
2026年3月15日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、H3ロケット6号機(30形態試験機)の打上げに向けた開発試験として、第2回「1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)」を種子島宇宙センターで実施した。
この試験は、H3ロケット6号機の打上げ準備として行われたもので、発射台に固定した状態でエンジン燃焼を行う地上試験である。本記事では、今回の燃焼試験の目的と、H3ロケット6号機のミッションについて解説する。
目次
H3ロケット6号機の燃焼試験の概要
概要
今回実施されたのは「1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)」※1と呼ばれる試験である。
この試験では、第1段の実機型タンクとLE-9エンジンを組み合わせた状態で、発射台に固定したままエンジンを燃焼させる。実際の打上げに近い手順で燃焼を行うことで、推進システムの挙動や地上設備との連携、運用手順などを総合的に確認することができる。
試験は2026年3月14日から15日にかけて、種子島宇宙センター大型ロケット発射場で実施され、燃焼試験は計画通り終了したと発表された。今回の試験では補助ロケットブースターを使用しない新しい機体形態を想定し、発射台に固定した状態で液体燃料を注入したうえで、第1段の主エンジン3基を約50秒間燃焼させたという。
また、これまでの試験で確認されていた液体水素タンクおよび液体酸素タンクの圧力上昇不足について、対策が適切に機能するかどうかの検証も行われた。
失敗の経験を活かした6号機
H3ロケットをめぐっては、2025年12月に打ち上げられた8号機でミッションが失敗し、現在も原因調査が進められている。
ただし、この打ち上げでは第1段エンジンは正常に作動していたことが確認されている。そのため、今回の試験で使用される第1段エンジン「LE-9」については、設計上の大きな問題はないと判断された。
こうした状況を踏まえ、JAXAは第1段推進系の設計変更は行わず、予定していた試験計画に基づいて今回のCFT(燃焼試験)を実施したとしている。
H3ロケット6号機(30形態試験機)の詳細
H3ロケットとは
H3ロケットは、日本の次世代基幹ロケットとして宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が共同で開発を進めている大型ロケットである。従来のH-IIAおよびH-IIBロケットの後継機として位置付けられており、日本の宇宙輸送を担う新しい主力ロケットとなることが期待されている。
H3ロケットの開発では、打上げコストの大幅な削減と高い信頼性の両立が大きな目標となっている。特に、エンジンの簡素化や生産体制の見直しによって、従来ロケットよりも効率的な運用を実現することが目指されている。
第1段エンジンには新開発の液体燃料エンジン「LE-9」※2が採用されており、高い推力と低コストを両立する設計となっている。
H3ロケットの機体形態
H3ロケットの特徴の一つは、ミッションに応じて機体構成を変更できるモジュール型の設計にある。
第1段エンジンの数や固体ロケットブースター(SRB-3)※3の数を組み合わせることで、複数の機体形態が用意されている。これにより、小型衛星から大型衛星まで幅広い打上げ需要に対応できる設計となっている。
代表的な機体形態としては次のような構成がある。
- H3-22(エンジン2基・ブースター2本)
- H3-24(エンジン2基・ブースター4本)
- H3-30(エンジン3基・ブースター0本)
このような柔軟な構成により、衛星の重量や打上げ軌道に応じた最適なロケットを選択できる仕組みとなっている。

30形態(H3-30)の特徴
H3ロケット6号機では、「H3-30」と呼ばれる機体形態の初飛行が予定されている。
H3-30は第1段にLE-9エンジンを3基搭載する構成となっており、固体ロケットブースターを使用せずに高い打上げ能力を確保できる点が特徴である。
この機体形態は、主に太陽同期軌道(SSO)への打上げ能力を強化することを目的として設計されている。太陽同期軌道は地球観測衛星や気象衛星などで広く利用される軌道であり、近年は衛星コンステレーションの拡大に伴い需要が増加している。
H3-30形態では、太陽同期軌道への打上げ能力を約4トン以上に高めることが想定されており、大型地球観測衛星や複数衛星の同時打上げにも対応できる能力を持つ。
今回のH3ロケット6号機は、このH3-30形態の性能を確認する技術実証ミッションとして位置付けられている。
さいごに
H3ロケット6号機は、新しい「30形態」の初飛行に向けた重要な試験段階にある。
打上げ前にはCFT試験などの検証が行われ、ロケットの性能や打上げ手順の確認が進められる予定だ。
H3ロケットは今後、日本の主力ロケットとして多くのミッションで使用される見込みであり、6号機の成果は日本の宇宙開発にも大きな影響を与える可能性がある。
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補足情報
※1CFT燃料試験:CFT(Captive Firing Test)は、ロケットを発射台に固定した状態でエンジンを燃焼させる地上試験である。実際の打上げに近い手順で推進システムや機体、地上設備の動作を確認する重要な試験とされている。
※2LE-9:LE-9エンジンは、H3ロケット第1段に搭載される液体燃料ロケットエンジンである。液体水素と液体酸素を推進剤として使用し、高い推力と低コストを両立することを目的に開発された日本の新型エンジンである。
※3SRB-3:SRB-3は、H3ロケットに搭載される固体ロケットブースターである。打上げ時にロケットの推力を補助する役割を持ち、液体燃料エンジンを補助して機体を加速させる。H-IIAのSRB-Aを改良した日本の固体ブースターである。










