アストロスケールの英子会社、ELSA-Mの打上げ契約を独Isar Aerospaceと締結
©Space Connect

2026年3月12日、宇宙デブリ除去サービスを開発する株式会社アストロスケールホールディングス(以下、アストロスケール)の英国連結子会社である Astroscale Ltd(以下、ASUK)は、ドイツの宇宙企業 Isar Aerospace社と「ELSA-M」の打上げ契約を締結した。

本記事では、契約概要ならびに、ELSA-Mミッションの内容と現在の進捗状況について整理する。

ELSA-Mの打上げ契約の概要

ASUKとIsar Aerospace社の打上げ契約は、ASUKが進めるデブリ除去ミッション「ELSA-M」についてのものである。

打上げにはIsar Aerospace社が開発するロケット「Spectrum」が使用される予定で、打上げ時期は 2028年4月期と想定されている。

ELSA-Mとは何か

ミッションの概要

ELSA-Mのミッション概要
ELSA-Mのミッション概要 ©Space Connect

『ELSA-M(End-of-Life Services by Astroscale – Multiple)』は、衛星の運用終了時に安全に軌道から除去するEOL(End-of-Life)サービスの実現を目指す、世界初の軌道上実証ミッションである。

英国宇宙庁(UKSA)の支援を受け、欧州宇宙機関(ESA)と衛星通信企業Eutelsat※1が連携して進めるSunriseプログラム※2を通じて進められている。

専用インターフェースを搭載した衛星を対象に、軌道上での捕獲・除去技術を実証することが目的であり、運用を終了したEutelsat OneWeb※3の衛星を捕獲し、軌道上から除去する計画だ。

進捗状況

アストロスケールの軌道上サービス イメージ画像
アストロスケールの軌道上サービス イメージ画像 (PR TIMESリリースから引用)

ELSA-Mは現在、打上げに向け、英国オックスフォードシャーのハーウェル宇宙クラスターにあるアストロスケール英国拠点で設計・製造が進められている。

衛星の詳細設計審査(CDR)は完了しており、現在はフライトモデルの組み立てや統合、試験などが進められている状況となっている。

独Isar Aerospace社とは

会社の概要

ELSA-Mの打上げを担うIsar Aerospace社は、2018年に設立されたドイツ・ミュンヘン拠点の宇宙スタートアップである。

同社は、小型・中型衛星および衛星コンステレーション向けの低価格打上げサービスの提供を目的としており、欧州のNewSpace企業の代表的存在の一つとされている。

近年、民間企業によるロケット開発が活発化する欧州の中心的な企業の一つとして注目されている企業だ。

「Spectrum」ロケットについて

Isar Aerospace社は現在、小型衛星向けロケット「Spectrum」の開発を進めている。

このロケットは、最大1,000kgを低軌道(LEO)へ投入可能とされており、衛星コンステレーションなどの需要に対応することを想定している。

また、設計・製造・試験・打上げまでを自社で一貫して行う”垂直統合型”の開発体制を採用している点も特徴とされ、こうした体制により、開発や運用の各工程を自社内で調整できるため、設計変更や打上げ計画などにも柔軟に対応できる。

現時点ではまだ打上げ実績はないものの、ELSA-Mの打上げまでに複数回の打上げが予定されており、機体の信頼性向上が進むとみられている。

欧州の宇宙政策の方針

欧州では従来、米国など他国での打上げが多かったが、近年は宇宙輸送能力の自立性を高める政策が進められている。

その中でも、Isar Aerospace社は、ノルウェーのAndøya Spaceやフランス領ギアナのギアナ宇宙センターからの打上げ枠を確保しており、欧州における宇宙輸送能力の拡大に貢献すると期待されている。

ESAが支援するELSA-Mミッションにおいて、欧州企業が開発したロケットを利用することは、域内独自の宇宙技術の確立を目指す欧州宇宙政策の方針にも合致するものとされている。

さいごに

人工衛星の増加に伴い、宇宙デブリ問題は宇宙産業における重要課題の一つとなっている。

アストロスケールが進めるELSA-Mは、衛星運用終了後の除去サービスを実証する世界初のミッションとして位置づけられている。

今回の契約により、欧州の新興ロケット企業による打上げが予定されており、宇宙デブリ除去サービスの実用化と欧州の宇宙輸送能力の強化の両面から注目されるミッションとなりそうだ。

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補足情報

※1ー衛星通信企業Eutelsat:フランスに本社を置く衛星通信企業で、テレビ放送やブロードバンド通信などのサービスを世界各地に提供している。近年は低軌道衛星事業にも参入し、宇宙通信インフラの拡大を進めている。

※2ーSunriseプログラム:欧州宇宙機関(ESA)の通信研究プログラム「ARTES」(日本の「宇宙戦略基金」に近い)の一環として進められるプロジェクトで、次世代衛星通信技術の実証を目的としている。

※3ーEutelsat OneWeb:低軌道衛星コンステレーション「OneWeb」を運用する衛星通信企業で、航空・船舶・政府向け通信サービスなどを提供している。

参考

英国連結子会社における Isar Aerospace との打上げ契約締結に関するお知らせ

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