さんの想い
今後の展望
ー 今回シーズン1といった形で漫画をリリースしていると思うのですが、これからシーズン2、シーズン3と展開していく過程で、なにか展望のようなものはありますか。
小林 氏 :
そうなんですよ。今ご説明いただいたとおり、今回の『晴天のデルタブイ』いう漫画は、ファーストシーズンという形になっていて、全30話の予定です。
これは、WEBTOONという媒体の特性上、普通の漫画のように、人気がある限り、ずっと連載とかではなく、最初からここまで作るというのがあるんですよね。それこそNetflixやとかAmazon Primeと同じです。
ファーストシーズンがどのように描かれるのかについては是非、本編を楽しみにしていてください。
ただ、やっぱりISTさん達とお話しさせていただいて思ったことは、打ち上げが成功した後に会社が劇的に変わったりしているので、シーズン2やシーズン3で、会社の真の成長劇を描けたらと思っています。
ただ、漫画を作るためには当然ですが、シーズン1が売れるというか、見てもらえないと意味がない。
僕らがやっているのはやっぱりエンターテインメントでありビジネスなのです。
売れないというか、需要がないものを作っても意味がないので、、、
まずはこのシーズン1を一人でも多くの人に読んでもらうということがとても重要だと思ってます。
読者に伝えたいこと
ー 最後にですが、今回の漫画制作を通じて、読者に伝えたい想いってありますか。
小林 氏 :
今は、すごく恵まれている時代だなと思っています。
それこそ、昔だと宇宙ビジネスに携わりたいと思っても携われない人の方が圧倒的に多かったと思うんですよね。
それはやっぱりビジネスとして成り立つものがすごく少ないし、できることもすごく少ない、そもそもパイがすごく少なかったと思います。
それが今回の北海道宇宙サミットみたいに一大イベントをするぐらいに大きくなってきていて、宇宙飛行士になるみたいなのはもちろんそうだけど、ロケット開発やそれ以外にも。
例えば、宇宙食を作るとか、Space Connectさんのように宇宙産業に人をつなげていくだったりとか、僕らみたいに宇宙の漫画を作るとかあります。
宇宙産業に携われる可能性って、昔に比べると本当に増えたので、伝えたいことは、とにかく調べてほしいということ。
みんなが思っている以上に、実は色々な仕事があって、そしてまた意外と知られていなかったりします。
それらをちゃんと調べて、自分の夢というか、携わりたいという夢に向かって頑張ってもらえるといいのかなというふうに思っています。
さいごに
いかがでしたか。
小林さんの漫画制作に対する、リアルにこだわるひたむきな姿勢は伝わりましたでしょうか。
今回、連載される『晴天のデルタブイ』は現在、LINEマンガとebookjapanにて公式にリリースされています。
実際に私も読ませていただいていますが、リアルなロケット開発の描写はもちろん、かっぴーさんの得意分野である「人間味のある世界観」が色濃く、漫画内にも反映されており、本当に本当に面白い作品になっています。
詳しくは、是非下記URLをクリック。
補足
株式会社ナンバーナイン
デジタルコミックを中心に漫画家さんが創作活動に専念できる環境づくりに取り組んだり、漫画の領域で様々なオリジナルコンテンツ制作を行う企業。
かっぴー
今回の『晴天のデルタブイ』の原作者。1985年神奈川県生まれ。漫画家。2015年9月、『フェイスブックポリス』をWebサイトへ公開し、大きな反響を呼んでネットデビュー。
以降、『SNSポリスのSNS入門』『おしゃ家ソムリエおしゃ子』『おしゃれキングビート!』『裸の王様Vアパレル店員』『左ききのエレン』などWEBメディアで多数の人気連載を担当する。